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異世界ワンターンキル姉さん ~姉同伴の異世界生活はじめました~  作者: このえ
健康で文化的な異世界の生活
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エリクサー姉さん

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。1~7巻発売中です。

そしてなんと、アニメ化企画が進行中です!

 俺の名前は軍場朝陽いくさばあさひ

 異世界に標準ステータスで召喚され、チート抜きで一から冒険者をしている元・高校生だ。


 冒険者とは何か?

 それは主に冒険者ギルドからクエストを請け負い、それを完遂し、お金を稼ぐ仕事だ。


 クエストにも多くの種類がある。

 モンスター討伐、アイテム採取、占拠された村の解放、遺跡調査、人捜し、失せ物探し……

 今俺たちが請け負っている”行商人の護衛任務”もそのひとつだ。


 俺とマヤ姉と商品類を荷台に載せ、行商人の馬車は街道を行く。

「この街道は危険が多いのか?」

「いや、定期的に王宮騎士団が巡回してるし、人の往来も多いからね。商人さんが心配するほど危険はないと思うんだけど」

「王宮騎士団というと、前に現れたあの……あまり頼りになるようには見えなかったが」


 ソフィのお母さんであるノエルさんに、宙に舞い上げられて慌てふためいていた騎士団の姿を思い浮かべる。

 いや、あれは誰だってパニクると思うよ。仕方ない。


「荷物は食糧が多いみたいだね」

「ふむ……尚更モンスターに狙われやすいか。だから万全を期したという訳か」

 

 腐っても俺はゴーレム級だ。

 依頼料はお高めに設定されてしまっているのだが、そんな俺たちに頼むくらいだ。

 どうしても守りたいものなのだろう。

 というか、誰が腐っとんねん!


「うわぁ! モンスターの大群だぁ!!」


 御者が叫ぶ。

 急いで荷台から降りると、そこには確かにモンスターがひしめいていた。

 比較的安全な街道なのに、こんなにモンスターが現れるなんて……

 あれ、もしかしてこれ、魔物を何故か呼び寄せやすい俺のせい?


「行くぞ、朝陽!」

「あ、ああ!」


 俺とマヤ姉による、馬車を守るタワーディフェンスバトルの始まりだ。

 空を飛ぶ切り裂きバードやアーリマンの処理はマヤ姉に任せよう。

 俺はスライムやゴブリンを相手にする。

 

 だいぶ修羅場をくぐってきた身だ。

 今さら雑魚には遅れを取らない。

「モンスターは俺たちが引きつけておきます! 商人さんは先に進んで!」

「お、おう! 気を付けてなぁ、護衛さんたち!」


 ズシンズシンと大きな足音が聞こえる。

 物凄くイヤな予感。

 振り返ると、身の丈5メートルほどの大きな巨人がこちらに迫ってきていた。

「でっか!? 巨人!?」

「オ、オレ、ギガース様! 略奪ノ邪魔スル、コロス!!」


 いや最初の城近くの街道を闊歩してていい類の敵じゃないから、あなた!

 エルデ○リングのツリー○ードか!?


 ギガースがその大きな腕で俺に攻撃を仕掛けてくる。

「ゆ、勇気の前ローリング!」

 俺はあえて前進しながら転がり、ギガースの股下を抜けた。

 危ない、フロム○ーの経験が活きた。


「コノチビ、チョコマカト……ウッ!?」


 俺に追撃を加えようと振り返ったギガースが見たものは、宙を舞い、自分に掌を向けているマヤ姉の姿だった。

 そして同時に、それがギガースの見た最期の光景となった。


「『姉キャノン』!!」


 マヤ姉がレーザー砲のような魔法攻撃を射出する。

 それはギガースの半身を跡形もなく消し去り、さらにはその後方にあった山をも筒状にくり抜いて見せた。

 いやもうドラ○ンボールの世界観!


「山ないなった!? え、えげつない……なんつー破壊力だ!」

 もはやマヤ姉がモンスターをワンターンでキルするの、痛みを与えてない分、慈悲があるとすら思えてしまう。


 

 行商人を街まで無事に送り届けた俺たちは、依頼人と別れると、そのまま街へと繰り出した。

 クエスト完了、今日もいい働きをした。

 何か美味しいものでも食べよう。


「あとはギルドで報酬を受け取るだけ……いやぁ今回も無事に終わって良かったね、マヤ姉」

「今日も立派に働いて偉いぞ、朝陽」

「でも……不思議なんだよなぁ」

 俺は首を傾げる。

 そうだ、不思議なことがひとつあるんだ。


「どうした? 何が不思議なんだ」

「こうしてソロでもクランでもクエストをこなしてるのに、一向に暮らしが良くならないというか、いつもカツカツというか……なんでお金貯まらないんだろ」

 首をコキコキと慣らす。疲れが肩に来ているなぁ。


「疲れたのか? これをキメるといい」

「ありがと」

 マヤ姉が飲み物を渡してきたので受け取る。

 見慣れない容器だな、中身はポーションかな?

 というか、キメるってなに。


 封を開け、液体を飲む。

 あ、フルーティーで凄く美味しい。

「このポーション美味いなぁ。疲れが吹っ飛ぶ」

「ポーションじゃないぞ」

「じゃあなに?」


「エリクサーだ」


 俺はブーッと思わず吐き出してしまった。

 エリクサー!?

 今この姉、エリクサーって言いました!?


「エ、エリクサー!? 最高級の回復薬を白湯感覚で飲ませるんじゃあないよ!」

 俺は地面を指差しながら言った。

「見なよ! さっき吐き出しちゃったとこ、命の輝きに充ち満ちてるよ!」

 エリクサーを吐き出した地面から芽が出て、すでに花が咲いている。

 万物の霊薬、マジスゲえ。

「おお、凄い効果だな」


「こんな平時にエリクサーキメちゃうなんて、もったいないことしたな…」

「大丈夫だ」

「大丈夫?」

 イヤな予感がする。


 マヤ姉はどこからともなく、エリクサーを6本出した。

「エリクサーの備蓄はたくさんあるぞ」

「我が家の家計がカツカツな理由、判明しちゃった!!」


 エリクサーは言わずもがな、高級品だ

 一本なんと5000マニーもする。

 ポーションが120マニー、ハイポーションが300マニー、毒消しが80マニーとかだから、いかに高価な代物かは一目瞭然だろう。

 ちなみに俺たちが今さっき頑張った護衛任務、あれの報酬が1500マニーである。

  

 そんな高級品を6本…いや、今さっき俺が飲んじゃった分を含めると7本か。

 それだけ秘密裏に買っていたら、そりゃあ生活がカツカツなのも納得である。


「なんでそんなにエリクサー買い集めてんの!? 転売目的!? 転売ヤーはマズいですよ!」

「転売ヤーとはなんだ?」

 マヤ姉が弁明する。

「備えあれば憂い無し。万能の霊薬とあらば、買っておいて損は無いだろうと思ってな……道具屋で入荷するたびに買ってあるんだ」

 店員さんから裏で”エリクサー姉さん”とか呼ばれてそう……


「あのね、マヤ姉……ラストエリクサー症候群って言葉があってね……」

 俺はマヤ姉に、エリクサーとはどういったアイテムになりがちなのか、説明することにした。

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