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前髪をなくした勇者  作者: 柳翠
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天気のいい日。


今日は日向ぼっこしながら木の根元で一日昼寝をする予定であった。


魔王討伐はまだ少し後。


いきなりだが俺は16歳秋に日本から異世界転移して18歳までここ『マラタカ』でそれとなく過してきた。


俺は強くなり『前髪の勇者』なんて呼ばれてた。


理由は前髪がとても長いからだ、魔力を宿す前髪は今や胸元位まであった。



後ろでかきあげた前髪を束ねているがそれでもなかなかの長さだった。


しがない冒険者………早坂隆(はやさかりゅう)。この世界では『リュウ』で通している。


そんな俺は1人で魔王討伐目前まで迫ったのだが、魔王軍が残り魔王だけの状態で帰ってきたのだ。


逃げた訳では無い。


少しばかり魔王を弄ぶ勇者の余裕を国民に見せてやりたかったのさ。


そろそろ空が夕焼け色で染ってきた頃木漏れ日の中まだ眠気が残っていたが無理やり起きてフラフラの足取りで家に帰ることにした。


家……と言っても勇者の家だ、城とも呼べる大きさ。


夕焼けの色で染った空を背景に1人黄昏て居る玄関前。俺はフラフラと重たいドアを開けた。


「おかえりなさい」


元気のいい声が玄関に響いた。


「あぁ、ただいま」


俺は眠さで細めていた目を指で何度かゴシゴシしてから答えた。


こいつはうちで雇っているメイド。名前は『ルル』。


俺が異世界に来た時、酒場のバイトらしき事をやっていて異世界についての聞き込みをしているとき1番最初に話しをした相手。


俺が勇者になったと聞いてメイド志望しに家まで来たのだ。


目的は金なのか地位なのか分からないが根は良い奴である。


ルルは不思議そうに首をかしげている。


心配そうに変な事を尋ねてきた。


「あの、リュウくんは魔王討伐を諦めたのでしょうか?」


「何言ってんだ?諦めたわけね~よ」


いきなり何を言い出すかと思いきや。


俺は中指を立てて完全悪役の顔でこう言った。


「あのなぁ、俺は魔王の首を獲るためにここに来た。覚えときな」(きまった。俺かっこいい~)


そう言って俺は風呂場へ向かった。



風呂場へ向かう長い廊下で2人のメイドに「お帰りなさいませ」

と言われた。


俺の掃除スキルが皆無なため家にはメイドが3人いる。



仲良しメイド『ルル』17歳、元気がよく赤茶色の髪の毛を後ろでお団子にしている。

街で話しかけられたお茶友『ナーユ』22歳、美人、長い黒髪と整った容姿。

アルバイト募集できてくれた『ナタージュ』(さん)53歳、気のいいオバチャン。白髪も少々。


みんないい子……ひとりいい人のメイドたち。


しかし何故か2人にもルルと同じく「魔王討伐は諦めたのですか?」ときかれた。



何故そんなことを聞くのか?寝ぼけている俺を見てそう言うなら仕方がない。明日から挽回しよう。


今日はとてつもなく眠い。明日から頑張ります。


風呂場について、服を脱ぎ捨て前髪を後ろで前髪をまとめていた髪留めを取り………取り?あれっ?!


「髪留めがない」


後ろまであるはずの前髪が無い。


俺はすぐに鏡の方へ行き額を突き出して裸のまま確認した。


前髪が………ない。


そのままの意味であった。前髪は生え際から1センチも無いくらい切られていた。バッサリ。パッツン。


「?!………うそ……………だろ」


俺はそこへ膝から崩れ落ち気絶した。


その後2人のメイド、ルルとナーユが危険を察知して来てくれたが裸んぼの俺をどうすることも出来なかったらしく、その場で目を隠してじたばたしていたらしい。


ナタージュさんだけが俺をそのまま寝室へ運んでくれたと言う。


ありがとう。ナタージュさん。


そのまま3日起きることは無かった。



俺は前髪を無くした。


つまり俺は………魔力を失ってしまった。



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