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第103話 典型的

【パレス 裏】



「それで、わざわざこんなところに連れてきたんだぁね……」



出迎えたヌヌレイのぬめっとした表情に、アイリ達は流石に二の足を踏んでしまった。しつこい程に強い視線。


後ろには、何故かカメラを構えて準備万端の研究員達。


忙しい、と言いつつもヌヌレイはどこか嬉しそうに体を揺らす。客人が嬉しいらしい。



「ほら、シキ」



後ろにいたシキに前に出るよう促したのだが、シキは何かに目を盗まれたようで、動こうとしない。



「シキ?」



「美しい……」



目の前の台には一列に行儀よく並ぶ、無機質なフラスコ。


中の液体は、どれも微妙に色が異なっていた。鮮やかなグラデーションとなり、白い台の上で映える。


シキの目の輝きが、じっくりとフラスコに注がれる。



「この僕は、こんなの初めて見たよ! この透明な艶、完璧な並び、美しい色!」



「はぁ!?」



「ほぉ〜お。君、この美しさが分かるんだぁねぇ! 素晴らしいじゃないかぁ……」



「うっつくし〜い! あ、これは何かな?」



「おお、これはマヒータだぁ」



盛り上がり、シキとヌヌレイは二人でハッハッハッと楽しそうに笑い合う。


予想外の展開に、一同はポカーンと立ち尽くした。



「な、なんか仲良くなってんぞ?」



「あはは、ヌヌレイさんは褒められると弱いですから」



質問攻めにするシキに、ヌヌレイは上機嫌で答える。



「ヨースラ氏、久しいじゃないかぁ」



「お久しぶりです、ヌヌレイさん」



笑顔で返すヨースラに、ヌヌレイはニィッと口角を上げた。



「ヨースラ氏は、そろそろ定期検査を受ける頃じゃないかぁ。準備は終えているんだぁ」



「モチロン受けますけど、今日はピエールさんでしょう?──ほら」



「ふむ……」



そう言われて、ヌヌレイは改めてシキの方を向く。


シキはヘラヘラと、ヌヌレイに乾いた笑顔を向けた。顔立ちも華やかな、明らかな貴族の青年。


じっくりと彼の顔を眺め、ヌヌレイはおもむろに告げた。



「……典型的なアッカーソン家系の顔だあねぇ、血はそんなに濃くは無さそうだが」



分かっていたことではあるが、皆の動きがピタッと止まる。


やはりこの人も、血を受け継ぐエイドリアンなのだ。



「……そうなんだ」



「他には何か無いんすか?」



「ふぅむ、君は名前はなんと?」



シキが答えるより先に、レオナルドが口を開く。



「ピエール・ジャフ・ノブレっすよ!」



「ピエール・ジェフ・ノブレだよ……。なんでレオが言うの……?」



「ノブレ、ほう」



だが、ノブレの一族はエイドリアン家系では無かった筈。ならば、彼はノブレに引き取られた者だということ。


ヌヌレイは背景を想像し、クスクス笑いだす。しかし、すぐにその表情を戻した。



「だが、なんともまぁ分かりやすいアッカーソンの顔をしているなぁ。血が濃くは無いだろうに。──もしかして、コルディエの一族なのかぁい?」



シキがピクリと反応する。



「……」



固まっていく顔。


シキの反応に、皆がそれが肯定だと気付く。ハッと顔色を変えた。



「コルディエ?」



「昔はね、能力が強くて有名だったんだぁ。団員も何人か出した筈だ。一族離散してからは、どこに行ったかと思っていたんだが、ここでコルディエの者に会えるとはねぇ」



「……やめてくれ」



シキはクルッと彼等に背を向けると、見えない表情のまま裏から出ていってしまった。パシュッと虚しく扉が閉じる。



「ピエールさん」



ヨースラが、一人シキを追いかけていく。


シンと鎮まる裏に、ヌヌレイはおや、と困惑して首を傾げた。



「マズイこと言ったかぁい?」



「それより」



ショウリュウは、目を鋭くさせヌヌレイに近づく。



「コルディエは、どの能力だ? フリートに近いのか?」



「いやぁ、フリートというより」



ヌヌレイが答えようとした、次の瞬間。


再びパシュッと扉が開く音がして、ヒラリスが裏に飛び込んできた。


必死の形相をしている。



「ヒラリス!」



「皆さま、大変なのです、早く表に上がってくださいです!」



「どうしたの?」



「とにかく早く! 上に何かいるんです!」



「な、なんだって!?」



「見えざる者!?」



一同は急いで裏を出ていった。



残されたヌヌレイは、再び研究員達だけになった裏に、ため息をつく。



「たまには騒がしいのも、悪くないんだがねぇ……」




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