表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/180

いい友達に恵まれた

毎週土曜TOKYO MXにて22:30から、TVアニメ『異世界ワンターンキル姉さん』放映中です。

各種動画サイトでもアーカイブ視聴できますので、ぜひご視聴よろしくお願いします!

 馬車で平原を行き、山林を歩き、目的地のアルマンディン洞穴へと向かう。


 自然に出来た穴らしく、人の手が行き渡っていないため照明などもない。真っ暗だ。

 気温も外よりだいぶ寒い。

 ここにドラゴンが住み着いているのか……ゾッとしない話だ。


 俺たちスーパー朝陽軍団は身を寄せ合いながらダンジョンを進む。

「く、暗いですね…」

「本当にここにドラゴンがいるのかしら?」

「ちょ、ちょっと! みんないるー!?」

「います。そしてユイシス様、私の足を踏んでいます」

 ドラゴンがいるのに普通に騒いでいる女子たち。


「待っててくれ。今『フラッシュ』で灯りを灯すから…」

 フラッシュを使った瞬間、眼前にドラゴンの顔面が現れた。

 いつの間にかドラゴンがいる最奥までやって来ていたのだ。


「ぎゃああああ! いたぁぁぁ!! ドラゴンだあああ!!!」

「ギャオオオオオン!!」

 みっともなく大声を上げてしまった。

 けれど同時にドラゴンも耳をつんざく咆哮を上げたため、俺の悲鳴はうまく掻き消された。


「うきゃあああ!!」

 新たに悲鳴を上げる者が一人。ユイシスだ。

 パニックとなったユイシスは、ドラゴンに向けて特大魔法を放った。

「バカッ! ユイシス! ダンジョンで特大魔法使ったら崩落に……!!」


 ドラゴンは口から火球を放ち、ユイシスの特大魔法を弾き飛ばした。

 上へと軌道が変わり、天井を貫いていく魔法。

 結果、陽が入ってきたことでダンジョン内が明るくなった。

 不幸中の幸い、棚からぼた餅だ。


「天井に穴が開いて視界が開けましたわ!」

「あはは…け、計算通りなのだわ!」

「ウソおっしゃい、ユイシス様」

 冷淡にクオンがツッコミを入れる。

 だが、これで戦いやすくなったのは事実。

 俺はみんなに指示を与えて体勢を立て直した。


「落ち着けみんな! ソフィは全員にバフを! クオンはスピードで攪乱! グローリアは先陣切って攻撃を頼む!」


「物理と属性の防御力を上げます! 『エンゼルソング』!」

 天使のような歌声が響き、全員に防御のバフがかかる。


「ルリ姉の技…使わせてもらいます。『泡沫夢幻』!」

 クオンの姉貴分だった、忍者のルリが使った分身の術だ。


「新必殺技を食らいなさい! 『セイクリッドブレード』!!」

 聖属性のエンチャントを纏ったグローリアの一撃である。


 みんないずれもしっかりとした実力者。

 幾多の修羅場をくぐり抜けているので、ドラゴン相手でも十分に渡り合っている。すごい。

 ……いや、俺だって魔王だし?

 将来性で言えばこの中でも抜きん出て一番のはずなんだけれど、今はね……半人前冒険者なのでね……


 そんな俺の服を引っ張る者がいる。ユイシスだ。

「どうした、ユイシス」

「どうしたじゃないのだわ! あたしへの指示は!?」

 そういえばユイシスには何も言っていなかった。


「いやだってユイシスの魔法一発きりだから、指示も何も……」

「今はひと杖二発撃てるようになったのだわ! あたしだって成長してるんだから!」

 得意げな表情をする。

 確かにヒビは多少入っているものの、杖はまだ無事な様子。

「そうか、じゃあ……って、あぶねえ!」


 ユイシスと会話をしている最中、ドラゴンがこちらへ向けてファイアブレスを放ったのだ。

「どわあああ!!」

「きゃあああ!!」

 咄嗟にユイシスを庇うも、ちゅどーんとギャグ漫画みたいに吹っ飛ぶ俺たち。


 グローリア、クオン、ソフィたちもブレスを受けて満身創痍である。

「くっ! さすがドラゴン…手強いですわ!」

「大丈夫ですか、お嬢。こちらの攻撃が満足に通らない……ジリ貧です」

「み、皆さん! 回復します!」


 劣勢だ。

 やはり頼れるマヤ姉がいないと、このクラスのモンスター撃退は難しいのか。

 くっそー。ドラゴンなら狩りゲーでたくさん倒して、弱点も把握済みなんだけど。


 ……狩りゲー?


 俺はハッとした。

 そしてドラゴンめがけて、あるスキルを使った。

 伝家の宝刀、『投石』である。


「狙うは喉元ッ! くらえ!!」


 ドラゴンの喉元、ウロコが裏返っている部分を狙う。

 石が命中したドラゴンは途端に苦しみだした。

「ドラゴンが堪えている……!?」

「投石で!?」

 クオンとソフィが驚く。


「逆鱗! ドラゴンの喉元には逆鱗っていう、一箇所だけ逆さになっているウロコがあるんだ! そこが弱点なんだ!」


 狩りゲーで何度も狙った場所だ、間違いない。

 しかしそれを警戒してか、ドラゴンは前屈みになって急所を隠した。

「前傾姿勢に…」

「これでは逆鱗を攻撃出来ません!」


 狩りゲー百戦錬磨の俺には通用しない!

 俺はすかさずグローリアとユイシスに指示を出した。

「グローリア、頭をカチ上げろ! そしてユイシス、特大魔法だ!」


「応ですわ!」

 グローリアがドラゴンの懐に潜り込んで、大剣で頭をカチ上げる。

「行くのだわ! 『ブラストウェーブ』!!」

 杖から再び特大魔法を発射し、ドラゴンの喉に大ダメージを与える。

 ブリガンダイン家とミストルテイン家の令嬢ふたり、ナイスコンビネーションだ。


 ズウウンと大きな音を立てて、ドラゴンは倒れた。

「やった! 倒せた!!」

「勇者さまの的確な指示のおかげです!」

「ええ、さすがアサヒですわ!」

「ちょっとー! とどめを刺したのはこのユイシス・ミストルテインなのだけれど!?」


「皆さん、弛緩せぬよう。ドラゴンはまだ動いています」

 一人警戒心を解いていなかったクオンが、そう忠告する。

 確かにドラゴンは息も絶え絶えながらも、とある場所へと向かっていた。


 その場所にはタマゴがあった。

 ドラゴンのタマゴだ。


「タマゴ……! このドラゴン、洞穴で子供を守っていたのか……!」


 俺は逡巡したのち、振り返ってクランのみんなを見た。

 そしてあることを言おうとしたのだが、それはみんなにとって口に出すまでもないことだったようだ。


「とどめは刺さずに見逃さないか…ですわね? もちのロンですわ!」

「ふっ…わかりやすい人です」

「ふふーん! その甘さがアサヒって感じよね!」

「お母さんドラゴン、私が回復してあげますね!」 


 自分の意図をすぐ汲んでくれる……

 いいクランに、いや、いい友達に恵まれたな。

 こっちの世界で俺は。

 心の底からそう思った。


 ドラゴンの回復を終える。

 この場所のことは、ギルドへは適当にごまかしておこう。


「じゃあみんな、帰ろう!」

「おー!」

 俺たちスーパー朝陽軍団はアルマンディン洞穴を後にし、王都へ帰還するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これは卵から美少女が孵化しますねー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ