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一粒の砂
人生はきっと、砂時計ですらない。
無数にこぼれ落ちる砂粒のひとつで、時を刻めるのは一瞬だけ。
いったい誰が、そのわずかな瞬間に想いを馳せられるのだろう。
もはや見ることのできない砂粒たちに、いまだ見ることのできない砂粒たちに。
同じ砂時計の中に存在していても、僕たちは近いようで遠く離れている。
落ちる速度が速すぎて、一緒に時を刻んでいる仲間を思いやる余裕もない。
隣にいる相手のことさえ、すぐに見失ってわからなくなる。
それでも、たったひとつの事実が僕らを救ってくれる。
僕らが生きているのは、同じ砂時計の中。
誰もが皆、同じところに落ちていく。
そのことだけは、神様にも変えられない。