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曇天の下で
ふと気がついたときには、すでに空一面が暗くなっている。
心が冷えてきて、身体が震えてきて、ぬくもりはどこにもない。
存在しているはずの明かりは、どこにあるのだろう。
どこまでも遠くて、かすかにしか見えやしない。
僕の心を満たしていくのは、波のように押し寄せてくる不安だけ。
明かりに手が届きさえすれば、この不安はすぐに消えるのに。
どうして、こんなにも明かりが遠いのだろう。
手の届かないところまで、離れてしまうことになったのだろう。
すべては、前に進めない僕のせい。
遠ざかっていくことがわかっていて、引きとめようともしなかった。
だから僕は、今日も黒雲に押しつぶされる。
明かりのない世界にあるのは、ひとりぼっちの寂しさと不安だけ。
暗くて冷たい世界で、僕は今日もひとり。
不安と寂しさが、やがで恐怖に変わっていく。