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公式企画保管場所?

もういいかい?

作者: 聖樹小路


◆夏のホラー2021 かくれんぼ。もういいかい?



 あたしは、あの女が大っ嫌いだった。






 確かに見た目がちょっと可愛いけど、働きづめらしい片母親がどんなに夕方遅くなっても母子で仲睦ましく寄り添い合って買い物をする姿を見かけようと、成績が常にトップでみんなに人気の担任のイケメン先生に気に入られていようと、クラスの男子どもが恋文ラブレター手渡したり告白しまくってようと、貧乏で母子家庭のくせに!


 地域の有力者の娘で、超大金持ちのあたしに、クラス中の女子が従ってくれてるのに。成績も父が校長に金を握らせて上位に見せかけてても、あたしの方があの女より断然上のはずなのに!






 そんなある日、あたしが密かに慕っている、スポーツマンで成績も常にトップ、生徒会長までこなす先輩が、あの女に……あいつに告白したいと、ご友人と話しているのを偶然聞いてしまった。


 だからあたしは、クラス中の女子に、後で流行りの店のスイーツを奢るからと、全員を誘い、もちろんあの女も呼んで、かくれんぼをしようと誘い込んだ。


 鬼は予め決められていた計画通りに、あたしのお気に入りの一人にさせた。


 「じゃあ数えるよー? いーち、にーい、……」






 あたしはお気に入りの友人何人かとあの女を囲んで、


 「いい隠れ場があるよ? 一緒に行こう?」とあの女を、貯水場に連れて行った。


 これも予め調べておいた場所だ。

 貯水場の重い蓋はか弱い女何人かで力を合わせて、やっと持ち上げられるのだが、

 

 「この中なら見つかりにくいよ? ほら入って。」


 「え……なんだか暗くて怖いよ。私は別の場所が……」


 「いいから。ほら、ぐずぐずしてると鬼が数え終わって見つかっちゃうよ?」と強引に泣き叫び嫌がるあの女を、暗くて深い穴の中に押し込み、その場にいるみんなで嘲笑いながら、また何人係りかで蓋を閉めて閉じ込めた。






 「……きゅうじゅうきゅう、ひゃーく。もういいかい?」


 『『『『『もういいよ?』』』』』


 もちろん、あの女以外は全員すぐに見つかり、あの女を本気で心配する級友もいたけど、


 「飽きて帰っちゃったんじゃない?」


 「それにあの子、母親の代わりに買い物したり夕飯の支度してるみたいだから、家の用事の為に先に帰ったんだよ?」


 と説得して、あの女以外は全員帰路についた。






 その日から、あの女が行方不明になり、何か月か警察や、あの女の母親が半狂乱になって探し回ることになるらしいのだが、あたしは父の仕事の都合で、かくれんぼの日から数日後に急に転校することになり、あの女のことなど、すっかり忘れ去ってしまった。






     *****






 何年か経って、お気に入りだった級友の一人が、罪の意識に耐え切れなくなって匿名でネットでつぶやいたことで、古い貯水場から、あの女の無残な遺体が見つけられたらしい。


 そのあと病の淵で入院していたあの女の母親が密かに息を引き取ったのを知ったのは、あたしが恋人と付き合い始めてからずっと後だった。






     *****






 あれから十年後。


 あたしは憧れの先輩と結婚し、それなりの家庭を築き、初出産の日を迎えた。


 「さあ、もっといきんで!」


 「お前、がんばれ!」


 「あなた。ずっと手を握っててね! ううーんんっ!」


 「ほうら、頭が見えてきてますよ?」


 『もういいよ?』



 その時! あの女の声が、あたしの股の間から聞こえた……






     END


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