レオンとナタリー
吹きすさぶ雨風に、このボロ小屋はいつまで耐えられるのだろうか。
ガタガタ、ぎしぎし、ばちゃばちゃ、びゅおーう。
仕舞いにはグシャっという、なんとも不穏な音が屋根からしてくる始末。
──いやもう、ホント勘弁してくれよ。
レオンは泣き出したい気持ちでいっぱいだった。
仕方のないことだとわかってはいる。
このボロ小屋がボロ過ぎるのが悪いことだって。それを修繕できるほどの稼ぎも財産もない、レオンの甲斐性なしが、そもそもの問題なのだとか。彼女が嵐を呼びたくて呼んでいるわけでもないことだって。
レオンもわかってはいるのだ。
そうは言っても、限度はある。限度はあるのだ!
これ以上続けられては、このボロ小屋は木っ端微塵。もはや見る影もなくなってしまう。
「ナタリー! 君、もうちょっと加減できないものなのか!」
レオンは眉を情けなく下げ、ほとんど泣きそうな、情けない声で問いかける。ナタリーは叫び返した。
「そんなのできるわけないでしょっ! なんならアンタ、あたしの代わりにこの子を腹で育ててみなさいよ!」
きいいっと金切り声でがなり散らすナタリーに、レオンは頭を抱えた。
「そんなこと、僕にできるわけないじゃないか……」
そう、そんなことは出来るはずもない。
レオンがいくら風で飛ばされそうなくらい、ひょろっと細く、いかにも頼りなさげな風貌であっても。
そのひょろ長い胴体の上に乗っかっている顔が、化粧でも施せば、愛らしいお嬢さんに変身できるような女顔であっても。
ツリ目がちでキツイ、妖艶な美女のナタリーより、ずっと庇護欲のかられそうな。どこか儚い雰囲気の漂う容姿であっても。
それでもレオンは男なのである。
「代わってくれないって言うんだったら、せめて黙っててくれない? ほんと、役に立たないんだから!」
あんまりである。
レオンは泣きたくなった。
そもそもナタリーの腹の子の父親は、レオンであって、レオンではないのだ。