サタンゲーム
電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。
コミカライズ1~4巻発売中です。
道具屋で買ったいわく付きの瓶を開けたら、あら不思議。
瓶の中に吸い込まれ、何もない異空間へと飛ばされた俺。
そして眼前にいるのは、ヤギの頭蓋骨を被った巨躯の異形。
名を遊戯帝ウィジャボードと言うらしい。
到底俺が敵うような相手には見えないが、やるしかない。
俺は剣を抜いた。
「や、やるか!?」
しかし遊戯帝は意外にも、柔らかい物腰で応対してきた。
「やめたまえ、剣などという無粋なものを取り出すのは……」
「え?」
「うふふ……力で私を倒そうとしてもムダだよ。この亜空間は私とのゲームに勝たねば脱出できない仕組みになっているからね…」
「ゲーム?」
俺は剣を仕舞った。
どうやらこの遊戯帝、今までに相対した敵とはひと味違うようだ。
「ゲームって……その、遊ぶ方のゲーム?」
「無論。勝てばこの亜空間から出してあげよう。しかし負けた場合は……」
遊戯帝は周りを見渡した。そこには何もない…いや、あった。
人骨だ。
「うふ、そこかしこに転がっている骨が物語っているだろう?」
「で、ですよね……」
青ざめる。
ジョ○や幽○白書でも見たことがある展開だ。
力ではなく、ゲームで勝たないといけない特殊空間。
他の人の魂を賭けたいところだが、生憎ここには俺しかいない。
この亜空間に唯一置かれているテーブルと、その上のボードゲームを見る。
将棋盤や囲碁盤のような盤面に、一見するとチェスのようなコマが立ち並んでいる。
チェスと違うのは、形状がモンスターになっている点だ。
「なんだあれ……チェスかな? やばいぞ、チェスのルールなんて俺知らないんだけど…」
遊戯帝が、おそらくワイバーンだろうか、それを模したコマを手に取る。
「うふふ……ゲームは私が考案したオリジナルのボードゲームで行うよ」
「オリジナルのボードゲーム!? そんなの、考案者のそっちが絶対有利じゃん!?」
「ふふ…みんなそう言うよ。そう言って、朽ち果てていったよ……ふふふ……!」
物腰柔らかいと評したのは間違いだ。この異形、陰湿な性質をしている。
「一度しかルールは説明しないからね……死にたくなければ必死に覚えなよ……うふふふふ……!」
ハナから勝たせる気がないくせに、よく言う。
「その名も『サタンゲーム』…!!」
☆
・サタンゲームとは、9×9の盤上にてコマを互いに一手ずつ動かし、奪い合うゲーム。
・自陣中央に置かれたサタンを奪った方が最終的に勝利となる。
・コマの種類と動かし方は以下の通り。
サタン……8方向すべてに一マスずつ移動できる。自軍には一体。
ドラゴン……上下左右と斜め前にのみ一マスずつ移動できる。自軍には二体。
ゴーレム……斜め前と斜め後ろ、前方にのみ一マスずつ移動できる。自軍には二体。
ウルフ……二マス先の斜め前にのみ移動できる。自軍には二体。
ガーゴイル……前方にのみ、障害物がない限り移動できる。自軍には二体。
グリフォン……上下左右に障害物がない限り移動できる。自軍には一体。
クラーケン……斜めに障害物がない限り移動できる。自軍には一体。
スライム……前方にのみ一マス移動できる。自分には九体。
☆
「奪った相手のコマは、持ち駒として自軍の戦力に……」
遊戯帝の解説は続く。
「敵陣にスライムが侵入した場合、スライムキングに成って性能がアップし……」
さらに遊戯帝は続ける。
「挑戦者は皆、この難解なルールを理解出来ず、自滅していった……うふふ、今回の客人もそうかな…?」
圧をかけてくる遊戯帝の話を半ば流しながら、俺は心中でこう思っていた。
これ、将棋じゃん!!