表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/180

タクティクス・バトルサーガ

電子コミックアプリ『サンデーうぇぶり』でコミカライズ連載中。

コミカライズ1~6巻発売中です。

「『トータルヒーリング!』」


 家路についた俺とマヤ姉。

 家でくつろいでいたキルマリアは事情を知ると、人形化していた俺に完全治癒魔法トータルヒーリングをかけてくれた。

 しかし効果はなかった。


「……ダメか。治らんのう」

 キルマリアはお手上げのポーズを見せる。

「ここまで強力な呪い、状態異常回復魔法ではどうにもならんな」

「キルマリアでも治せないのか…」

 

 それにしてもキルマリア、マヤ姉の肩に乗って帰ってきた人形の姿を見て、一目で俺だと分かった。

 マヤ姉に次いで二人目だ、気付いてくれたの。


 俺はペンを握り、筆談で「よく俺だって分かったな」と書いた。

「ん? キルマリアもよく俺だと分かったな…じゃと? カッカッカ、魂の波動で分かるわい」

 キルマリアは二カッと笑った。


 さすが規格外のお姉さんズ。頼りになる。

 しかしそんな二人でもこの人形化に関してお手上げか。どうなるの、俺。


「となると……やはり術者をどうにかするしかないか」

 マヤ姉がキルマリアに問う。

「じゃな。しかし一体どこのどいつがアサヒをこんな姿に……」

「子供だったよ。小学生か中学生くらいの、ちっちゃな。あと喋り方が変で……」


「あはっ」


 筆談していたペンが止まる。

 キルマリアとマヤ姉も声がした方が向く。


 一体いつからそこにいたのだろう。

 リビングの片隅に侵入者がいた。

 それは俺をサタンゲームで負かし、人形化させた子供、”ウー”であった。


「いつの間に侵入を…」

「ああ! お前はぁー!!」

「ぬ!? こやつは……」

 三者三様、それぞれの反応を見せる。


 マヤ姉でも気配に気付かなかったのか。

 その事実だけで只者では無いと察することが出来る。

 キルマリアも、もしや見覚えがあるのか、目を見開いて驚いている。

 そんなこちらの困惑をよそに、侵入者はただただ愉快そうに笑みを浮かべていた。


「さあ……ゲーム第2ラウンドや」


 ウーは俺たち三人が腰掛けているテーブルへと近付いてくる。

「なぁにがゲームだ! それより俺の姿を元に戻せー!」

 声帯無き声で叫ぶ。

「ん? ええよ」

 ウーは俺の意図を察したのか、こちらに魔法をかけ、人形化を解除した。


 え、解除?

 そう、俺は無事、元の人間サイズへと戻ったのだった。

 そのことに一番驚いているのが、当の俺である。


「な、なんで戻すんだ!?」

「あは。おかしな人やなぁ。戻せ言うたんは自分でしょうに」

 人を翻弄するのが楽しいのか、ウーは飄々としている。


「サタンゲームはだまし討ちみたいな形やったからねぇ」

「だまし討ち…?」

「ほら、ルール知らないフリして対局したやろ? アサヒくんも舐めてかかって負けてもうたし」

「ぐっ…」

 確かに舐めプしたのは事実である。舐めプというか、指南しながらの指導対局というか。


「なんで、これでノーカンってことで。でも人形の姿で街歩くのも新鮮やったでしょ?」

 へらへら笑いながらそう言う。

「巫山戯た子供だな」

 マヤ姉が眉間にしわを寄せる。

 この捉え所の無さが、ウーの怖いところでもある。

 底が見えない。


「ったく、お前は何がしたいんだよ、ウー」

「ウーじゃと? ふむ…」

 キルマリアが思案している。

 ウーという名前に何かあるのだろうか。


「遺恨もなくなったわけで……ほな、次のゲームを楽しみましょ」


 いけしゃあしゃあとはこの事だろう。

「誰がやるかってんだ! また人形にされたらたまったもんじゃない!」

 俺は断固拒否した。

 罰ゲームありきのゲームとか、おっかなくてやってられない。

 別にこちらはカ○ジの登場人物のように負債を抱えているわけじゃない、勝負してやる道理がない。


「ふぅん? そういうこと言わはる?」

 ウーが袖からジャラジャラと何かを取り出す。


「じゃあボクは”こっちの人形”で一人寂しく遊んどこっと」


 それは人間の形を模した駒であった。

 その駒の姿に、俺は既視感を覚えてしまった。

 さっきまで俺と遊んでいた子供たちだ。


「ロイ!? 街の子供たち!!」

「衛兵や冒険者たちの姿もあるな」

「人質かえ」

 この駒と化した人間たちを救いたければ、自分とゲームしろ……ウーは暗にそう言っているのだ。

 

「やってくれるな……逃げるわけにはいかなくなった!」

 俺はウーと対面する形でテーブルに座り直した。

「あはぁ! アサヒくんがやる気になってくれて良かったわぁ」

 ウーは喜色満面である。カワイイ表情だが、その無邪気さが恐ろしくもある。


「待て。ゲームなら、私が対戦相手になっても構わないだろう?」

 マヤ姉がそう言い出す。

 確かに俺より、マヤ姉の方がゲーム勝負でも利がありそうだ。

 しかしウーは首を横に振った。


「アカンよ、お姉さん。ボクはアサヒくんとやり合いたいの」

「なんでそんなに俺にこだわるんだ?」

「ただの人間なのに、数々の魔王軍幹部を倒した……そんなアサヒくんに興味津々なんよ」

「そんなことまで知ってる…!? そうか、そういえば遊戯帝の名も……ホントに何者なんだ、お前は」

 というか、数々の魔王軍幹部を影ながら全滅させてたのはそれこそマヤ姉なので、やはり対局相手を変える必要があるような…


「さあ、勝負や! 名付けて『タクティクス・バトルサーガ!』」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ