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海竜のあとしまつ

 エスメラルダが去ったあとがまた大変だった。


 海竜のあとしまつ……水害に遭った港町ブエナベントゥーラの復旧作業である。


 現地の住民や自治体、王国からの災害派遣隊、ギルドから依頼されてやってきた冒険者らによって、急ピッチで後片付けがなされ、数日掛けて街は元通りになった。


 俺たちスーパー朝陽軍団も総動員で復旧作業を手伝った。

 休暇中ではあったが、グローリアとも縁のある街だ。当然、放ってはおけない。

 流れ着いた樹木やゴミ、泥を掻き出す作業に尽力した。

 まあマヤ姉やグローリアが重機さながらそれらを撤去している端で、俺は泥に浸かった家を掃除してただけだけど。

 


 そして無事にあとしまつが終わったら……バカンスの時間である!


「海だー!」

 水着姿のターニャがはしゃぎながら、我先にと海へ飛び込む。

「こ、こんなに肌が出る服装……恥ずかしいけど、せっかくだから羽を伸ばします!」

 ソフィも海へ入っていく。

 小麦色の健康的なターニャの肌に、普段は教会内で過ごしているソフィの色白の肌……

 そのコントラストが海と青空に映える。

「ほら、ソフィ!」

「もう! ターニャ!」

 二人で水を掛け合っている。微笑ましい光景だ。


「あんなにはしゃいで……ふふん、市民だわね。海はもっとハイソに楽しむものなのだわ」

 そんなことを言いながら、ユイシスが浮き輪でプカプカ浮かんでいる。

 ハイソと言うより、あれはただの泳げない子供の姿と言えよう。


「ふう…優雅なひとときですわぁ……」

 パラソルを広げ、折りたたみの簡易ベッドに寝転びながら、フリル付きの派手な水着に身を包んだグローリアがトロピカルジュースを啜る。

 その脇では、機能性のみを追求したようなシンプルな水着を来たクオンが、デカい葉っぱでグローリアを仰いでいた。

 まるでお嬢さまとそのメイド……まるでじゃない。

 ズバリそういう関係性だった。


 女子たちがプライベートビーチで戯れているそんな様子を、俺は砂浜の隅っこで眺めていた。

 何というか、出るに出られないというか、気恥ずかしいというか。


「アサヒ氏。覗き見など趣味が悪いですよ」

 俺の気配に気付いていたクオンが、そう指摘する。

「の、覗き見じゃねーっての!」

「あら、アサヒも着替え終わってましたの?」

「ああ、まあ……でも海なんて小学生の時以来だから、なんか水着になるのハズくて…」


 俺が砂浜に現れると、みんなの視線が俺の身体に集まった。

「おお!」

 やめろやめろ!

 高校一年生の帰宅部相応でしかない薄っぺらい中肉中背、見る価値なんてない!

 まあ異世界生活を送ってきたことで、少しは筋肉も付いてはいるけど、それでも人に見せられるほどのもんじゃない。腹筋だって別に割れてないし。


 だが、周りの反応は意外にも好印象であった。

「勇者さま! 精悍なお姿です!」

「アサヒくん、肌キレイっすねー!」

「ふーん、アサヒにしては悪くない体つきしてるじゃない」

「半裸のアサヒですわー! 眼福ッ!!」

「お嬢、言い方」


 褒められると、それはそれで恥ずかしい。

 俺は自然と胸元を隠した。乙女か。


「わたくし、ボディには少し自信がありますの……この水着姿でアサヒを悩殺ですわ!」

「グローリアはちょっと筋肉がつきすぎです。私くらいプニプニしてる方がちょうどいいんです」

「アサヒくん、ちょいちょいあたしのこと黒ギャルって呼ぶけど……もしかして褐色が好みかも?」

「ふん! あんたたちは無駄肉が付きすぎなのだわ!」

 女性陣が何やらワイワイと賑わっている。


「む…」

 クオンだけが何かに気付く。

 砂浜に新たに人がやって来たのだ。


「皆様方……その自信とやら、あのお二方の前でも出せますか?」


「「「「お二方?」」」」


 グローリア、ソフィ、ターニャ、ユイシスの声がハモる。

 クオンが指差す方を見ると、二人のナイスバディな女性がやってきた。


 マヤ姉とキルマリアである。


「朝陽、海に入る前に準備運動だぞ。どれ、お姉ちゃんが手取り足取り手伝ってやろう」


「カッカッカ! このような薄着で海に浸かるなど、人間はおかしな遊びをする生き物……っと。人間口調にせんとな」


 マヤ姉は大胆な黒ビキニを着用し、その上から水着のショートパンツを穿いている。

 露出度で言えば普段と変わらないのだが、開放的な海というロケーションも手伝ってか、より魅力的に映る。

 キルマリアはパレオ付きのエレガントな水着を着ている。

 もちろん魔族ではなく町娘の姿であり、あの水着も認識阻害の術でそう見せているだけだろう。

 

 いずれにせよ、二人ともダイナマイトボディである。


 クオンが言っていた”お二方”を前にし、グローリアたちは意気消沈してしまった。

「あ、あれには勝てませんわ……!」

「さすがお姉さまです……!」

「相手が悪かったですね。そもそもアサヒ氏、色仕掛けが通用するタイプでもないでしょう」

 クオンが淡々と言う。

 みんな、俺のことを何だと思っているんだろう。


 何はともあれ、俺たちはゆっくり海を満喫することにした。


 浸水した街、水棲モンスターやクラーケンの襲撃、対エスメラルダ、街の復旧作業……

 この数日は働きづめで疲れた。

 今日くらいはのんびり羽を休めよう。

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。1~8巻発売中です。

2023年のTVアニメ化に伴い、アニメ公式サイトと公式Twitterが開設されました。

よろしくお願いします。


10/24にソフィ、グローリア、クオン、ターニャ、ジークフリートなどのキャストも

発表となるようなので、お楽しみに〜

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