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あの日の言葉
僕は、その言葉の意味を理解できた。
友達や仲間、大切な人がいれば孤独から解放されるわけじゃない。
ひとりぼっちの寂しさは、ぬくもりに囲まれるほど増していく。
冷たい絶望に打ちのめされ、虚無の暗闇で凍えることになる。
彼はぬくもりにふれられなかったわけではないし、
周囲のぬくもりがたりなかったわけでもない。
だけど、そのことを伝えることはできなかった。
心に秘めたものを、さらけだす勇気がなかったから。
あるいは、知りたくなかったのかもしれない。
僕の言葉もまた、理解してもらえないという現実を。