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異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~  作者: このえ
健康で文化的な異世界の生活
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おかしな魔力を放ってたんよ

「キューブ探しのクエスト? これと同じのが6個あるん?」

「そうだよ、ウー。この宝の地図使って探してんだ」


 我が家に遊びに来ていたウーが、古ぼけたキューブを触りながらソファーでゴロゴロ寝転がっている。


 かつては人形化されたり、タクティクスバトルサーガなる遊戯で戦ったりもしたウーだが、今ではすっかり俺の遊び友達となっている。

 俺の着想を具現化できるから、ウーといれば遊びに事欠かないのだ。

 試しにPS5やSwitchも作れないかやってみせたけど、それはさすがに無理だった。

 異世界生活堪能してはいるけど、ゲームやYouTubeも恋しいのは現代っ子のサガである。


 マヤ姉が説明の補足をする。

「ミステリーが好きな貴族がいてな。その家の宝物庫から出てきたんだが、代わりに集めて欲しいと」

「なるほどのう。冒険者を雇って謎解きか、金持ちの酔狂じゃのう」

 キルマリアも当たり前のようにいる。


 賑やかでいいことではあるが、4人中2人が魔族なのはどうなんだろう。

 王都、セキュリティ意外とガバガバなのでは。


「実はもう5個集めてあるんだ。今日はラスイチを獲りに行く予定」

「面白そうやなぁ! 僕も付き合っていい?」

「おう、いいぜ」

 ウーがはしゃいでいる。面白そうなことに首を突っ込みたがる、ようは無邪気な子どもなのだ、ウーは。


「私は晩ご飯の支度がある。キルマリア、保護者として付き合ってやってくれ」

「えー、めんどいのう」

「少しは働け、無駄飯ぐらい」

 辛辣で草。



 俺、キルマリア、ウーの3人で冒険に出る。

 野を越え山を越え、崖を登り、谷を飛び越え(どんどんキツくなってない?)、目的地である滝壺へと到着する。


「滝壺に到着ぅ。遠足みたいで楽しいわぁ」

「アサヒ、大丈夫かえ?」

「はあ、はあ、な、なんとか……み、水飲ませて……」

 疲労困憊の俺と違い、二人はケロッとしている。

 空飛んだり重力無視移動できるの、ズルくない?

 さすが魔族。


 そういえばキルマリアは魔王六将だから強いのは当然として、ウーもウーで只者じゃない魔族の風格を漂わせているんだけど、一体何者なんだろう。まだまだ謎多き子どもだ。

 性別も……たぶん男なんだよな?

 いや、もしや、まさかの女の子?


「地図を見るに、この川底にキューブがあるのかえ」

「こういうのは大体滝の裏に洞窟があるもんだけど……どうだろ」

「確認してみるわぁ」

「確認?」

 ウーが両の掌を滝に向ける。

 正確には、丈が有り余っている萌え袖だから掌は見えないが。


 すると、滝の一部が円形にくり抜かれる。

 その円形が自在に移動する。

 まるで巨大な虫眼鏡のようだ。とんでもない魔術。

「あ! アサヒくんの推察通りあったわ、洞窟!」

 滝の中腹あたり確かに洞窟があった。

「よし、そこへ行こう。えーと……キルマリア、運んでくれる?」

「カカッ、了解じゃ」

 空を飛べるキルマリアに運んでもらう。

 うーん、この二人を同行させて結果的に大正解だった模様。


 洞窟に入ると、そこには古ぼけた宝箱があった。

 開けるとビンゴ、そこにはこれまで集めたのと同じキューブが置かれてあった。

「よし! 6個揃ったし、これで依頼達成だ!」


 俺はおもむろにキューブを6個地面に並べた。

 いずれも土を固めて作ったような粗雑なキューブだ。

 こんなものに価値があるようには思えないが、貴族の道楽で高い報酬が貰えるなら万々歳である。


「さて……何が起こるかのう」

「せやね」

 キルマリアとウーが愉快そうな笑みを浮かべている。

 何の話だろう、俺は首を傾げた。


 ウーが口を開く。

「そのキューブ、おかしな魔力を放ってたんよ。ずっと」

「は?」


 すると、地面に置いていた小汚いキューブ6個がカタカタと一斉に震え始めた。

「なになに!? 俺、またトラブルに巻き込まれちゃった感じ!?」

「カカッ! 鬼が出るか蛇が出るか?」

「楽しみやねぇ」

「楽しまないで!?」


 今度はキューブの表面が、まるでゆで卵を剥くようにパリンパリンと次々割れ始める。

 粗雑で古ぼけた外側は、ただの外殻だったようだ。

 中からは半透明のキレイなキューブが現れる。

 いずれも色が分かれている。


「6色のキューブになった!? 赤、青、黄…」

「まだやで、アサヒくん!」

 変化はさらに続く。

 6個のキューブがひとつの場所に向かって移動し始めたのだ。

「キューブが重なってひとつに…!?」

 カッとまばゆい光が放たれる。


 6個のキューブがひとつになる。

 手の平サイズの立方体で、各面が3×3の9マスに分割されている。

 先ほどの6色が各マスにまばらに……いや、いちいち説明する必要もない。

 これは俺がよく知っている物体だった。


「な、なんじゃ? 色が混じり合ったキューブになったぞ」

「なんやろ、これ。正六面体のキューブ? あれ、なんか列ごとに回せるみたいやなぁ」

 しかし魔族二人は初見だったようで、首を傾げている。


「あ、ふぅん……二人とも知らないんだ。ふぅん……」

「なんじゃ、アサヒ。ニヤニヤしおって」

 俺はこぼれる笑みを抑えきれない。

 現実世界では皆が知っているものだけど、異世界ではどうやら未知のパズルのようだ。


「貸してみな。コイツはな……」

 ウーからパズルを受け取ると、俺は数分かけてではあるが、そのパズルを一面だけ解いてみせた。

 赤色がキレイに揃った面を見せ、二人にドヤ顔をする。


「こんな風に、各面を同一色に揃えていくパズルゲームなんだ!」


 ハッキリ言ってしまえば、ルービックキューブである。

 なんか商標とかあるかもしれないから、以降は立方体パズルと呼ぼう。

 

「ほう! よく分かったのう、アサヒ!」

「オモロそう! ボクにもやらせてえな!」


 当たり前のことやって賞賛されるの気持ちいい。

 これもまた異世界モノの醍醐味……ん? あつ…あち、あちぃ!?

 赤色に揃えたキューブがどんどん熱くなってる!?


 すると次の瞬間、キューブがボワッと発火した。

 当然、キューブを持っている俺の右手も燃えた。


「あっちぃー! あっつ、あっつ!!」

 俺はたまらずキューブを手放した。

「アサヒ!? 大丈夫か!?」


 俺は手をブンブンと振り回し、消火する。

 すぐにキューブを手放した分、そこまで酷い火傷にはならなかった。


「待ってろ、今回復してやる。『トータルヒーリング』!」

 キルマリアが完全回復魔法トータルヒーリングを俺にかけてくれた。

「あ、ありがと、キルマリア」

「おぬしに何かあったら、マヤに顔向けできんからのう。カカ、気にするでない」

 

 キューブはと言うと、俺が地面に落とした際に列がズレ、発火も同時に収まったようだ。

「炎、止んどるね。何やったんやろ」

「まだ心臓バクバクしてるよ……も、もう一回解いてみるか……」


 俺は再び、恐る恐る立方体パズルを手に取った。

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