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マヤおねえちゃん

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中です。

https://www.sunday-webry.com/detail.php?title_id=1021

 シーザリオ王国の首都エピファネイアより、ふたつほど山を越えた場所にある平原地帯。

 その外れにある辺境の村が、魔族の大群に占拠されていた。

 

 有象無象のモンスターらを率いるは、一つ目の巨人。

 所謂サイクロプスやキュクロープスに区分される怪物である。

 身の丈は10メートルはあるだろうか。以前対峙し、退治したオークの倍以上はある。

 こんなのと街中で遭遇したら、余裕で失禁する自信がある。


「オレは魔王六将”百獣のギガノト”様直属の配下、キュクロープスのステロペス様だ! この村はオレが支配した!」

 巨人が猛り狂ったように叫ぶ。

 その背後では、モンスターの大群が喝采を送っている。

「この地を足がかりとし、シーザリオ王国に攻め込……」


「『姉ファイア』!!」


 ファイアというにはあまりに威力の大きい、無慈悲な業火がキュクロープスに放たれる。

 哀れ、ステなんとかさんは黒炭と化し、一撃で昇天してしまった。


 やったのはもちろん、我らがチート姉さん、軍場真夜いくさばまやである。

 俺こと軍場朝陽いくさばあさひは、離れたところからそのキュクロープス撃破RTAをただただ見守るだけである。


「ステロペスサマガヤラレター!」

「バケモンダ! ニゲロー!」

 ステなんとかさんの配下たちが恐れおののき逃げ出していく。

 バケモン共にバケモンだと言われる我が姉よ……


「相変わらずの瞬殺劇……さすがマヤ姉。でも今のボス、重要なワードを色々と言ってたような……」

「話の途中で消滅させてしまったな」

 涼しげな顔でそう言う。

 魔王六将”百獣のギガノト”とか、王国に攻め込むとか、穏やかじゃない内容だった気も。

「キュクロープスって言ったら、RPGでもまあまあ終盤に出る難敵なんだけどね。いやぁ凄っ……ん?」

 何者かの気配を感じ、そちらの方を見る。


 そこには幼稚園児くらいの大きさの、泥人形と思しき形状の人型モンスターが3体いた。

 3体ともガクガクと震え、怯えている様子だ。

 大方、マヤ姉の強さに腰が抜け、逃げ遅れたのであろう。

「まだ残党がいたか」

「よし。ここは俺に任せてよ、マヤ姉。俺も少しは仕事しないと」

 これでクエスト完了では、ふた山も越えてここまで歩いてきたかいもないというものだ。

 鞘から剣を抜き、泥人形たちに切っ先を向ける。


 怯えている相手を倒しにかかるのは少し気が引けるが、悲しいかな、この世は所詮弱肉強食。

 強ければ生き、弱ければ死ぬのだ!(急にイキる俺)


 そのときだった。

 泥人形たちは逃げるでも戦うでもなく、いきなり一斉に踊り始めた。

「な、なんだその踊り……?」

 一糸乱れぬ三位一体のダンス。

 例えるならそれは、オタ芸のサイリウムダンスのようなキレキレッぷり。

 思わず見入ってしまう完成度である。


 あれ……?


 なんか……


 頭がボーッと……


 

「突然踊り始めた? なんだ、この珍妙なダンスは……命乞いか?」


 真夜が不思議そうに泥人形たちのダンスを眺めている。

 朝陽はと言うと、剣を構えたままピクリとも動かなくなってしまった。

「…………」

 その朝陽が、無言でクルリと真夜の方を振り返る。

 目線には影が差し、その表情は窺い知れない。


 そんな弟を、訝しげな目で見る真夜。

「どうした、朝陽?」

「……!」

 朝陽が真夜に向かって駆けだしていく。

 そして勢いよく飛びかかった。

 いや、正確に言えば”抱き付いた”


「マヤおねえちゃーん!」


「は!?」


 朝陽は甘えた声を出しながら、真夜にハグをした。

 その普段では考えられないシスコン行動に、さしもの真夜も素っ頓狂な声をあげて驚いてしまう。

「あ、朝陽!? 急にどうした!?」

 そんな疑問も驚きも、朝陽の次の言葉を聞いた瞬間に吹き飛んでしまう。


「えへへー…マヤおねえちゃん、好きー!」


 真夜の全身に稲妻が走る。


 こうなったらもう、ブラコン姉さんは止まらないのだ!

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