居場所
「すみません!すみません!いらっしゃいますよね!私、冴子の母です。開けて下さい。」
「なんだってんだ。」
あの男を押し退けて冴ママが部屋に入って来る。
「……」私を見ても何も言わない。もうダメだ。汚れて汚い子。可哀想な子。私の事を対等に見てくれた人だったのに。失ってしまうの?バシッ、バシッ。いつも優しい冴ママが震えながらあの男に手を挙げている。その優しい手を、そんな事に使わないで。私は、洋服を着せられ車にゆられていた。冴子の暖かい家に着いた。誰も口を聞かない……
「明日、ゆっくりお話しましょう。」冴ママは、まだ震えている。私は、大丈夫だよ怒らないで…。冴子は、ずっと泣いている。何故泣くの?私は、泣いて無いのに…。温かいお風呂に入って、暖かい布団に入った。
ん〜ん誰?泣いてるの?
夢?冴ママ?私の頭をなぜながら、声を殺して泣いている。泣かないで、泣かないで。ごめんなさい。悲しませてごめんなさい。冴子ママの優しい手だ。もう少し寝たフリをさせて下さい。私は、ゆっくりと眠りについた。「おはよう愛ちゃん。お話しいい?」
「はい。」
「今日お母様は、お家にいらっしゃる?」
「たぶん。」
「じゃ一緒に昨日の事お話ししに行きましょう。このまま黙っている訳にいかない事だから。大切な娘にあんな酷い事されて…愛ちゃんと同じ位ショックでしょうけど…」
大丈夫だよ。そんな女じゃないよ。でも少しは、懲りたりするのかな?
少しは、私を見てくれるかな?
家に帰るのは、嫌だったけど、二度とあんな目にあいたく無いけど、私の居場所は、あそこしかない。
冴ママに連れられて家に帰った。
あの男は、居なかった。
母親は、今日も機嫌が悪そうだった。冴ママをジロジロいやらしく見てた。
昨日の出来事、その前から触られ続けてた事。怖かった事。全部話した。冴ママは、ショックを受けて固まってた。
母親の手が飛んできた。
「私の男に、旦那に手を出しやがって!このクソガキが!お前が誘ったんだろ!汚いガキめ!お前なんか産むんじゃなかった!死んでしまえ!許さないからな!出てけ!二度と現れるな!」殴られまくった。冴ママも止めようとして突き飛ばされた…
「あなたは、母親じゃない!そんな資格はない!ただの狂った女よ!愛ちゃんは、家で預かります。愛ちゃん帰りましょう!」
「母親?好きでなったんじゃないね!私は、女!女だよ!あんたには、一生分からないだろうけどね!アハッハッ〜」
バタン
玄関のドアを閉めても笑い声が聞こえる。頭の中でもなり響いている。私は、二度死んだ。殺された。お父さんだと名乗る男に、お母さんのフリをした女に……




