変わった女だな
電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中です。
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強大な魔力同士がぶつかり合う。
マヤ姉こと軍場真夜と、魔王六将キルマリアの1ターン目は、相殺という結果に終わった。
その衝撃により、互いに後方に飛び去り距離を取る。
「なんじゃと……!?」
「ほう……?」
その光景を目の当たりにし、俺は吃驚する。
「ご、互角!? この二人、互角なのか!?」
それがどれほど意外で、驚きべきことであったか。
俺は見てきた。
オークもワイバーンもすべて、一撃で屠ってきたマヤ姉を。
俺は見た。
この森の主である巨大な熊を、一撃で消滅させたキルマリアを。
この二人はチート級の強さであるがゆえ、どんな敵も1ターンで片付けてきたのだ。
しかし今回、2ターン目に突入。
本人たちが(一撃で終わらない!?)と、当惑した表情になるのも無理はない。
その当惑から一転、愉悦の表情に変わったのがキルマリア。
「……くっくっく」
キルマリアは笑い出した。
「なるほどな……”イクサバアサヒ”の勇名は……カッカッカ! おぬしの仕業であったか!」
合点がいったと言わんばかりに、高笑いを見せる。
一方のマヤ姉は、何のことだと首を傾げている。
「俺の今までの手柄がマヤ姉のものだって気付いたのか……!?」
マヤ姉と拳(という名の特大魔法)を交わしたことで、肌で感じ取ったのだろう。
真に強いのは弟ではなく、その姉だという事実を。
まあキラーラビットよろしく、脱兎の如く逃げるさっきまでの俺と比べれば一目瞭然か。
「嬉しい! 嬉しいぞ! 初手で終わらぬ戦いなどいつぶりか!」
「喜ぶのか。変わった女だな」
難敵の到来に昂ぶるキルマリアとは対照的に、マヤ姉は冷静そのもの。
力は五分でも、その性質は陽と陰で正反対である。
「その調子でわらわを楽しませてみせよ!」
「!」
嬉々として襲いかかるキルマリアと、それを迎撃するマヤ姉。
女傑同士の戦いが始まった。
時間にして1分ほどだろうか。
幾度にも渡る轟音と衝撃波を伴った魔力のぶつかり合い。
その余波は、天変地異が巻き起こったかのように周囲の地形を変えていく。
よくよく見れば、この森に生息していたであろう小動物や小型モンスターも、とばっちりを受けて宙を舞っている。
なんて自然とモブに優しくない戦闘だ。
この戦いにサブタイトルを付けるとすれば、”熱戦・烈戦・超激戦”といったところだろうか。それほど熾烈な攻防であった。
そんな中で俺はと言うと、Z戦士を見守る非戦闘員気分。
目で追うのがやっとだったので、眼球と首がやたら痛い。
そして1分が経過したところで、俺は自分が間違っていることに気付いた。
互角では、なかった。
「かはっ……!!」
女傑の片方がヒザをつく。