バクシンですわ
電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。
コミカライズ1~5巻発売中です。
「うわあああ!?」
「い、岩が降ってきましたわ!」
「きゃあああ!」
ズウウンという鈍い音がダンジョン内に響く。
俺たちの目の前には、ダンジョンの通路を塞ぐように大岩が積み重なっている。
周囲に漂う粉塵が、今まさに落盤事故が起こったことを物語っている。
「び、びっくりしたぁ……」
俺は地面に尻餅をついた状態でそう呟く。
両サイドには、同じく派手に転んでいるソフィと、膝立ち状態のグローリア。
よかった、二人とも無事だった。
しかしマヤ姉とクオンの姿が見えない。
まさか、この落盤の下敷きに!?
「マヤ姉ー!」
同時にグローリアも叫ぶ。
「クオン! 無事ですの!? 返事なさい!!」
すると、大岩で阻まれた向こう側の通路からマヤ姉の声が聞こえてきた。
「問題ない! クオンも無事だ!」
良かった、俺は胸をなで下ろした。
「も、もう…心配させて…」
グローリアもうっすら目に涙を溜めながら、安堵の表情を見せている。
それだけクオンのことが心配だったのだろう。
「朝陽たちは!? そっちこそ無事なのか?」
「こちらもケガ人はいませーん! 大丈夫でーす! それにもしもケガあっても、私がいますからー!」
マヤ姉の質問に、ソフィがそう返す。ヒーラーはこういうときに頼りになる。
さて、ここまでの経緯を説明しよう。
ダンジョン調査のクランクエストを受けた俺たちスーパー朝陽軍団(なんだかもう慣れてきた)は、その調査対象であるリアファルの古城へとやってきた。
しかしその道中で崩落トラップに遭い、パーティーが分断されてしまったのだ。
こちら側には俺、グローリア、ソフィ。
あちら側にはマヤ姉、クオンといった具合に。
「どうしよ。岩の隙間……は、ないよなぁ」
岩はびっしり天井まで積み重なっており、通り抜けられる隙間はない。
このままではマヤ姉やクオンと合流できない。どうしたものか。
「岩から離れていろ、3人とも」
向こう側からマヤ姉がそう言う。何をするつもりだろう。
空気がピシピシと凍り付く。
周囲に舞うホコリがパチパチと火花を散らす。
なんだ、とてもイヤな予感がするのだが。
「アサヒ氏」
「ク、クオン? どうした」
「マヤ氏が何やら、巨大な魔方陣を展開しているのですが……」
「岩をぶっ壊す気かー!? 待て待てー!!」
俺は必死に止めた。
「お互い別パーティーに分かれて、このままダンジョンを進もう! その先で合流できるかもしれないし!」
「そうか? 分かった、後でまた会おう」
岩の向こうから了承するマヤ姉。
足音が遠ざかっていくのが聞こえる……マヤ姉とクオンは先へと進んだようだ。
マヤ姉ならこの程度の障害物、そりゃ楽に粉砕できるだろうけど、加減が出来ずダンジョンごと破壊しかねない。
何より、マヤ姉の強さはこのパーティー内では秘密なのだ。止めることが出来てよかった。
「さあ、俺たちも奥へと進もう!」
「はい! 勇者さま」
「ええ、行きますわよアサヒ」
こちら側のパーティーと改めて向き合う。
グローリアとソフィ。
攻守揃った、戦力的に申し分のない二人だ。
トラブルメーカーのソフィがいるのは心配だけど、ゴーレム級のグローリアがいるなら心強い。
マヤ姉やクオンがいなくても、モンスター相手は何とかなるだろう。
「じゃあ慎重に先に……」
「古代の城など恐るるに足らず! バクシンですわー!」
グローリアがいきなり猛ダッシュで先に進もうとする。
「猪突猛進!?」
慎重の”し”の字もない特攻スタイルに、俺は目を丸くした。
「ま、待ったグローリア! この古城、どんなトラップがあるか分からないから慎重に……」
グローリアが踏んだ床が、バゴンと音を立てて窪む。
「バゴン? グローリア、今何か踏まなかった?」
ゴゴゴと地響きが鳴る。
イヤな予感しかしない。
グローリアが進んだ先とは異なる、脇の道から、俺にだけ目掛けて大岩が転がってくる。
「いわあああああ!?」
俺はすんでのところでそれを避けた。
「アサヒ!? 何か起きまして!?」
グローリアがくるりとこちらを振り返る。
その拍子に、今度は壁に手が当たり、またも何かのスイッチを押してしまう。
これまた、なぜか俺にだけ目掛けて、目の前から二本の矢が飛んできた。
「やああああああああ!?」
俺はマトリッ○スよろしく、膝から90度身体を曲げて、それをギリギリ避けた。
「ぜえ、ぜえ…し、死ぬかと思った……!」
「だ、大丈夫ですか、勇者さま!?」
「わたくし、何かやっちゃいましたかしら!?」
ソフィとグローリアが、疲弊しきっている俺に駆け寄ってくる。
誰のせいだ、誰の。
今まではフォロー役のクオンがいたから気付かなかったけど、グローリアもとんでもねえトラブルメーカーだ!
マヤ姉もクオンもいないこのパーティー……俺は身の危険を感じずにはいられなかった。
先が思いやられる。




