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堕ちる思考
別れ際、名残惜しそうに振り向いてもらえなかった。
たったそれだけで、心が不安に支配されてしまう。
寂しいと思っているのは、僕だけなんじゃないだろうか。
彼女にとって、僕はたいしたことのない存在なんじゃないだろうか。
拭い去ることのできない不安は、やがて僕の中で事実になってしまう。
僕は、彼女にとってたいした存在じゃない。
名残惜しそうに振り向いてもらえなくて当然だ。
そうやって決めつけて、少しでもダメージを小さくしようとする。
揺らぎようのない事実なら、仕方がないと受け入れられるから。
でも、寂しさや不安を消し去れるわけじゃない。
いくつもの事実を作って、自分に言い聞かせたとしても。
終わりの見えない思考回路の中、いつまでも堕ち続けている。