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姉に任せろ

 姉の真夜まやが散財したせいで、文無しになった素寒貧姉弟。

 その財産も元はと言えば、姉が高レベルモンスターを狩って得たお金なので、強く文句も言えないのだが……


 ともかく、俺たち姉弟は野宿をすべく、街の外にある近場の森へと向かった。

 序盤のフィールドだけあってこの森は比較的安全で、一般人も野草や山菜を採りにやってくる場所だ。

 ここならば危険なモンスターもいないし、野宿に持って来いだろう。


「まずは火起こしか。俺、薪を集めてくるよ」

「大丈夫だ、朝陽あさひ。姉に任せろ」

「へ?」


 マヤ姉はおもむろに大木に近付くと、「これにするか」と呟いた。

「せい!」

 空を切り裂く手刀を大木に見舞う。


 大木はその切断面からズズッと横にズレていくと、ズシーンと大きな音を立てて地面に横たわった。

 空手家がビール瓶を手刀で叩き割る要領で大木を切断するとは、もう目を丸くして唖然とする他ない。


「これでよし」

「たかが焚き火のために木一本を伐採すな! 自然を大事に!」

 自然破壊、よくない。


 手頃なサイズに木をカットし、薪を組み立て、魔法で火を付ける。焚き火の完成だ。

「これで暖を取れるぞ、朝陽」

「野営の手際がいいなぁ……俺、見てるだけだったよ」

「姉弟で遭難したケースを想定して、現実世界でサバイバル術を学んでいたからな。お手の物だ」

「どんな想定してたんだよ!? 実際、役には立ったけども!」

 ディスカ○リーチャンネルでめっちゃベアグリルスの番組を観てそうな姉だ。

 ゆ○キャン派の俺とは深度が違いすぎる。


 キャンプと言えば、水も欠かせない。

「じゃあ俺、水でも汲んでくるよ。近くに川があったよな」

 水を運ぶような力仕事くらいは、男の出番だろう。

「それも姉に任せろ」

「は?」


 マヤ姉が掌をかざす。

 すると、川の水が水流となって巻き上がり、マヤ姉の元へ引き寄せられてきた。

 一気に水を確保。


「な、なんだこれ!? どうやったの!?」

「”水よ、来い”…そう願っただけだ。原理はわからない」

 願っただけですべて叶うとか、神の御業かな。


 思えばマヤ姉、この世界に来た瞬間から火、水、風、土、雷などの全属性魔法を事も無げに使っているのだが、本当にどうしてここまでチート級の能力を秘めているのだろうか。

 弟を守る姉の力とはそれほどまでに凄いのか。

 ならば俺にも、姉を慕う弟のスンゴイ力を少しでもください。


 火を起こしたのも姉。水を用意したのも姉。

 俺はただ見ているだけ……これではいけない。姉に頼りきりでは格好が付かない。

「じゃあ俺、何か食べるもんでも探してくるよ。ポーションや毒消しじゃあ腹はふくれないし」

「ああ、頼む」


 俺は今晩の食材を確保すべく、森の奥へと足を踏み入れた。

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