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次代の勇者かもしれん

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中です。

https://www.sunday-webry.com/detail.php?title_id=1021

 俺の窮地を救ってくれた謎の女性、キルマリア。


 彼女は自らを、”魔王軍幹部”と名乗った。


 しかも”魔王六将まおうろくしょう”という身分と、”壊乱かいらんのキルマリア”という大仰な二つ名付きだ。


 突然そんなことを言われて、FXで有り金全部溶かしたような顔になる俺。

 まさに茫然自失。唖然呆然だ。

 遅れて、感情がドドドドドドッと押し寄せてくる。


 はああ!? 今なんかすげぇワード出なかった!?

 魔王軍幹部!? 魔王六将!? 

 それ、三闘神とか四天王とか七英雄的なヤツじゃねーの!?

 こんな序盤で会うか、フツー!?

 っていうかあの角、飾りじゃなくてマジモンじゃねーか!!

 魔族だよ、この人ぉぉぉ!!


 頭がフットーしそうになった。

 当然だ。まだレベル一桁台なのに、魔王軍幹部と出くわしたのだから。

 他に出くわさなきゃいけないモンスター、山ほどおるやろ!


 内心ビビりまくる俺に対し、しかしキルマリアは予想外の言葉を放った。

「安心せい、少年」

「へ?」

「わらわは弱者には興味ない、襲いなどせぬよ」

「は?」


 魔族でも、必ずしも人間の敵というわけではないのか?

 まあ最近のゲームやアニメ、ラノベでも、魔族と共生しているタイプの作品は結構あるから、それほどイレギュラーな事態でもないのかもしれない。現に俺はキルマリアに二度も助けられた。


 直ちに危険はない……そう判断した俺は、ホッと胸をなで下ろした。

「な、なんだ……よかった。安心した」

「カッカッカ、”弟”を襲う”姉”などおるまい」

 キルマリアは冗談めかしながら、そんなことを言った。


 いや、それがいるんですよ……隙あらば弟を押し倒して襲おうとする姉がね。

 身近にね。


「どこかにわらわを楽しませてくれる強者はおらんのかのう……そうじゃ、ひとつ尋ねたいんじゃが」

「ああ、俺が答えられることなら」


「”イクサバアサヒ”という者を知らんかの?」


 心臓が口から飛び出そうになった。比喩じゃなく、本当に。

 なぜ魔王軍幹部の口から、ピンポイントで俺の名前が飛び出る!?


「彗星のようにギルドに現れ、最近急激に評価を上げてきた冒険者らしいんじゃ。噂によればオーク三兄弟やワイバーンも一撃で倒したとか」

 身に覚えはめちゃくちゃある。殺ったのは俺ではないが。

「オーク三兄弟は魔族でもそれなりに知られた猛者なんじゃが、それを瞬殺とはな……カッカッカ! 次代の勇者かもしれんな、そいつは! 一度死合ってみたいものじゃ!」

 キルマリアはまだ見ぬ宿敵を想像して、楽しげに笑っている。


 一方、俺は抜き足差し足でコッソリ逃げ出そうとしていた。

「じょ、冗談じゃない……! 魔王軍幹部とか、今までのモンスターの比じゃない超弩級の厄ネタじゃん!! 関わったらマズい……さりげなく退散……!」

 小声でそう呟きながら、その場を後にしようとする。


 そのとき、何かが胸ポケットから落ち、コロコロとキルマリアの足下まで転がっていった。


 俺の見間違いでなければ、あれは……バッジ……かな?


「少年、何か落としたぞ」

 キルマリアがバッジを拾い上げる。彼女はバッジに描かれていた名を読み上げた。

 ターニャいわく”王都が認定した冒険者の身分証明書みたいなもの”だけあって、バッジにはご丁寧に名前が彫られているのだ。ボーンヘッドである。


「イクサバアサヒ……ほう、おぬしが。人は見かけによらんのう?」

 かくれんぼで標的を見つけた鬼のように、無邪気かつ邪悪な笑みを浮かべるキルマリア。


「……いや、案外見かけ通りなんですけどね」

 滝のような冷や汗を流しながら、引きつった笑みを返す。


 これはもしかして、RPGでよくある負けイベントですか。

 負けてもOKならば安心して負けますが、先ほどのカイザーベアのように灰になってもストーリーって進行するんですかね。いや、無理でしょう。

 

 魔王軍幹部とまさかの邂逅を果たし、絶体絶命のピンチに陥った俺。


 ああ、俺はただキノコ狩りがしたかっただけなのに。

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