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異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~  作者: このえ
朝陽、駆け出し冒険者の面倒をみる
130/180

ブリガンダイン家とミストルテイン家

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。1~7巻発売中です。

現在アニメ化企画進行中!

 街の広場で対峙する二人の令嬢。

 グローリア・ブリガンダインとユイシス・ミストルテイン。


 二人には一体どんな因縁があるのだろう。


「ふふーん! 口に出さずとも、その目が! 表情が! 雄弁に語っているのだわ!」

 最初に口を開いたのはユイシスの方だ。

 声量がバグっている。

 周囲の人たちも驚いて振り返っているじゃないか。


「“貴女も冒険者になったのか”でしょう? ブリガンダイン家の人間に可能だったんだもの、ミストルテイン家のあたしになれない道理はないんだから!」

 そう言って、居丈高な様子でグローリアを指差す。


 右隣にいるクオンに話しかける。

「クオン、あの二人知り合いなの?」

「ブリガンダイン家とミストルテイン家は、昔から家同士に確執があるのです」

 左隣にやってきた、ユイシス付きのメイドのジルさんが続ける。

「ギルドや一般市民に与するブリガンダイン家と、上流階級の貴族らにのみ与するミストルテイン家……思想からしてウマが合わねえのよ」

「なるほど」

 グローリアは市井に降り、”無辜の民を救わねば”と一般市民にも手厚いが、ユイシスは”平民”呼ばわりだもんな。

 そういうところも家柄の教育の差が出ているのだろう。


「それで令嬢同士にもライバル意識が芽生えてるんだな」

「いやぁ同士っつーか……なあクオンちゃん」

「……ですね」

 ジルがケケケと笑い、クオンが静かに頷いている。

 なんだろう、この反応。


「悔しい? グローリア・ブリガンダイン! そうよね、だって……」

 ユイシスにずかずか迫っていくグローリア。

 殴りかかる気か!?

 一瞬そう思ったが、しかし。


 グローリアはユイシスの腋の下を持って、満面の笑みで持ち上げた。

 所謂、”高い高い”である。


「ユイシスも冒険者になったのですわね! 嬉しい!」

「ひゃあ!? ちょ、ちょっと下ろしなさーい!」

 ユイシスは顔を赤らめながら怒っている。


「あれ?」

 俺は目を丸くした。

 ライバル感、全然ないんですけど。


「あの二人、ユイシス様が一方的にライバル視してるだけでよう…」

「お嬢は彼女のことを幼なじみの親友、もしくは妹みたいに思っているのです」

 ユイシスは敵視しているが、グローリアはそんな眼差しなどどこ吹く風、彼女のことを可愛がっているらしい。

 なるほど、ユイシスの一方通行だったか。


「グローリア・ブリガンダイン! あんた、昔からそうね! 家同士の仲が悪いこと、自覚してる!?」

 高い高いされながら、ブンブンと手を振り回している。

 その小ささも相俟って、まるで駄々をこねる子どもだ。


 グローリアはと言うと、きょとんとしている。

「家は家、わたくしたちはわたくしたちでしょう? それを理由に仲違いする必要がどこにあって?」

 真理を口にし、首を傾げるグローリア。

 実に彼女らしい理屈だ。

「ッ…!」

 ぐぬぬという顔をするユイシス。


「あ、あたしは……! 昔から父様や母様にプレッシャーをかけられて……あんたとも遊ぶなって言われて……でもあんたはこうしてズカズカ踏み込んできて……」

 ボソボソと何かを呟いている。


「え、なんですの? 声が小さくて聞き取れな…」

「えい!」

「あいた!」

 ユイシスはグローリアにチョップをかまし、抱擁から逃れた。

 地面に尻餅をつく。

「勝負よ、グローリア・ブリガンダイン! あたしはミストルテイン家のユイシス・ミストルテイン! あんたには負けないって事を証明してあげるんだから!」

 ユイシスが勝負を仕掛けてきた。

 いや、ここ往来だぞ!?

 人もたくさん行き交ってるし。


「グローリア! ユイシスは冒険者になりたてだけど、とんでもない特大魔法を使うぞ! だから街中で戦うのはやめるんだ!」

 ユイシスは聞く耳を持たないだろう、俺はグローリアを止める手段に出た。

 しかしそれは逆効果になってしまった。


「まあ! それは戦うのが楽しみですわ!」

 グローリアは大剣を構えた。

「戦闘民族の血を騒がせちゃった!?」

「逆効果でしたね」

 クオンが無表情でそう言う。

 いやキミが主を止めてくれない!?


「ジル! 例のブツを出して頂戴!」

「あいあい」

 ジルさんがアタッシュケースを開け、何やらおどろおどろしい形状の杖をユイシスに渡した。


「ホアンとかいう道具屋から買った掘り出し物! 2万マニーもしたんだから! この杖の特大魔法を浴びせてあげる!」


「ホアンさん!? 掘り出し物!?」

「アサヒ氏、どうしました?」

 この場でそのワードに震撼しているのは俺だけだ。

 みんなは知らないんだ……ホアンさんが俺に、遊戯帝ウィジャボード付きの呪いの瓶や魔剣ブラッディーを売ったたことを。

 あの人が薦める掘り出し物、高確率で魔道具なんだよ!


「行くわよ、グローリア! 出でよ、『ゲート・オブ・ダークネス』!!」

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