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少年漫画の主人公っぽい

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。1~9巻発売中。

2023年4月8日(土)TOKYO MXにて、22時30分からTVアニメが開始します!

よろしくお願いします!

 自宅にて、何気ない日常を送る。

 軍場朝陽と軍場真夜、姉弟二人で住んでいる我が異世界の住まい。


 ちょっと非日常があるとすれば、我が物顔で居座る居候の魔王六将と、庭の池で気持ちよさそうに回遊している魔王六将が居るくらいだ。

 あと最近知ったんだけれど、ちょいちょい遊びに来るメカクレ少年も魔王六将だったらしい。

 この家、魔王六将の半数が自由に出入りしているのか……モンスターハウスかな?


「魔王ー。肩こりが酷いんじゃ、肩揉んでくれんかのう?」


 我が物顔で居座るタイプの魔王六将が、右肩をグルグル回しながらニヒヒと笑っている。

 俺をからかっているのだ。

「キルマリア……イジる感じで魔王って言うのやめてくれる?」

 俺は引きつった笑顔を見せる。


「少年漫画の主人公っぽいよ? 叩き上げの強さかと思ったら、実は英雄の血統でしたとかで後付けで強さに説得力作るヤツ……でも俺、現状強くないのよ! 魔王とか言われてもただの皮肉なんよ!」


 言ってて悲しくなってきた。

 そりゃあレベルもパラメータも異世界召喚初期よりはだいぶ上がっているけど、それでもようやく並の兵士ってくらいだ。俺ツエーなどとは無縁の世界である。


 マヤ姉は読んでいた本を畳んで、俺に言った。

「ローマも魔王も一日にして為らず。のんびり行こうじゃないか、朝陽」

「のんびりし過ぎると現実世界の俺たち、寝たきりのまま成人しちゃわない?」


 こちらの世界に来てずいぶん経つ。

 このままでは成人はともかく、留年くらいはしそうである。

 まあ、そもそも向こうの世界に戻れる保障もないのだけれど。


「現実世界ってなんじゃ?」

 キルマリアが首を傾げる。

「あー……えっと」

「キルマリアには言ってなかったか? 私たちは……」


「み、みんなー…誰か尋ねてくるよー」


 外から、庭の池で気持ちよさそうに回遊するタイプの魔王六将の声が聞こえた。

 エスメラルダだ。

 何だろう、もはや番犬のよう。

「む、客人かえ」

 キルマリアは認識阻害の術を使って、村娘に扮した。


「こんにちはー! 出張依頼に来たっす!」


 やってきたのは冒険者ギルドの受付嬢、ターニャであった。

 その背後にも誰かいるようだ。


「ターニャじゃないか」

「出張依頼? なに、俺たちに指名ってこと?」

「そうなんす。イクサバ姉弟にって」


 だとしても、わざわざ家にまで尋ねに来るとは珍しい。

 普通は冒険者ギルドでクエストは受けるものだが。

「急ぎのクエストらしくって、それで家を教えてくれって。このおじいちゃんが。それで連れてきたんすよ」

 依頼者はローブを深々と被った小柄な老人であった。


「儂はペルコフと申します。我が家系に伝わ宝がありましてな。その家宝が賊に奪われ、彼奴らの根城……その宝物庫にに眠っておりますのじゃ。それを奪い返して頂けぬかと、”評判高いイクサバ姉弟”にこうして頼みに来たのです」


☆ 


 断る理由も特に無い。


 俺、マヤ姉、キルマリア、ペルコフさんの四人で、その根城に向かった。

 山をひとつ越えた先にある、鬱蒼とした森に囲まれた砦。

 なるほど、賊が宝を隠すにはうってつけの場所とも言える。


 それにしても。

「ペルコフさんまでついてこなくても……危ないですよ?」

「フォフォ……せっかくですから、若き英雄の勇姿をこの目で拝みたく。はい。それに儂も若い頃は冒険者をしておりました。自分の身くらいは守れますぞ。フォフォ」


 確かに、登山でヒーヒー言ってた俺をよそに、ペルコフさんは息ひとつ乱れていなかった。

 あれ、この四人の中で俺が最弱?

 魔王の生まれ変わりとか言う設定もらったのに?


 背後ではマヤ姉とキルマリアが何やらヒソヒソと話している。

 何を喋っているのだろう。



「キルマリアまでどうしてついてきた」

 真夜がふうっと溜め息をつく。

「カカッ! 家で留守番は退屈者からのう」

「今はエスメラルダもいるし、まあ留守番は彼女一人で十分すぎるくらい十分か」


「それに……」

「それに、なんだ」

 キルマリアの鋭い視線が、ペルコフの背中にそそがれる。


「あの翁、匂うのでな」


「奇遇だな。私もだ」

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