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異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~  作者: このえ
健康で文化的な異世界の生活
125/180

悪い知らせが二つある

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。1~7巻発売中です。

現在アニメ化企画進行中!

 男は怒り猛っていた。

 かつて自らに敗北の二文字を刻んだ、赤い髪の女に対して。


 男は昂揚していた。

 その怒りを発散する機会が訪れたからだ。


「見つけたぜぇ……あれが人間たちの根城かぁ……」

 崖の上から人間たちの都を見下ろしながら、蓄えた髭を撫でる。

「そしてこの俺様を……百獣のギガノト様を投げ飛ばしやがった赤髪女の住処かぁ!」

 顔に青筋を立てながら、咆哮を上げる。


 魔王六将、”百獣”のギガノト再登場の時である。





「せい!」


 俺はイノシシにチャージ攻撃を浴びせ、昏倒させる。

 遠くから投石で相手を釣り出し、突進までの間にチャージで力を溜め、懐に入ってきたら渾身の一撃。

 シンプルながら実に効率の良い攻撃法である。


「ん? なんかイヤな予感が……」

 振り返ると、そこには巨大なバッファローがいた。

 ダンプカーくらいの大きさの。

「どわぁ!?」

 必死に逃げる俺、追うバッファロー。

 牛追い祭り開催である。


「と、『投石』レベル2!」

 逃げながらもせめてもの抵抗と、石を拾って投げつける。

 しかし大きなツノに弾き飛ばされてしまう。

「ダメだぁ! こんなデカいヤツ、石ころ程度の火力じゃあ止まらねー!」


 そのときだった。

 俺のピンチと見るやいなやどこからともなく飛んでくるスーパーヒーローが空から馳せ参じた。

 マヤ姉だ。


「とう!」

 ライダーキックのような蹴りで、バッファローのツノを片方へし折る。

 怯んだ獲物に対し、すかさず特大魔法をぶっ放す。


「吹き飛ぶがいい! 『姉サイクロン』!」


 竜巻がバッファローを包み、そのまま遠く彼方へと吹き飛ばしてしまった。

 ダンプカーほどの巨躯をも軽々吹き飛ばす竜巻……凄まじい。

 近くにいた俺も突風に巻き込まれないよう、必死に木にしがみついていた次第。


「ふう、大事ないか朝陽」

「あ、ああ、大丈夫。ありがと、マヤ姉」

「街道を騒がせているモンスターを討伐……クエストはこれで完遂かな」

 モンスターどころか街道沿いの木々や大岩も根こそぎサイクロンで吹き飛び、とても見晴らしが良くなってしまった。もはや整地である。


「さすがマヤ姉、圧倒的な火力……」

 しかし、と俺は思う。

「攻撃全振りな分、回復や守りの魔法が使えないとこが唯一の弱点だね、マヤ姉は」

 これだけなんでも出来るマヤ姉なのに、不思議と回復や補助魔法を扱ったところを見たことがない。

 例えばキルマリアはバリアや、完全回復魔法トータルヒーリングなどを使えるオールマイティーさがあるのだが、マヤ姉は完全に攻撃魔法特化である。


「私は守りも万全だぞ」

「え?」

「よく言うだろう? ”攻撃は最大の防御”と」

「うーん、納得せざるを得ない」

 マヤ姉の場合、マジでそれだからなぁ。

 攻撃すれば相手に反撃のターンは訪れないわけで、攻撃は最大の防御を体現している。


「む?」

「どうしたの、マヤ姉」

「誰か来る」

 空を見ながらそう呟くマヤ姉。

 俺には何も見えないけど。


「マヤ! アサヒ! ここにおったか、捜したぞ!」

 数分後、空から現れたのはキルマリアであった。

 マヤ姉の察知能力、えぐい。


 しかしそれより、珍しくキルマリアが慌てている様子なのが気になる。

「どうしたんだ、キルマリア?」

「私たちを捜していたとは、一体何があった?」


 キルマリアは指を2本立てて言った。


「悪い知らせが二つある。ギガノトの傷が癒えた。そして今まさに、王都に向かってきている」


「魔王六将のギガノトが近くまで来てる!? それ、ホント!?」

「とある魔族からの密告で知った。間違いない」

 魔王六将が王都に侵攻に来ているなど、一大事も一大事である。

 まあ常日頃、王都に暮らしている魔王六将もいるんですけど。今目の前に。


「ギガノト……誰だったか?」

 マヤ姉の一言に、ガクッとずっこけるキルマリア。

「おぬしがジャイアントスイングで投げ飛ばした獣人じゃ! ほれ、全体的にフサフサしとる!」

「ああ、あいつか……また返り討ちにしてやるだけだ」

 攻撃は最大の防御姉さんが、頼もしい一言を放つ。

 魔王六将と言えどソロでどうにかしてしまえるのは、世界広しといえどマヤ姉くらいのものだろう。頼もしい。


 しかし次にキルマリアが発した言葉で、状況は大きく変わった。

「じゃが問題はギガノトのヤツ……王都付近の山を破壊し、土砂崩れを起こすつもりらしいのじゃ」

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