リザードマン
電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。
コミカライズ1~5巻発売中です。
俺は軍場朝陽。
昨今流行りの異世界召喚を経て、今はファンタジー世界で冒険者をやっている元・高校生男子だ。
定期的な挨拶を終えたところで、俺は再び丘の上から眼下にある廃村を見下ろした。
「あの廃村か……」
俺の隣で、マヤ姉がそう呟く。
「ああ、クエストの目的地だよ」
人間同士の戦か、はたまたモンスターの来襲か。
寂れ具合を見るに、放置されて数年は経っていそうな廃村だ。
「では、スーパー朝陽軍団の出番ですわね!」
背後から居丈高な女性の声が聞こえる。
先ほどの定期的な挨拶に付け加えよう。
異世界では頼りになる仲間たちも増えた。
豪腕の女騎士グローリア=ブリガンダイン。
その従者、クオン。
俺を勇者と慕うソフィ=ピースフル。
俺の実姉にして最強のチート姉さん、軍場真夜。
この4人に俺を加えた5人で、クラン”スーパー朝陽軍団”を結成している。
このクラン名、どういうネーミングセンスなの?という疑問もあるだろう。
それは俺も知りたい。
付けたのはマヤ姉だから。
「さて、今回のクランクエストの内容を振り返ろうか」
マヤ姉が音頭を取る。
「ああ。前に関所防衛戦をやったとき、ギガノトの手下たちが散り散りになって逃げたろう?」
「勇者さまが真・天魔滅衝剣を放ったときですね!」
「あれは痛快でしたわ!」
ソフィとグローリアがきゃっきゃっとはしゃぐ。
いや、その痛快な撃退劇を演じたの、ホントはマヤ姉なんだけどね。
「と、とにかく、その残党が廃村を乗っ取って住み着いたらしいんだ。それを討伐して欲しい、と」」
つまりはモンスター討伐クエストだ。
「廃村近くにある街道は商人の馬車なども通るところ……」
クオンが呟く。
「放っておいては危険というわけだな」
マヤ姉が同意する。
「さて、どう仕掛ける?」
俺はみんなに意見を求めた。
リーダーたる者、全員の意見を尊重するものだ。
「正面突破でボッコボコですわ!」
「私はお嬢に従います」
「勇者さまの奥義で一網打尽に致しましょう!」
「せっかく高所に陣取っているんだ。ここから魔法で焦土にするというのはどうだ?」
精緻さの欠片もねえ作戦ばっか!!
「ま、待て待て! 敵の数も分からないし、もしかしたら捕らえられてる人もいるかもしれない! 村沿いの街道だって破壊するわけにはいかない! もっと慎重に行動しよう!」
「む。それもそうか」
「確かに。一旦落ち着きましょう」
「私はお嬢に従います」
「さすが勇者さま、冷静な判断です!」
ふーっと額の汗をぬぐう。
ウチのパーティー、血の気の多い女性が多すぎやしませんか!?
俺が上手く舵取りをしないと、とんでもないバーサーカー集団になりそうな…
俺はクオンに話しかける。
「クオン」
「なんです?」
「索敵スキル『鷹の目』で偵察をお願いできないか?」
「了解です、アサヒ氏」
クオンは崖ギリギリのところに立つと、眼下の廃村に向けてスキル『鷹の目』を発動した。
「……敵は5体。皆、武装しています。トカゲの顔を持つ獣人……なるほど、敵はどうやらリザードマンのようです」
「リザードマンとはなんだ? 朝陽」
「二足歩行するトカゲのモンスターだよ。。身体はウロコで覆われていて頑強、それでいて剣と盾を持ち武装する手強い戦士さ」
クオンの偵察は続く。
「待って下さい……すでに捕まり、納屋に軟禁されている人がいます」
「軟禁!? ホントですの、クオン!」
「ええ。身なりから察するに行商人でしょう。食糧目当てに襲われたようです」
捕まっている人がいるとなると、ヘタに手出しできなくなる。
「そりゃマズいな……人質に使われでもしたら…」
「その方、ケガは!? もしケガをしているなら、すぐにでも治してあげないと!」
「ちょっ、待ったソフィ! 一人で動いちゃ危ないっての!」
ソフィが単独廃村に向かおうとするのを引き留める。
怪我人が心配なのは分かるが、ソフィまで捕まってしまっては元も子もない。
「アサヒ!」
グローリアが俺を呼ぶ。
「今度は何!?」
「ちょうど通りかかった商人の馬車が、リザードマン5体に襲われていますわ!」
目まぐるしく変わる状況に、頭クラクラしてきた。
「くっそ! 矢継ぎ早に状況がコロコロ……」
待て。
今、5体と言ったか。
さっきクオンが言ったリザードマンの総数も5体。
となると……
「いや! この混乱はむしろ機先を制するチャンス!」
俺は全員に号令を出した。
「ソフィ! 俺とグローリア、クオンの物理防御力を『プロテクト』の魔法で上げてくれ! マヤ姉、”任せた”!」
俺の目を見ただけで、その思考を悟ってくれたのだろう、マヤ姉は無言でこくんと頷いた。
俺たちはリザードマンらが群がる街道へ向けて、高さ十数メートルはある丘の上から飛び降りた。
さあ、張りきってデコイになろうか。




