星に出会いを
Twitter企画『#空色ワンライ』という企画で書いた作品です。
お題:星
ルール
・「おめでとう」という言葉で終わること
・「世界で1番○○なもの」が出てくること
・お題に沿って1時間で作品を書き上げること
この作品を楽しんでもらえると幸いです。
この世界にはテイマーと呼ばれる人たちがいる。
テイマーは主に魔物とよばれる生き物を社会に貢献できるように育て、輩出することが仕事である。
この魔物牧場と呼ばれる施設には世界で1番数多くの魔物を輩出してきたテイマーがいる。
このテイマーの手腕によって多くの魔物が社会に出て、人助けや魔物の地位向上に貢献していた。
魔物の多くは人の言葉を理解できる程の知能はあるが言語体系が異なるため、言葉を交わすことは困難なことが多い。
このテイマーは魔物牧場にいる魔物から信頼されており、周囲の人からは牧場の主ということで「マスター」と呼ばれている。
ある日の朝、マスターは星が落ちる夢をみて飛び起きた。
この夢を見るときは大抵、魔物が魔物牧場に来るのだ。
突然現れるときもあれば、迷い込んでくるときもある。そして、大けがを負って運ばれてくるときもある。
「マスター、マスターはいるか」
大声でマスターを呼ぶ声が聞こえる。
魔物牧場の入り口は事務所兼マスターの家となっているため、急な来訪でもすぐに魔物牧場に向かうことができる。
「どうしましたか」
事務所の入り口に着くと大けがを負ったスライムがいた。
スライムというと不定形な魔物であるため、けがを負うことはあまりない魔物である。
スライムには核と呼ばれる部位があり、その核が傷つくことがけがの原因であることが多い。
「高いとこから落ちたスライムが他のスライムにあたってけがをしたんだ。ヤバいと思って二匹とも連れてきた」
おそらくゴミ捨て場で働いているスライムが接触事故を起こしてしまったのだろう。
「まず、そのスライムたちはこちらであずかります。連れてきてくれてありがとうございました。あとはお任せください」
そう言い二匹のスライムを受け取った。
おそらく、ゴミ袋を急いで空け、スライムを救出したのだろうことがうかがえる。
片方のスライムは少し核にひびが入っているが時間が経てば治るだろう。
もう片方のスライムは核が割れてしまっている。
ゴミ袋に入ったままの状態で魔物牧場に入りスライムを育成している場所へと向かう。
「スター、スターはいるかい」
スライム部屋と書かれた施設の前で呼びかける。
ゆっくりと扉が開き、一匹の大きなスライムが現れる。
このスライムはマスターが初めて育てたスライムであり、今もスライム部屋を管理してくれる頼もしい相棒である。
星のように輝く核を持っているので「スター」という名前がついている。
「スター、この子たちを治せそうか」
マスターはゴミ袋に入れられたスライムを見せ、スターに治せるか聞いてみた。
スターは触手を伸ばし、ゴミ袋ごとスライムを受け取ると器用にスライムたちの核を取り出し、治療を始めた。
少し時間がかかったがスターの前には元気になった三匹のスライムがいた。
スターは核が割れたスライムにどうやってかわからないが新たな命を宿らせたのだ。
スライムは世界で1番不思議なもので核が割れて瀕死の状態であっても特殊なスライムが力を注ぐことで分裂するのだ。
いつ見ても不思議な光景である。
「元の大きさに戻るまでここにいるといい」
核が欠けたスライムと分裂したスライムに向かって呼びかけた。
スターに治療されたからなのか核が小さく光り了解の意を返してくる。
「少しの間よろしくな」
魔物牧場に新たな仲間が増えるのだった。
分裂して家族が増えたスライムたちに一言言うのであった。
「あと、分裂おめでとう」