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シグナル
つらいとき、僕らは信号弾を打ち上げる。
誰かに知ってほしくて、誰かに気づいてほしくて。
誰かに支えてほしくて、誰かに助けてほしくて。
でも、そのメッセージが誰かに届くことはない。
まぶしい光と大きな音をともなう救難信号は、目と耳をふさがれるだけ。
助けを願えば願うほど、誰にも届かなくなっていく。
そして、誰にも届かなかった信号弾は、僕らの頭上に落ちてくる。
助けを求めるたびに、増えていく僕らの傷。
だから僕らは、心に生まれたシグナルを押し殺す。
どのみち傷ついて苦しむのなら、誰にも迷惑をかけないほうがいい。
傷だらけの心を抱えて、苦しみとともに生きていこう。
いつか訪れる、その日まで。