バッドステータスの宝石箱
毎週土曜TOKYO MXにて22:30から、TVアニメ『異世界ワンターンキル姉さん』放映中です。
各種動画サイトでもアーカイブ視聴できますので、ぜひご視聴よろしくお願いします!
俺とマヤ姉はダンジョン探索をしていた。
レベル上げがてら、迷宮のボス討伐クエストをこなしているのだ。
「『チャージ』からの……会心!!」
行く手を阻むスケルトンナイトを倒す。
ランク詐称でドラゴン級にまでなってしまった俺だが、それでも雑魚モンスターなら普通に倒せるくらいにまでは成長した。
石の上にも三年、塵も積もればなんとやらだ。誰が塵だ。
「やったな朝陽。レベルも上がったんじゃないか?」
マヤ姉は俺がピンチになったら戦闘を一瞬で終わらせる用心棒として、後方腕組みしている。
その安心感もあって、俺は気軽にレベル上げが出来ているのだ。
「スキルポイント30! ずーっと使わずに溜めてたんだよねぇ」
俺はステータス画面を開いて各数値をチェックした。
「投石を伸ばしてメテオを目指すか、エスケープを伸ばして異世界間ワープを優先するか……このビルド考える時間、ワクワクするー!」
「ははっ、お小遣いを貯めてゲームを買う子供のようだな」
俺を微笑ましく見守っていたマヤ姉が、「ふわぁ」とあくびをする。
「あくび? 眠いの?」
「ああ、少し。三徹はさすがに堪えるな…」
「三徹!? なんで!?」
言われてみれば、目の下にクマも見える。
「もうじき寒くなるだろう? 朝陽のために手編みのセーターを作っていたんだ!」
ハートマークがデカデカと胸に付いたセーターを取り出す。
その上には姉LOVEと描いてある。これは痛い。痛すぎる。
「そんなん着ねえよ、俺!?」
「なに!? 私と朝陽、ペアルック分作っているんだぞ!?」
「なおさら着ないわ! そんなことしてないで寝……あ」
足元で、何かをガコンと踏み込んだ感覚。
会話に夢中になっていて、トラップを踏んでしまった!
「朝陽!」
「うわ!」
マヤ姉が俺を突き飛ばし、身代わりでトラップを受ける。
四方八方からのガス噴射トラップだ。
「だ、大丈夫か!? マヤ姉!」
「けほっ……ああ、子細ない」
ダメージは特にないようだ。
どうやら状態異常を付与するトラップだったようだ。
「マヤ姉ってレベルとバステ耐性高いから、無効化するもんね。ステータス異常。キルマリアもそうだけど」
特性がもうボスなんだよなぁ。
「無敵の姉を持つと心強いよ。先を進もう」
「ああ」
ズズッと音がした気がした。
マヤ姉が足を引きずっている?
いや、まさかね。
ダンジョンを進み迷宮の奥へと進むと、そこにはミノタウロスが鎮座していた。
討伐クエストの対象だ。
さすがにこのレベルの相手は俺には務まらない。
最強の用心棒の出番だ。
「マヤ姉! 頼んだ!」
「ああ!」
ミノタウロスがモーニングスターで攻撃してくる。
しかしマヤ姉はそれをヒラリと交わすと、敵の懐に潜り込んだ。
「『姉パンチ』!!」
何の変哲も無い、ただのパンチ。
しかし敵は一撃で死ぬ……はずだった。
「グッ! グヌウウ…!!」
ミノタウロスは豪快に吹っ飛ぶも、しかし事切れはしなかった。
生きていたのだ、マヤ姉のパンチを浴びて。
「い、一撃で終わらない!?」
俺が驚いていると、マヤ姉は続けざまに二撃目を放った。
「『姉キック』!!」
何の変哲も無い、ただのキック。
身体に大穴が開いた今度こそ、ミノタウロスは絶命した。
「マヤ姉、どこか調子悪い?」
俺は尋ねた。
「? どうしてだ?」
「ワンターンキルじゃないなんておかしいもん。ちょっとステータス見せて」
「ステータス」
ステータスを見て、俺は驚愕した。
毒、猛毒、暗闇、マヒ、石化、スロウ、凍結、感電、炎上、衰弱、死の宣告、カース……
バステだらけであった。
「バッドステータスの宝石箱やあああ!!」