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誤解

今、私の頭の中で警戒音が鳴り響いております。


それもそのはず、偽ゴリさんに押し倒された挙句、今まさに偽ゴリさんの口と私の口が触れようとしています。

更に偽ゴリさんは、ゆっくり顔を近づけながら捲りあげたスカートの中に入れ、太腿を触り始めました。


いつもの私なら、この様な場面すぐにでも対処出来ましたが、相手の顔がゴリさんと言うこともあって、頭が対処しきれておりません。

このままでは、ゴリさんではないゴリさんにあられもない姿を見せてしまいます。


しかし、体が動きません。

私は仕方なく、ギュッと目を閉じました。


……が、目を閉じた瞬間、私の体に覆い被さっていた重みが消え、拘束も解かれました。


何事かと、目を開けると……


「マリー、大丈夫!?」


「おや、ジェムさん」


私の目の前には偽ゴリさんではなく、顔を青くしたジェムさんが私を抱き起こしてくれました。


そして、偽ゴリさんはと言うと……


「……っ痛」


壁まで飛ばされたでしょう。壁が衝撃で破壊されており、瓦礫の中から偽ゴリさんが這い出て来ました。


そして、その場には仁王立ちしているヤンさんがおります。

どうやら、ヤンさんが殴り飛ばしたのでしょう。


──……と言うか、ヤンさん……物凄く怒ってませんか?


そう、ヤンさんは無表情で何を考えているか分からない方ですが、今のヤンさんはジェムさんでも察しが付くぐらい怒ってます。

その証拠に「……あんな怒ってる兄貴、初めてだ」とジェムさんが呟いておりました。


ヤンさんは黙って、偽ゴリさんの胸ぐらを掴み再び殴り飛ばしました。


──……あぁ~。これは、また部屋を修復しないといけせんね。


「──ったいな!!何だよお前!!!」


流石に黙って殴られているだけはありませんね。


偽ゴリさんが口に溜まった血を吐き出し、ヤンさんを睨みつけながら怒鳴りました。


「…………」


「『そんな事分かっているだろ?貴様、仲間に手を出すとは……そこまで落ちぶれたか!?死んで詫びろ』と、申しております」


どうやら、ヤンさんは完璧に本物のゴリさんだと勘違いしておりますね。


誤解を解こうにも、今のヤンさんは怒りで周りが見えておりません。

舎弟のジェムさんですら、怯えきっております。


「いや、ちょっと、待って、僕、ちが──」


偽ゴリさんが必死に誤解を解こうとしておりますが、ヤンさんは聞く耳持たず攻撃を仕掛けており、偽ゴリさんが逃げ回っていると言う感じになってます。


「──チッ!!折角、面白いシチュエーションだったのに台無しじゃないか!!」


偽ゴリさんは逃げ回りながらも、そんな事を口にしたもんだから『貴様!!!』と、ヤンさんの殺意が増しました。


──あぁ~、これはもう誰にも止めれませんよ。


完全に激昂したヤンさんを見たのは初めてですが、これは制御不能ですね。

私とジェムさんは、出来るだけ巻き込まれないよう部屋の隅隅に寄り、殺り終え……いえ、ヤンさんが落ち着きを取り戻すのを待っていました。


「お前ら、何してる!!?」


バンッとドアが開き、飛び込んできたのは本物のゴリさんでした。


「…………」


一瞬で部屋の中の時間が止まったかのように、静まり返りました。


その沈黙を破ったのは「えっ?どういう事……?」と、囁いたジェムさんでした。


その言葉にハッと我に返った偽ゴリさんは、ヤンさんの隙をつき窓から飛び降り逃走しました。


私は理解が追いついていない、お三方に今までの経緯と共に、先程のゴリさんは偽物だと伝えました。


すると、ヤンさんはドサッとソファーに倒れ込み『良かった』と、仰っておりました。


「まぁ、私も未遂でしたし、ヤンさんの誤解も解けたし、これにて一件落ちゃ……」


ゴンッ!!!


全てを言い切る前に、ゴリさんの強烈な拳骨が脳天を直撃しました。


「無理をするなと言っただろ!!?動けないなら何故、大声を出さない!!取り返しがつかなくなるとこだったんだぞ!?」


ゴリさんも大変お怒りのご様子です。


「──……すみません。目の前にゴリさんの顔があると思ったら、気持ちわる……」


ゴンッ!!!


再び拳骨が飛んできました。


「……まったく、お前は……。まあ、無事で良かった……」


ゴリさんは大きな溜息と共に、私が無事だと分かって安堵しておりました。


「……ご心配お掛けしました」


ゴリさん、ヤンさん、そしてジェムさんに深々と頭を下げ、謝罪しました。


「俺らの誤解は解けたけど、ルイスの誤解も解いときなよ?ルイスが大声を上げながら歩き回ってたお陰で気づけたんだから。……ルイスの言葉を聞いた時の兄貴、すっげぇおっかない顔してたんだぜ?」


ジェムさんが私の所に辿り着いた経緯を説明してくれました。

やはりルイスさんのせいだったようです。


──まあ、今回は助かりましたね。


その後、ルイスさんの誤解を解くと共に、何時間にもわたり口の硬さとはどういう事か、延々と説明して差し上げました。


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