タイムマシンの深層と真相
2031年4月1日世界中を驚かせた「タイムマシン事件」から20年がたった。
丸伊芳子は、何気なく聞いていた朝のラジオで、タイムマシンについての解説を聞いていた。
耳にタコができるほど聞いたタイムマシンの原理や解説、そして事件の詳細。
何か特別な感情があるわけでもない。そう、ただ何気なく聞いているだけ。たまたま、今日、ラジオを付けただけなのだ。
「おはよう。起きてたのか」
「ああ、うん。おはよう。今日もまた、早起きだね」
芳子が嫌味たらしく言った。
「来月発表の論文に、修正箇所が見つかってね。徹夜していたんだよ」
「ふーん。また、あれのこと?」
眉間にしわを寄せ、ふてくされたような顔で言う。
「仕方ないんだよ。今度はきっとうまくいくから。じゃあ、行ってくるよ」
「・・・・・」
はぁ、と大きくため息をつく芳子。
芳子にとって祐也は大切な人で、信頼をおいている。研究熱心すぎる点を、いい意味でも悪い意味でも。
祐也との関りを持つということは、タイムマシンとの関係は一生切れないことになってしまう。
芳子は一切の感情を捨て、タイムマシンについて俯瞰してみる。
2021年4月1日、丸伊達彦教授は世界初のタイムマシンの実証実験を行った。丸伊達彦教授自らが実験台になり、タイムリープを行う予定だったが、
妻であり助手の丸伊美幸は実験台になることの危険性を知っており、旦那には決して行ってほしくないとの思いから夫を騙し自らが実験台となった。夫を愛しているが故に、夫を苦しめる原因となった母を、芳子は良く想っていなかった。