表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/180

不思議な木の実

新年明けましておめでとうございます!

今年も『異世界ワンターンキル姉さん』をご愛読頂ければ幸いです!

 鬱蒼とした山の中を歩く俺たち。


 行けども行けども同じような風景だ、どうやら完全に迷ってしまったらしい。

 しかし今、俺の気を滅入らせているのは山のせいではない。

 俺の数メートル後方で姦しくしている二人のせいだ。


「グローリアが勢いよく渡ったからいけないんですよ! ご令嬢なのに慎ましさはないんです!?」


「度胸比べを煽ったのは貴女でしょうに! そもそもソフィが杖占いで吊り橋ルートを選択しなければ!」

 

 ソフィとグローリアが顔を突き合わせる勢いで口論している。

 お互いのツバかかってないか、それ。


 なんでこんな状況になっているか、順を追って説明しよう。

 俺たちスーパー朝陽軍団はクランクエストで、山に生息する巨大モンスターの討伐を請け負った。

 そう、元はちゃんと5人居たのだ。俺、マヤ姉、ソフィ、グローリア、クオンの5人だ。


 だが、その道中で吊り橋が落ち、パーティーが分断……

 朝陽、ソフィ、グローリア。

 真夜、クオン。

 この二手に分かれてしまったのだ。


 うーむ、なんだか見覚えのある分かれ方。

 以前、ミノタウロスがいたらしい(俺は熟睡していた)古城を探索したときも、このパーティーだったな。

 トラブルメーカー二人をまたも抱え込んでしまった俺は、戦々恐々である。

 不安しかねえ。


「二人とも! 今回は慎重に進もう! 頼むぞ!」

「はい、勇者さま!」

「ふふん! お茶の子さいさいですわ!」

 返事は良いんだ、この二人。



 険しい山の中を歩く。

 マヤ姉とクオンと合流したいのだが、なにぶん土地勘が無いため、今自分がどこを歩いているかも分からない。

 こんなときマヤ姉かクオンが居たら、アサシンク○ードの主人公よろしく、木のてっぺんまで駆け上がって周囲を偵察してくれるのだが。


「ふう、疲れました…」

 体力で劣るクオンがバテた様子。

「ずいぶん歩きましたものね。少し休憩としましょうか」

「ああ、そうだな」

 体力オバケのグローリアは見るからにピンピンなのだが、ソフィを慮ったのだろう、休憩を提案した。

 さっきまで口喧嘩していたのに、体力の無さを煽ることもなくソフィの身を案じるグローリア。こういうところは騎士道を貫いているんだよな。


「助かります。よっこいしょ…」

 ソフィは道の脇に生えてあった、イスくらいの大きさのキノコに腰掛けた。

 そのキノコから手足が生え、地中から勢いよく飛び出してくる。

「きゃあ!?」

「オバケキノコに腰掛けたの!? なんてナチュラルボーントラブルメーカー!」


「てい!」

 しかしオバケキノコはグローリアの大剣によって、真っ二つに切り裂かれた。

 さすがの強さだ、この3人の中ではステータスが頭ふたつは抜けている。

「あ、ありがとう! グローリア!」

「いいってことですわ、ソフィ。フッ、この程度の相手、造作もないですもの!」

 グローリアが大剣をグルグルと頭上で回転させ、勝利ポーズを取る。


 それがいけなかった。

 剣の切っ先が蜂の巣に命中したのである。


「ハチの大群だあああ! 逃げろぉぉぉ!」

「ひいやああああああ!」

「まま、待って下さいぃぃぃ!」

 俺たち3人は全力疾走でハチから逃走した。

 なにこのズッコケ三人組の様相?



 野山を突っ切り、なんとかハチの大群から逃げ切った俺たち。

 もう息も絶え絶えである。

「も、もう……お、追ってこないか……!?」

「はあ、はあ、に、逃げ切りましたわ……!」

「げほっ、ごほっ……こ、ここ、どこなんでしょう?」

 この二人……やっぱりトラブルメーカー過ぎる。


 それにしても、ずいぶんと山奥に入ってしまった。

 これではマヤ姉やクオンと合流するどころか、完全に遭難状態である。

「オマケに……はあ、食糧も持ってきてないから腹減ったぁ……」

「わたくしもお腹ぺっこぺこですわぁ…携帯食はクオンに持たせてましたもの」

「どこかに果物とか生ってないですかね」

「もしくは山菜を……あいた!」

 上から何か小さな物が降ってきて、俺の頭にコツンと当たる。


 拾い上げると、それは木の実であった。

 アーモンドチョコくらいの大きさがある。

 見上げると、そこには荘厳な佇まいの大木があった。

「木の実だ。この木から落ちたのか」

「なにか神聖なオーラを感じる大木ですね」

「地面にも幾つか落ちてますわ。形状が様々…不思議な木の実ですわね」

 確かに、同じ木に生えているのに木の実の形がそれぞれ違うというのは不思議だ。


「木の実でも食べないよりマシだ。みんな、腹に入れよう」

「そうですわね」

「いただきます」

 三人がそれぞれ、違う形の木の実を頬張る。

 味は特にないけど、うん、腹に溜まる感じはする。

 それに何か、不思議なパワーのようなものが身体の底から……


 ピコーン。


「んんっ!?」


 三人が互いに顔を見合わせる。

 三人ともそれぞれ、脳内で同じ音が鳴ったようだ。

「い、今の音なんですの!?」

「グローリアも聞きました!? ピコーン!」

「二人にも聞こえたのか!? そう、俺の脳内にもピコーンって……な、なんの音だったんだ?」


 しかし我ら遭難中の身。

 じっくり腰を据えて思案している余裕などない。

 俺たちは小休憩を終えると、再び山を歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ