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城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?  作者: 甘寧
墓荒らし

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お母様

「お母さん……何で……」


ファニーさんを止めているお母様の表情は先程と同じ無表情です。

しかし先程の虚ろな目とは違い、しっかり目に光が灯っています。


ファニーさんは、お母様に止められたことが信じられないようで明らかに動揺しています。


そして──


「もう、おやめなさい」


鋭い目でファニーさんに申しました。


私はその隙にファニーさんの下から抜け出て、立ち上がりました。

ファニーさんと言えば、未だに信じられない様子でお母様を見ています。


「……貴方はこんな事する子ではないはずです」


小さな子に教えるように、お母様は優しくファニーさんに語りかけています。

母親と言うものはいつなんどきも子供の事を考えているはずです。

ましてや、人とは外れた道へ進もうなどとしていたと知ったら尚更です。

お母様の気持ちがファニーさんさんに届けば良いのですが……


「なんでよ!!私はお母さんの為に……!!!」


「分かってる。でも、私は誰も恨んでいないの。だから、こんな事はやめてちょうだい」


「知らない知らない!!!私は皆と一緒にいるって決めたの!!その為には何でもする!!!」


「ファニー!!!」


お母様の制止も聞かず、再び剣を手に私に向かって来ました。


──やれやれ、駄々っ子ですね。

あまり動けないので、短期戦でお願いしますよ?


森の外へ出した神父様はゴリさん達と合流した頃でしょう。

となれば、ゴリさん達もこちらへ向かってくるはずです。


──それまでは持ちこたえてくださいよ……


自分の体に言い聞かせ、ファニーさんの剣を受け止めます。


「ファニー!!!やめなさい!!!」


後ろでお母様がファニーさんを止めようと必死に叫んでいる声が聞こえますが、ファニーさんにはその声は届いていないようで休みなく剣を振りかざして来ます。

その目は、恨み、嫉み、僻み、そして悲嘆の色をしておりました。


もう私ではファニーさんを止めることは愚か、この目を元に戻す事は出来ないと判断し覚悟を決めました。


──せめて、私の手で……


ファニーさんの剣が私に向けて勢いよく振り下ろされたので、その剣を()()で受け止め、剣と一緒にファニーさんを捕えました。

まあ、受け止めた手から止めどなく血が滴り落ち手落ちて血溜まりができ始めてますが、そんな事関係ありません。


「──なっ!?何してんのよ!?離しなさいよ!!!」


当然ファニーさんは剣を奪い返そうと必死ですが、私は絶対に離しませんよ。

そして、腰に手を回し銃を手に。

それに気づいたファニーさんは更に焦った様子で、剣を諦め私から距離を取ろうとしましたが……


「……もう終わりにしましょう」


お母様がファニーさんを羽交い締めにして、私の方を向けていてます。


「お母さんまで……何なのよ!!!私はお母さんの娘なのよ!?娘を殺そうとするの!?」


鋭い目つきでお母様に食ってかかるファニーさんですが、お母様はそんなファニーさんの言葉を聞いても動揺すること無く伝えました。


「……貴方はもう、私の可愛いファニーではないわ。貴方は悪魔に魂を売ったのよ。そんな子、私の娘ではない」


まさかのお母様の言葉にファニーさんは絶望に近い表情をしておりました。

お母様の為にここまでして来たのに、そのお母様からはっきりと拒絶されたのですから。


「な……なによ……私は、お母さんの為に……」


先程とは打って変わって今にも崩れそうなぐらいか細い声でお母様に伝えていました。


「いいえ、貴方は私の為と言いつつ身勝手な事ばかり。関係の無い方達まで巻き込んで……いい加減にしなさい!!私はそんな子を育てた事などありません!!」


「そんな……だって……」


お母様に叱責され、幼い子供に戻ったようなファニーさん。

お母様は私の方に向き合い微笑みながら「……終わりにしてください」と一言。


私はその意志を受け入れ、銃を構えました。

ファニーさんはもう抵抗する気力も無いようです。


「──ファニーさん……来世でまたお友達になってください……」


そう伝え、ゆっくりと引き金を引きました……


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