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表層にある深淵
心の奥底までは、誰にも覗かれることはない。
自分自身でさえも、覗こうとすると深みに溺れてしまいそうになる。
誰にもふれられることはなく、ふれてほしくても手は届かない。
暗くて濁っていて、覗かなくてもいいときだけ澄んでいる。
誰にも知られることのない、鍵のかかった秘密の部屋。
それなのに、どうして些細なことで深く傷ついてしまうのだろう。
奥底にあるはずなのに、
どうして剥き出しの傷口のようにヒリヒリとするのだろう。
外を歩くだけでも切られるように痛くて、
誰かと笑っていても血を流してる。
消えることのない傷跡と痛みだけが、澱のように積み重なっていく。