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聖剣デュランダル

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。1~8巻発売中です。

2023年のTVアニメ化に伴い、アニメ公式サイトと公式Twitterが開設されました。

よろしくお願いします。

 俺の名前は軍場朝陽いくさばあさひ

 異世界に召喚され、今は剣一本で食っている冒険者だ


 侵入者を排除せんと、ダンジョンをさまよう動く鎧騎士とだって渡り合っていける。

「てえええい!」

 ガキンと勢いよく弾かれる、我がブロードソード。


「剣一本で全然食えてません! 見栄張っちゃいましたー!」

 動く鎧が無手となった俺に襲いかかる。

 しかし剣はなくとも、俺には異世界最強の見守り役がいる。


「『姉アーマーブレイク』!」


 そう、マヤ姉だ。

 魔法が使えぬダンジョン内でも、彼女は触れる物全てを滅殺する格闘術も備えている。

 動く鎧は一撃で粉々になった。

 鎧を動かしていたであろう悪霊も、同時に霧散する。


「大丈夫か。はい、朝陽の剣」

 動く鎧に弾かれたブロードソードを拾ってくれる。

「助かったよ、マヤ姉」

「だが安心するのはまだ早いようだ」


 ガシャン、ガシャンという音が鳴り響く。

 ダンジョンの奥から動く鎧が大勢やって来たのだ。


「行く手を妨げる鎧だけの亡霊か……このダンジョンの噂が真実めいてきたな」

 マヤ姉がそう言う。

「ああ、きっと守ってるんだと思う……聖剣デュランダルを!」



 時は遡ること数日前。街の一角。

 俺はターニャと一緒に、剣の稽古をするジークさんとロイを見守っていた。


「てい! ていやあ!」

「いい打ち込みだ。もっと上段と下段を振り分ける意識を持って!」

「は、はい!」

 ジークさん、すっかりロイの良い師匠だ。


「信じられないっす。ロイに冒険者の才能があるかもなんて…」

 ターニャが目を丸くして驚いている。

「あの若さで剣技スキルを身に付けたくらいだもん、ロイは素質あると思うよ」

 たぶん俺より…という言葉は飲み込んだ。

 ハリボテとは言えゴーレム級としての矜持である。


 ターニャはギルドの制服姿である。

「いいの? 仕事中だろ?」

「今は休憩中っす、だいじょぶ」

 休憩の合間にこうして弟の稽古を見に来るとは、出来た姉である。

 まあウチの姉もそうだし、姉とは基本過保護なものなのかもしれない。


「ロイ君、今日の稽古はここまでにしよう」

「は、はひ……あ、ありがとうございましたぁ……!」

 ジークさんはさすが汗ひとつかいていないが、ロイはもうヘロヘロだ。


「ほら、ロイ。汗ふいたげる」

「い、いいようお姉ちゃん! 自分でふくから!」

「なーに照れてるの。反抗期にはまだ早いよー」

 微笑ましい光景だ。


「ジークさんもお疲れ様です」

「なに。まだまだ余力たっぷりさ。そうだ、アサヒくん仕合ってみるかい? ほら、この間は中断しちゃったし」

 冗談ではない。

「い、いや大丈夫っす! そ、それに今日は剣の調子が悪いんで!」

 斬新な言い訳である。

 いやほら、道具にも魂が宿るって言うじゃないですか。

 付喪神だったっけ?


「そういえば……」

 ターニャが不思議そうな顔で俺に尋ねてきた。

「アサヒくんはずっと同じ剣っすね」

「え? ああ、うん」

「買い換えないんすか? それ一番安いブロードソードでしょ?」


 うっ、と一瞬言葉に詰まる。


 軽くて使いやすいから。

 買い換える金が無いから。

 マヤ姉がワンターンで戦闘終わらせるから剣強くする必要がないから。

 一番下の理由が何より大きいのだが、俺は咄嗟にこう答えた。


「一流冒険者は使う武器を選ばないってね…!」


「ヒュー! さすアサっす!」

 ターニャが単純…もとい、素直な子で助かった。事なきを得た。

 ジークさんが「でも……そうだな、アサヒくんなら……」と何やら思案している。

「ジークさん?」

「アサヒくん、キミの信念は素晴らしいけど、でも聖剣ってヤツに興味はないかい?」 

「聖剣!?」


 めちゃくちゃ興味あります!



 場面は今現在に戻る。

 俺とマヤ姉は長い螺旋階段を下っていた。


「……それで、その聖剣デュランダルとやらがここ、地下街フォルトファーレンに眠っている…と」

「らしいよ」

「ジークフリートはそれを知っていたのに聖剣を手に入れなかったのか?」

「ジークさんも前にバルムンク一行で訪れたことがあるらしいんだけど、聖剣は持って帰れなかったって。キミも挑戦してみたらどうって教えてもらったんだ」

「見つからなかったではなく、持って帰れなかった……か」

 その含みのある言い方に、マヤ姉は疑念を抱いているようだ。


 確かに「持って帰れなかった」ってどういうことだろう。

 謎を抱えながらも、俺とマヤ姉は地下へ地下へと潜っていった。


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