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スーパー朝陽軍団

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。

コミカライズ1~4巻発売中です。

 クラン限定クエストを終え、俺たちは一息ついた。

 開放した農村の住民たちがせめてものお礼と、お茶と菓子を出してくれたのだ。

 無碍に断るわけにもいかないだろう。


「トロールの占拠された農村の開放任務、無事終わってなによりですわ」

 グローリアが安堵の表情を見せる。

「みなさん、お疲れ様でした! ケガあったら言って下さい、ヒールをかけますので!」

 ソフィがみんなを労る。

「お茶の準備、私も手伝います。いえ、お嬢は座っていてください。貴女の握力ではカップが割れる」

 主に辛辣なことを言いながら、クオンが紅茶を淹れ始める。

 あんな高いところからカップめがけて淹れるのか……もはや大道芸のようだ。


「それにしても、わたくしの大剣をもなかなか通らなかったトロールを一刀両断とは、さすがアサヒですわ!」

「いや、まあ、あはは…」

 実際に倒したのはマヤ姉だから、俺は苦笑いを浮かべるほかない。


「でも斬撃の瞬間がわたくしには見えませんでしたわ……本当にアサヒが斬り払ったんですの?」

 さすがゴーレム級の強者、あの一刀両断に不自然な点を覚えていたらしい。

 やばい、俺じゃないってバレる!?

 助け船を出したのは、意外にもソフィであった。

「ふふ……グローリアさん、分かりません?」

「ソフィさん!? な、何がですの!」

「勇者さまは常人の目には止まらぬ太刀筋で斬ったのです! 勇者さまマニアの私はしかと! この目で捉えていましたよ!」

「なるほど、納得ですわ! わたくしもまだまだ精進が足りないようですわね!」


 どうやらグローリアはソフィの説明で納得してくれていたようだった。

 危ない……この二人が単純で助かった。

 クオンがやたら冷めた目で二人を見ているのは何か気になるけれど。


「そういえば……お姉さまはあまり戦闘に参加されませんのね」

 グローリアの視線が、これまで会話に参加せず静かに佇んでいたマヤ姉に向く。

 マヤ姉、戦闘中は後方に待機し、あまり戦ってはいないような立ち回りをしていたのだ。

 マヤ姉が戦えば、一瞬で戦闘が終わるからね……そうならないよう、いわば舐めプに徹していたのだ。

 ゆえに、戦っていないと判断されても仕方が無い。


「ああ、私はあまり戦闘が得意ではないからな……今までも、弟に……朝陽に頼り切りだったんだ」

 そんなことを言う。

 どんなときでも弟をアゲようとする姉である。

「あ、いえいえ! 責めているんじゃありませんわ! ご安心を! これからはこのわたくしもお守りしますわ!」

 そう言って、グローリアが自分の胸をドンと叩く。

「フフ、頼もしい」

 マヤ姉とグローリア、これはこれで相性が良い二人なのかもしれない。


 俺の弱さがバレるリスクはあれど、初めてのクラン活動は楽しく行えていた。


 しかし大きな問題がひとつだけあった。



「”スーパー朝陽軍団!” クランクエストお疲れ様っす!」


 冒険者ギルドへ向かうと、受付嬢のターニャが大声でその名を呼んだ。

 そう、クッソ恥ずかしい俺たちのクラン名……”スーパー朝陽軍団”だ!


「あれが今噂のスーパー朝陽軍団か……」

「あのリーダーの子がアサヒってわけ?」

「名前はアレだが、最近活躍が目立ってるよなー」

「そうね、名前はアレでも…」

「いや自己顕示欲パねえっすわ」


 周囲の冒険者から、ヒソヒソとそんな声が聞こえる。

 俺の顔は上気し、もはや茹でダコ状態である。


 俺は自分の後ろに並んでいるクランメンバーたちに向けて言い放った。

「いややっぱりこのクラン名おかしいだろ!? なんつー名前付けてくれてんだ、マヤ姉!?」

 そう言われたマヤ姉は、しかしきょとんとした顔をしている。


「おかしくはないだろう? どうだ、みんな」

 周囲の面々に意見を求める。

「慣れたら気になりませんわ! 重要なのは名前より、何を為すべきかですもの!」

「さすがお嬢」

「勇者さまの名を冠するクラン名……むしろ素晴らしいと思います! スーパーのあとにアルティメットも付けていいくらいでは!?」

「ほら、おかしくないと言っているぞ」

「お、俺がおかしいのか……!?」


 俺の名前が付いたクランなのに、俺の味方は誰もいないらしい。

 頭を抱えた。



 帰路につく。


「スーパー朝陽軍団! カッカッカ、ダサいのう!!」

 テーブルの向かい側に座るキルマリアが爆笑している。

 彼女は破顔一笑。

 大声で笑うと、手に持っていたスライムの駒を前進させた。


「だよなぁ……キルマリアだけだよ、同意してくれるの」

 俺はドラゴンの駒を動かし、サタンを守る。


「活動は好調なのじゃろう? いずれ魔王軍討伐の任など任されることになるかものう。カカ、クラーケン獲った!」

「あ、やられた。そうなったらキルマリアと相対することになるじゃん、勘弁してよ」

 俺たちは会話をしながら、卓上にあるボードゲームで勝負をしている。


「そういえば以前、わらわの元にやってきたクランがあったのう。返り討ちにしてやったが。名はバ、バ、バル…バ…バルサミコソースじゃったかの?」

「スーパー朝陽軍団よりダサい名前のクラン名だな、それ」

「ほれ、魔王手じゃ」

「うわ、負けたー」


 この一局はキルマリアの勝ちのようだ。

「カッカッカ! これでわらわの勝ち越しじゃのう!」

「ルール覚えたてなのに強いなぁ。さすが壊乱の二つ名を持つ魔王六将」

「知謀策謀はお手の物よ。しかし面白いのう、このサタンゲームという遊戯」

「俺の世界……いや、故郷にあった将棋ってゲームまんまだけどね。雑貨屋さんに頼んで、特注で駒と卓を作ってもらった」


 遊戯帝はマヤ姉によって滅殺されたけれど、せめて俺がこのサタンゲームを異世界に広めてやろう……

 そう思った次第。

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