秋の西日に
何年ぶりかで歩く、
その駅前の通りには、
横断歩道は無くなり、
中央分離帯ができていた。
ここを渡りたいのに、
どうしようかと、
地下鉄の階段を降りた。
地下を通れば行けると。
地下にも、茶色の
地下道が伸びていた。
あまりの変わり様に、
迷子の気分だった
思いもよらぬ発想で、
駅前が開発されてゆく。
駅ビルも高層ビルに
生まれ変わるらしい。
町は変わろうとしている。
あの地震の後から、
そのまま時を止めた
空き地も少なくなった。
だからどうとか、
何か語れるものはなく、
ただ、記憶は現実に、
押し流されてゆく。
壁に持たれて、
抱き合っている二人。
弾けた心からか、
舐め合う心からか。
自分はどうだったか。
思い出せる感情は、
心の穴を埋めたい、
寂しい穴を埋めたい。
柔らかい土が、
どこかにないかと、
生きながら見渡した。
生きたいから探した。
電話の声を張り上げて、
歩いてゆくスーツ姿。
がんばる心からか。
不安な心からか。
自分もそうだったか。
思い出せない記憶は、
投げ出した夢なのか。
捨てきれない夢なのか。
見違える姿に
いつかなるのかと、
死にながら、期待した。
死なずに、お願いした。。
町は変わろうとして、
また、変わってゆく。
自分は、町に揉まれても、
心ごとは変わらない。
地下道は長かった。
こんな所まで、
続いていたのかと地上へ出る。
秋の西日に、息が切れた。