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グローリア・ブリガンダイン

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。

同じく電子コミックアプリの『マンガワン』でも同時連載中です。


コミカライズ1~2巻発売中です。

 犯罪クラン混沌麗流コントレイルのリーダー、ロンベルトが剣を抜く。

「俺とてオーガ級! ”雷落としのロンベルト”と呼ばれた男だ! 大人しくやられはしねえ!」


 奇しくも同じオーガ級!

 いや、実際の俺はオーガ級の強さではないのだけれど、このロンベルトはしっかりとした実績と実力を兼ね備えているらしい。さすがは犯罪クランでリーダーを張るだけはある……ということか。


 しかし相手が悪かった。

 こちらには魔王軍幹部すらソロでぶっ倒すチート級の姉がいるのだ。

 マヤ姉は俺を守るべく、ロンベルトに立ちふさがった。


「勇者さまー!」

 その時、アジトの入り口から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「うっ!? こ、このいかにもトラブルを運んできそうな、ポワポワした声は……」

「ソフィです! ソフィ=ピースフル! 勇者さまの加勢に参りました!」


「ソフィ!? なんでここに!?」

「ターニャさんにここだと聞きまして!」

「タ、ターニャ……余計なマネをしてくれちゃって……!」

 ソフィが来てしまったら、マヤ姉が強いところを見せるわけにはいかなくなってしまう。


「勇者さまの勇姿を見て頂こうと、ギャラリーもたくさん引き連れてきましたよ!」

 ソフィの背後には、ギルドで暇をしていたであろう冒険者たちがズラリと並んでいた。

 ギャラリーも連れてくるとか、もっと余計なマネを!

 この子、息を吸うように災厄をまき散らしてません!?


「むう…」

 事態を察したのか、マヤ姉は一歩引いた。

 どうやら衆人環視の下、俺自身がこのロンベルトと戦わなければならない状況になったようだ。

「くそっ…俺がやるしかないか……!」

 俺は覚悟を決めて剣を抜いた。

 オーガ級は詐称でも、今の俺ならゴブリン級の上くらいの実力はあるはずだ。

 やってやれないことはないだろう。


「『エンチャントサンダー』!」

 ロンベルトの剣が雷を纏う。

「いっ!?」

「『雷鳴剣』!!」

 いかずちの如き斬撃を放つ。

「どわーっ!!」

 俺は咄嗟に避けた。

  雷属性のエンチャントを纏ったその必殺技は、アジトの一室を半壊させた。


「きゃあああ!」

「うわあああ!」

 雷鳴剣による衝撃に、ギャラリーを決め込んでいたソフィたちが悲鳴を上げる。

「ほう…」

 マヤ姉だけは感心したような表情だ。

 先ほど蹴散らした雑魚たちと違い、まあまあのやり手と判断したのだろう。

 俺からしたらまあまあどころか、手に余る強敵なんですけど!?


「こ、これがオーガ級の本来あるべき実力……!!」

 しかも必殺技が雷鳴剣と来た。

 畜生、敵ながらカッコいいじゃないか。


「フハハ! 次は外さんぞ!!」

「くっ!」

 再びエンチャントサンダーを使うロンベルト。


 そのときだった。

 マヤ姉がギャラリーに悟られないよう、カッと目を見開き、電撃魔法を放つ。

 ロンベルトの剣がその雷を浴び、刀身が粉々に砕ける。

 彼は驚愕の表情を見せた。

「け、剣が砕けた!? バ、バカな……武器の帯電量を超えるほどのエンチャントをかけた覚えは……」


 その隙を俺は見逃さなかった。

 すかさずロンベルトの懐に潜り込むと、渾身の一撃を見舞った。

「たああああ!」

「ぐわぁ!?」

 いくらオーガ級と言えど、まったくの無防備状態で攻撃を浴びればひとたまりもない。

 ロンベルトは力なく、地面に崩れ落ちたのであった。


「おお! あの”雷落とし”を倒した!」

「すげえ! 神童って噂は本当だったんだ!」

「スゴいわ! アサヒちゃん!」

 ギャラリーたちが口々に俺を褒め称えてくれる。

 ソフィはと言うと、そのギャラリーの後ろで後方腕組み古参面しながら「ね? 見ての通りでしょう?」といったドヤ顔をかましていた。あの、こっちはキミのせいで散々な目に遭いかけたんですけど……


 しかし何より今回は、エンチャントに便乗して敵の武器破壊をしてくれたマヤ姉の功績が大きい。

「マヤ姉、ナイスアシスト…! 助かったよ…」

 俺はマヤ姉に小声で伝えた。


 すると、ロンベルトが放つ雷鳴より速いスピードで、マヤ姉が俺に飛びかかってきた。

「頑張ったな、朝陽! ほーれ、ご褒美をあげよう! お姉ちゃんのハグだ!!」

 いつものように俺を床に押し倒そうとするセンシティブ姉さん。

「みんなが見ている前でやめろぉー!!」


 こうして無事、犯罪クランの混沌麗流を壊滅させた俺たちであった。





 同時刻。

 混沌麗流と同じく、冒険者ランクを悪用するクラン”愚乱荒愚利亜”(グランアレグリア)のアジトが襲撃に遭っていた。


 愚乱荒愚利亜のメンバーたちは自分たちの目を疑っていた。

 なぜか。

 黒髪のショートヘアにヘッドドレス。フリルの付いたメイド衣装。そして両腕には二刀のダガー。

 そんな出で立ちの小柄な少女一人に、クランが蹂躙されていたからである。


「な、なんなんだ!? このメイドの小娘!?」

「ひい! つ、強すぎるぞ!」

「これ以上やらせるな! 一斉にかかれ!」

 各方向から一斉に襲いかかる。しかし。


「『電光石火・六連』」

 その名の通り目にも止まらぬ超スピードによる連続技で、事も無げに一掃されてしまう。


「……ん」

 その彼女の背後から、身の丈2メートル半はあろうかという腹の出た大男がヌッと現れる。

 右手には、そのメイド少女と同じくらいのサイズのメイスが握られていた。

 こんなもので殴られたら、オークと言えどひとたまりもなさそうだ。

「きみぃ…! 我らを愚乱荒愚利亜と知っての狼藉ですかぁ!?」

「……」

 少女を撲殺せんと、メイスを振り下ろす。


 しかしその攻撃は、大剣によって防がれた。

 大剣を持ってメイドを庇った相手もまた、女性であった。

「なにぃ!? わたしのメイスを受け止めた!?」


「当然、知ってますわ。クラン愚乱荒愚利亜のリーダー……”撲殺男爵”ポピンスキーですわね?」


 金髪のロングヘアに、鋼製のフルアーマーを身に纏った女剣士。

 手には、これまた人間サイズはあろうかという大剣。

 おおよそ、女性が扱えるような得物ではないように見受けられる。


「冒険者という職種を貶める悪行の数々、悔いるがいいですわ! 覚悟!!」

 女剣士はメイスを弾くと、ポピンスキーに向かって必殺技を放った。


「『グレイスフル・ストライク』!!」


「はぐああああ!!」

 強烈な一撃を浴び、壁に大穴を開けながら吹っ飛ぶポピンスキー。


「その身に刻みなさい! このわたくし、グローリア・ブリガンダインの名を!!」


 居丈高に、そう名乗りを上げる。

「ひ、ひいい! オーガ級のボスがやられた!」

「こんなバケモン二人、勝てっこねえ! 逃げろ!」

 ポピンスキーもまた、ロンベルト同様、元は名のある冒険者だったのだろう。

 その彼が倒されたことで、配下たちに恐怖が走り、残党らは一目散にアジトから逃げ出していった。


 メイド少女がクールな表情でグローリアに問う。

「お嬢。残党は?」

「敗走兵など放っておきなさい、クオン」

 クオンと呼ばれたメイドが傅く。


 グローリアはふうっと溜息を漏らした。

「ランク詐欺など愚かな犯罪を……冒険者の質も最近は落ちましたわね。ギルドを支援する立場として、わたくしも責任を感じますわ」

「大変ですね」

 感情がまるでこもってない相槌を打つメイド。

「まーたあなたは適当な生返事を。ときにクオン、もう片方の……混沌麗流でしたっけ? そちらの討伐任務にはどなたが?」

「イクサバアサヒという少年です」

 その名を聞き、グローリアはピクリと眉をひそめた。


「知ってますわ、その子。このわたくしをも上回るスピードで、オーガ級にまで出世した神童……。怪しい。不正のニオイがプンプンしやがりますわ」

「どうします、お嬢?」

 グローリアは重装備の大剣を軽々扱うと、その切っ先を都の方角に向けた。

「その実力の真偽、わたくしが直に刃を交えて見極めて差し上げますわ! このグローリア・ブリガンダインがね!!」

 

 軍場朝陽。

 自分の与り知らぬところで、ランク詐称がバレかねないピンチが迫ってきていた。

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