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異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~  作者: このえ
軍場姉弟のマイホーム大作戦
30/180

腑抜けた根性

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中です。

https://www.sunday-webry.com/detail.php?title_id=1021

 ミッドデイ卿が所有する物件に取り憑いた悪霊を祓えば、無賃でそこを貸し出してくれるというオイシイ依頼。

 夢のマイホームを手に入れるべく、意気揚々とゴーストハウスへやってきた我ら軍場姉弟であったが……


「手に入れたぞ……! 最強の身体を……!」


「マヤ姉の身体が乗っ取られたあああ!?」


 パーティーのメインアタッカーにしてファイナルウエポンでもあるマヤ姉が、なんということでしょう、悪霊に身体を乗っ取られてしまいました!

 絶体絶命、最大のピンチである。


「力がみなぎる……凄いぞ、この身体は……!」

 マヤ姉feat.悪霊が、手をコキコキと鳴らしながら笑みを浮かべる。

 どんなモンスターをも一撃で屠るチート級の身体だ、さぞ心地が良いだろう。俺だって一度は体感してみたいくらいだ。


「マヤ姉が敵に回るなんて……ヤバい! ヤバすぎる! 史上最大のピンチだ!」

 恐怖におののきながら、自然と後ずさりをする。


 自分の身もヤバいが、この街もヤバい。

 マヤ姉が本気で暴れたら、この首都エピファネイア、陥落の危機まであるんじゃないか!?

 たかだか一軒家の悪霊退治クエストだったハズが、一転して国家レベルの危機になってしまった。


 とにかく、マヤ姉を正気に戻さなければ。

「マヤ姉! 俺だ、朝陽だ! 目を覚ましてくれ!」

 しかしそんな弟の叫びにも耳を貸さず、マヤ姉は俺を捕捉せんと、突進してきた。

「エ……『エスケープ』!」

 すんでのところで逃走スキル『エスケープ』を発動し、回避する。


 しかし避けてばかりでは事態は収束しない。

 なんとかして、マヤ姉を抑え込まないと。

 

「お、抑え込むって言ってもなぁ……マヤ姉と五分に渡り合える人なんて、どこにも……」


「カッカッカ! 元気にしておるか、イクサバ姉弟よ!」


 聞き覚えのある声の持ち主が、豪快に玄関扉を開け放って登場する。

 キルマリアだ。

 魔王六将、キルマリアの登場だ。


「キルマリア!?」

「……!」


 思わぬ人物の登場に驚きの声を上げる。

 マヤ姉も目を丸くしている。

 さすがの悪霊も、人ならざる魔族の突然の来訪には驚いた様子である。


 俺はその隙を突いて駆け出すと、キルマリアの元へと向かった。

 マヤ姉と五分に渡り合える人物……キルマリアがまさにそれ。

 地獄に仏、渡りに舟である。

 まあキルマリアは仏でも舟でもなく、むしろ鬼であり海賊船でもあるのだが。


「んん? なんじゃなんじゃ。姉弟ゲンカかえ?」

「キ、キルマリア! いいところに……って、ちょっと待った」

 安堵と同時に、とある疑問が頭をもたげる。

「なんで街にいるんだ!? 魔王軍の幹部が!?」

 冷静に考えればこれもヤバい。首都陥落の危機がもう一個増えた。


「魔王軍幹部がそう簡単に人里に降りてきちゃダメだろ!?」」

「人を冬眠前のクマみたいに言うでないわ」

「その格好で、よく騒ぎも起こさずここまで来れたね……」

 人目を引く魔女めいた格好に、ボロボロの外套。頭には魔族の証である立派なツノ。

 一般人が見たら確実に腰を抜かして通報モノの要注意人物である。


「認識阻害の魔術を使っておる。普通の人間にわらわのことは見えておらんよ」


 認識阻害……つまり、他の人からは認知されない魔術を使っているらしい。

 いわば透明人間状態のようなものか。

 便利だな、その魔術。俺も覚えたい。

 …………別にえちちな用途で使いたいなどと思っていませんから!


「他の人には見えてないんだ。そりゃ良かった……いや、良いのか!? その気になれば侵攻し放題じゃん!?」

「わらわが興味あるのは強者のみじゃ。侵攻なんぞに興味はないさ。それより……」

 キルマリアがマヤ姉と対峙する。

「その強者の筆頭……何やら様子がおかしいのう?」

 そう言う割には、顔には怪訝ではなく愉悦の色が見える。


 俺はキルマリアに経緯を説明した。

「実はかくかくしかじかで……」

「ほう、そんな愉快なことに」

 愉快ではない。

「情けないのう、マヤ。わらわのライバルともあろうものが、レイスのような雑魚に取り込まれるとは」

 その言葉に、マヤ姉が眉をひそめる。

 雑魚と呼ばれたことに、悪霊が苛つきを覚えたのだろうか。


 次の瞬間、キルマリアは全身に炎のオーラを纏いだした。

「あち! あち!」

 あまりの熱さに、キルマリアから離れる。


「その腑抜けた根性、わらわが叩き直してやろう!」


 静かな夜の住宅街。

 とある一軒家のリビングで、超人同士の対決の火ぶたが切られようとしていた。

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