ゴリさんのストーカー
ヤンさんから説明された関係はこうでした……
キャリー様は隠密部隊に配属されたその日、ゴリさんを見て一目で恋に落ちたらしいです。
──ゴリラに一目惚れとは……
で、最初の内はゴリさんに自分の思いを伝えられず、影からゴリさんの姿を追って自分の存在をアピールしていたらしいのですが、いくら経っても何も言ってこないゴリさんに痺れを切らし思い切って告白をしたと。
しかし、ゴリさんは「部下に恋心は持てん」と振ったらしいのです。
──もう少し気の利いた断り方出来なかったのですかね。
普通の方はここで諦めるはずですが、キャリー様に至っては逆に燃え上がってしまったらしく、それ以降付き纏いが激しくなっていき、24時間365日どこに行こうが何をしようがキャリー様が付いて回るようになってしまった様です。
それはもう、湯浴みの際も用足しに行く時も常にです。
流石のゴリさんでも精神的にやられ始めた時に、ふと思い付き辞表を提出したと。
──……先程の陽の当たる仕事のくだりは嘘ですね。キャリー様から逃げ出す口実ですね。
そして、キャリー様の自由を奪う為にゴリさんのいなくなった隊長の席にキャリー様を置いたと。
「だから隊長の居場所を中々突き止めれず気が狂いそうなった」とキャリー様が仰いました。
ここまで聞くと皆さんのゴリさんに対する目が軽蔑から憐れみの目に変わりました。
それでもキャリー様は「愛するが故」と何が悪いのかわかっていません。
──こういう方が一番厄介なのです。
ゴリさんに至ってはようやく逃げ出して平穏な日々を送っていたのに、再び監視の日々が始まるのかと顔色がよろしくありません。
「──と、まあ、以上がヤンさんの説明でした」
ヤンさんの言葉を通訳して全てを言い終わると、皆さん落ち着きを取り戻しゴリさんの腕に纏わりついているキャリー様を眺めながら「もう観念すれば?」「ここまで熱烈に愛を表現してくれる人そうそういないよ?」「うん。いくら美人でも、俺では手に余るわ」とゴリさんの嫁候補に推薦しておりました。
しかし、ここまで詳細に知っていると言うことは……
「……あの、少々よろしいですか?ここまで詳しい情報を知っているヤンさんは、もしかして元隠密部隊ですか?」
私は気になった事をゴリさんとヤンさんに尋ねました。
すると、ゴリさんとヤンさんは互いに顔を見合せニヤッと不敵な笑みを向けてきました。
「ヤンは隠密部隊では無い。ヤンは……元第二騎士団の団長だ」
「「はぁぁぁぁ!!!??」」
ヤンさんはVと手を出しております。
──なるほど、そういう訳でしたか……
皆さんは驚きのあまり口を開けたまま微動だにせずヤンさんを見ております。
「俺が城を辞めて、暫くしたらヤンも団長を辞めて来たもんでな、一緒に便利屋を始めた」
いや、そんな簡単に辞めれる騎士団にも驚きですが、それで良しとするゴリさんもゴリさんです。
「まあ、理解するまでに時間がかかるかも知れんが、これが全てだ。とりあえず、この話は一旦置いといて、こいつらの用を聞く」
ゴリさんはキャリー様を鬱陶しそうに見ながら仰いました。
その視線に気づいたキャリー様が「そんな見つめないでくれ」と顔を赤らめております。
──これは、重症です。
「もう少し再会の余韻に浸りたい所だが、こっちもちょっと時間がない。簡潔に伝えるが……隊長、私達と手を組みましょう」
「は?」




