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メテオ

毎週土曜TOKYO MXにて22:30から、TVアニメ『異世界ワンターンキル姉さん』放映中です。

4/12にはコミカライズ最新10巻が発売されました。

どちらもよろしくお願いします!

 ゾラの謀略である、覚醒の腕輪による朝陽の強制レベルアップ。

 それによって朝陽は、魔王として覚醒してしまった。


 髪の毛は急激な速さで伸び、腰ほどの長さにまでなっている。

 はだけた上半身には、魔族の証であろう禍々しい紋様が浮かび上がっている。

 その瞳はギラリと怪しく光り、正気を失っているようである。


「朝陽…!」

 変貌を遂げた弟の姿に、真夜は戸惑いの様子を見せている。

「朝陽! お姉ちゃんだ! わからないか!?」

「…………」

「わからないのか……!」

 唇を噛む。


「ぬう……」

 キルマリアはそんな真夜を慮り、代わりにゾラに問う。

「強制的にレベルアップじゃと!? ゾラ! アサヒの魔王覚醒が目的で近付いたのか!?」

「左様…」

「!? な、なんじゃジジイ……泣いておる…!?」

 ゾラは滂沱の涙の流していた。

「喜べ、壊乱の。魔王の帰還じゃ……!!」


 自身の宿願が叶ったことで、ゾラは喜びの涙を流していたのだ。

 チッとキルマリアは舌打ちをする。

 そしてアサヒに飛びかかった。


「やかましい! 要は覚醒の腕輪とやらを外せばよいのじゃろう!?」

「キルマリア!」

「よさんか、壊乱の! 貴様、謀反を起こす気か!?」

 呼び止めるゾラを振り切る。

「謀反で結構! 魔王となった朝陽と戦ってみたいとは言ったがの……こういう形は望んでおらんのじゃ!」

 キルマリアが朝陽の右腕を掴もうとする。

「破壊させてもらうぞ、覚醒の腕輪!」


 朝陽とキルマリア。

 通常ならば到底太刀打ちできないほどのレベル差があるが、しかし。


「『エスケープ』レベル100……『瞬間移動』」


 朝陽が小さく呟く。

 すると朝陽は目にも止まらぬ速さでキルマリアをかいくぐり、ダンジョン内を高速移動した。

 上も下も左右もない、まさに縦横無尽。縮地の域である。


「は、速い!!」

 キルマリアと真夜が同時に叫ぶ。

 人間離れした二人をもってしても、目視するのが精一杯のスピードであった。

「な、なんじゃ? 何が起こっておる!?」

 ゾラに至っては目が追いついていない。


「上だ! キルマリア!」

「ぬ!?」

 天井スレスレに瞬間移動した朝陽は、右手に握りこぶしを作っていた。

 ただのステゴロ。

 しかしキルマリアと真夜は脅威を感じている。


「と、とてつもないパワーを感じるぞい……本当にアサヒの力かえ!?」

「ダンジョン内で奮っていい力ではないぞ、これは」

「ま、魔王…?」


「『チャージ』レベル100……『かみのいちげき』」


 力一杯、地面に向かってパンチする。

 ただそれだけで、砦は崩壊したのであった。





「カーッ! 敵も味方もありゃせんのう!」


 全壊した砦の瓦礫から、キルマリアと真夜が這い出てくる。

 キルマリアは咄嗟に真夜に覆い被さり、バリアを張っていたのだ。

 二人ともホコリは被っているもののケガは無いようだ。


「急激にレベルが上がったことで正気を失っているようだ。しかし砦を一撃で粉砕するとは……」

「おぬしもそれくらいの芸当は出来るじゃろうが、なんせ今回はアサヒじゃ。狼一匹にすら手こずるアサヒに、こんな潜在能力が眠っておったとはの」


「空がずいぶんと暗いな…」

 砦に来る前は晴れていた空には暗雲が立ちこめていた。

 ゴロゴロとカミナリも鳴っており、まるで大気も震えているようであった。

「朝陽の……魔王の力は気象すらもおかしくさせるか」


 二人のそばには、瓦礫に頭から突っ込んだまま逆さまになっているゾラの姿もあった。

「ゾラという老体も崩落に巻き込まれているな」

「カーカッカッカ! 自分が目覚めさせた者にやられるとは世話ないのう! 自業自得、ざまみろじゃい!」

 キルマリアは爆笑している。

「む!」

 真夜が上を見上げる。


 半壊して斜めになった塔の上に、朝陽は立っていた。

 相変わらず虚ろな目をしたまま、ゆらゆらと揺蕩っている。


「『フラッシュ』レベル100……『ライジング・サン』」


 朝陽が天を指差しスキルを放つと、暗雲立ちこめる空が一気に晴れていった。


「暗雲を晴らした……!」

「ランタン代わりや目眩ましにすぎなかったフラッシュが、レベル100になったら暗雲すら晴らすじゃと!? とんでもないのう!」

「朝陽が使える初歩中の初歩のスキル。そのいずれもが、強大な威力になっているな」

「アサヒのスキル……そうじゃ、投石! 投石はどう進化しておる!?」


 そのオーダーに応えるかのように、朝陽は手の平を天にかざし、静かに唱えた。



「『投石』レベル100………………『メテオ』」



 朝陽の呼びかけに従い、宇宙空間から大きな隕石がゆっくり大地に向かってくる。


「「メテオぉぉぉ!?」」


 真夜とキルマリアは互いに顔をくっつけ合いながら叫んだ。

 石を投げるだけの投石……その最終進化形がよもや隕石墜としとは。


 王都、いや全大陸の一大事である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] え? なんかスキルがぶっ壊れてない? これワンチャン姉貴超えたか?
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