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異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~  作者: このえ
健康で文化的な異世界の生活
126/180

ナントカと煙は高いところが好き

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。1~7巻発売中です。

現在アニメ化企画進行中!

 マヤ姉にリベンジを誓うギガノトの情報を、キルマリアから告げられる。


「土砂崩れ!? それじゃあ街に被害が!」

「私にだけ向かってくればいいものの、卑劣なマネを…!」


 街に住む仲間たちの姿を思い浮かべる。

 ターニャ、ロイ、ソフィ、グローリア、クオン、ジークさん、他のクランの知り合いたち……

 みんなの日常を壊させるわけにはいかない。


「わらわも協力しよう」

「えっ、いいのか?」

「当然じゃ」

 キルマリアがこちらに付いてくれるならとても頼りになる存在ではあるが、しかし場合によっては魔王軍大幹部の同士討ちになりかねない……いいのだろうか。


「わらわも今は王都で悠々自適に暮らしてる身じゃ! 街を破壊されたら困る!」

「俺たちの家を別荘か何かと思ってる!?」

 どおりでずっと入り浸っているわけだ。

 いや、別に良いんだけどね。

 でも家賃と食費くらい払ってくんない?


「どうする? 避難勧告をするか?」

「今から王都のみんなを避難させても間に合わないと思うし、魔王六将が近くにいるとあってはパニックになりかねないよ」

「じゃなぁ」

 街に溶け込んで暮らしている魔王六将が頷いている。

 同じ魔王軍大幹部でも、この危険度の違いよ。

 強さ自体で言えば、ギガノトよりキルマリアの方がヤバいまであると思うんだけど。


「だいたい、俺たちが避難してって叫んでも、誰も従ってくれないんじゃないかな」

「人間、身近に危機が迫るまでは安穏としているもんじゃしのう」

「じゃあ私が魔法で門のひとつでも消し飛ばせば危機感を煽れるんじゃないか」

「怖い発想やめな!?」

 この姉さん、ギガノトより怖いんじゃ。


「こっちからギガノトを迎撃しよう。ヤツはどこかの山の上にいるんだろ?」

「しかし山を崩すか……一体どこの山だ?」

 マヤ姉が首を傾げる。

「そうだなぁ……」

 王都は周囲を山で囲まれている。

 ひとつひとつ探していたらとても間に合わない。

 ある程度予測を立てて決め打ちする必要がある。


「ギガノトって二人の話を知る限り、傲慢で不遜、残虐、虚栄心が強いってイメージだけど合ってる?」

「まあそうじゃな。ある意味、一番魔族らしいヤツじゃ」

「あと全体的にフサフサしてた。髭とか服とか」

 マヤ姉の提供するどうでもいい情報はさておいて。


「そんなヤツなら、”一番高い山を崩してやろう”って思うんじゃないかな」


 俺はそう予測した。


 二人も合点がいったようだ。

「カカッ! なるほどのう!」

「ナントカと煙は高いところが好きとも言うしな」

「王都近辺で一番高い山は南西にあるテンペスト山だ! 今すぐ向かおう!」

 俺たち三人は走り出した。





 ギガノトは崖の縁に立ち、眼下に王都を見下ろしながらほくそ笑んでいる。

「くっくっく…人間共の泣き叫ぶ姿が楽しみだぜぇ…!」


 渾身の一撃を放たんと、オーラを溜め始める。

「恨むなら俺様に楯突いた、赤髪女にしてくれよ? フン!!」

 瓦割りの要領で、自分の真下に拳を叩きつける。


「『牙王爆砕掌』!!」


 山に亀裂が入り、土砂崩れが麓へ向けて流れ始める。

 単身で山をひとつ破壊するほどの膂力……これこそがギガノトが魔王六将たる所以であった。


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