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異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~  作者: このえ
朝陽、駆け出し冒険者の面倒をみる
134/180

男三人でツルんじゃいます

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。1~7巻発売中です。

現在アニメ化企画進行中!

「アサヒー、退屈じゃー! わらわの相手をせーい!」


 家でくつろいでいると、ヒマを持て余したキルマリアが肩に腕を回してベタベタひっついてきた。

「ダル絡みすんなっつの、キルマリア……」

 あと肩に乗ってるんだ。その、胸が。


 もう慣れたけど、その真ん中がパックリ開いた服も目に毒なんだよな。

 露出が過ぎませんか、この魔王六将。


「いっつもウチいるけど、魔王六将ってヒマなの? 仕事ないの?」

「不躾じゃのう」

 ふむ…とキルマリアは腕組みをし考え込んだ。


「未来の勇者の芽を摘んだり、街を侵攻したりが一応の仕事かのう」


「ずっとヒマでいて下さい……!! あ、酒呑む? お酌する?」


 俺は酒瓶を持った。

 魔王六将に本来の仕事をさせてはいけない。

 この家に留めておくことが世界平和の第一歩なのだ。


「キルマリア、朝陽を困らせるな。忙しい身なんだ」

「マヤ姉」

 マヤ姉は掃除の手を止め、キルマリアを注意した。

「忙しいようには見えんがの」

 う、図星。

 実際、今日はクエストもクランの集まりもなくてヒマなんだよな。


 マヤ姉が目の色を急に変え、ガッと抱きついてきた。

「朝陽はお姉ちゃんとらぶチュッチュするのに忙しいんだもんなー!」

「だー! 前門の虎、後門の狼ぃぃぃ!」

 助け船と思ったものはどうやら泥船だったらしい。


「ズルいぞ、マヤ! わらわもまぜい!」

「うげっ!?」

 キルマリアも乗っかってきた。重い、重い!

「こら、キルマリアは離れろ」

「マヤこそアサヒを独り占めするでなーい」

「エ…エ…」

「ん? なんだって、朝陽?」


「『エスケープ』!!」


 俺は戦闘から離脱するスキル『エスケープ』を使い、二人のボディプレスから逃げ出したのであった。



 街を歩く。

 家は心安まる環境じゃない……大通りでも散歩しよう。

 何か面白い出会いがあるかも知れないし。


「やあ、アサヒ君」

「わぁ、アサヒくんだー!」

「え?」


 誰かに呼び止められ振り返ると、そこに居たのは珍しい二人組であった。

 ドラゴン級の冒険者ジークフリートさんと、ターニャの弟のロイだ。

 どういう組み合わせだろう。


「ジークさん、ロイ! 珍しいですね、どうしたんです?」

「えへへ、街の外に修行に行くんだ!」

 ロイは右手に携えた木刀を掲げた。


「ロイ君、ウチの剣術教室に通う生徒の中でも実に筋が良くてね」

 ジークさんは俺の提案で、グローリア邸の敷地を使っての剣術教室を定期的に開いている。

 そうか、ロイもそこに通っていたっけ。


「俺もロイにたまに稽古付けてますけど、いい動きしますよね」

「うん。それで本人の強い希望もあって、そろそろ課外授業もいいかなと」

 課外授業……つまりフィールド上で実地訓練を付けるということか。


「街の外って、ロイ、ターニャに許可取ったのか? 危ないぞ、モンスターもいるし」

「おねえちゃんは反対してたんだけど……でも僕だって成長してるからね! ナイショで行っちゃうんだ!」

 そう言って胸を張るロイ。

 過保護な姉から独り立ちしたいんだな、それは分かるが……


「まあでも、ドラゴン級のジークさんがいればモンスターの心配もいらないか」

「そこまで街から離れもしないし、このあたりの敵なら問題ないよ。それでも心配なら……」

 ジークさんが顎をクイッと動かす。

「アサヒ君もどうだい?」

「え、俺も?」


 ちょうどヒマしてたし、それもまた一興か。

 いつも屈強な女性陣に囲まれているし、たまには男性同士で気兼ねなく行動したい気持ちもある。


「いいですね。男三人でツルんじゃいます?」

「やったー! アサヒくんも一緒だー!」

 ロイが喜んでいる。

 可愛いヤツめ。



「いい剣捌きだ! もっと強く打ち込んでこい! ロイ君!」

「えい! やあ!」


 草原沿いに広がる林の中で、木刀を使った剣の稽古をするジークさんとロイ。

 俺は少し離れた場所で、木陰に座って見学している。


 いやしかし、俺が稽古を付けてたときよりロイはだいぶ上達している。

 やはりジークさんの鍛錬がいいのだろう。

 少し寂しいけど、俺の剣は見よう見まねの我流でしかないからなぁ。


 “それ”はロイが気合いを溜めたときに起こった。


「はあああ……!」

「む!?」

「え!?」


 俺とジークさんは同時に目を丸くする。

 それもそのはず、ロイの剣の切っ先がバチバチと電撃を帯びたからだ。 


「やああああ!」


 ロイが剣を振ると、その切っ先から小さな衝撃波が放たれ、ジークさんの背後にあった木に亀裂が入った。


「な、なんか出た!? 今の何だよロイ!?」

「え? え? いや…僕はただただ夢中で……」

 衝撃波を出した本人も目を丸くして驚いている。


「稽古のさなかで、『真空刃しんくうは』のスキルを自然に習得したんだ! その若さでたいしたもんだ!」

 ジークさんは白い歯を見せた。


 俺でもまだ剣術のスキルはチャージくらいしか覚えてないのに……まさかの飛び道具!?

 ロイ、上達速度ヤバくない!?

 俺、あっという間に抜かれちゃうんじゃ……危機感やばい。

 

「ひとまず休憩としようか。スキルを発動したんだ、身体の負担も大きいはず」

「は、はい、ジーク先生。実はもうヒザが笑って……」

 ロイは糸が切れた人形のように地べたに座り込んだ。


「あの子は才能があるよ。キミと同じだ」

「は、はあ…」

 ジークさんはそんなことを言ってくれたが、俺は全力の苦笑いで返すことしかできなかった。

 いやだって俺の冒険者ランク、詐称ですからね……

 実際はそんな強くないんですよ、はい。


 俺とジークさんが談笑していると、ロイが何か言いたげにこっちを見ていた。

「どうした、ロイ」

「あの……ひとついい?」

「うん?」


「アサヒくんとジーク先生ってどっちが強いの?」


 そんな無邪気で残酷な質問が、急にぶつけられた。

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