誕生日
太陽が私を焼き付くしてくれたらいいのに。ただ暑いだけの夏なんてキライだ。あの男が居る家に帰りたくない。冴子の家での誕生日バーティーの後泊めてもらおう。今日は、グッスリ眠れそうだ。
「家のパパとママ愛の事大好きみたい。凄く楽しみにしてるんだよ。私の誕生日でもあるのになぁ!」ってぐちってたっけ。そろそろ行くかな。
今日は、冴ママに買って貰った冴子とお揃いの靴を履いてきていない。時間も余裕があるし折角だから履き替えて来よう、まだ誰も帰って来てないはずだだし、
鍵が開いてる…
帰ってるんだ。靴だけ取って行こう。
「愛?何処に行くんだ?男の所か?」出てこなくていいのに。かなり酔ってる。ヤバイ。靴を取って逃げようとしたら、あの男が腕を掴んで
「何処に行くんだ!」って怒鳴った。
「冴子の家で誕生日祝ってくれるって…」
「今日は、誕生日か。お父さんも愛にプレゼントをやるよ。来いよ!」いらないよ!触るなよ!はなせよ!髪を掴まれて部屋に引きずり込まれた…
「出ないなぁ〜携帯にも出ないなんて愛どうしたんだろ?約束の時間とっくに過ぎてるのに。」
「愛ちゃん急用が出来たんじゃないの?二人の為にママお料理頑張ったのに残念ね。」
「でも、連絡も無いなんて愛らしくないなぁ。プレゼントも渡したいし…愛の家に行って来る!」
「もう遅いし、ご家族でお祝いしにお出掛けしてらっしゃるんじゃないの?」
「もう!分かったわよ!ママが送って行きますよ。言い出したら聞かないんだから家のお嬢さまは!ママも愛ちゃんにおめでとう言いたいしね。」
「あぁ〜それが本心でしょ!」
携帯が鳴ってる。ウルサイ。そうか今日は、誕生日だ。誕生日の思い出なんて何もない。良い事も、悪い事も。どうでも良かった…
何かが起こる訳じゃない。いつもと変わらない日だ。
「愛、お前初めてだったのか。これから俺が、男の色んな事教えてやるからな。何処に出しても恥ずかしく無い女にしてやるよ。」
初めて死にたいと思った。私は、ただのガキだ。あんなに嫌いな母親に助けて欲しいと思った。
身体中から、あの男の臭いがする。あの女は、こんな事されて楽しんでるのか?分からない。どうでもいいや…涙も出てこないよ遠くからチャイムの音がする。ドンドンドン
「誰だウルサイな!イイ気分なのに。」ガチャ。
「すみません、私愛さんと、今日約束してたんですけど愛さん居ますか?」
「あっ愛なら気分悪いって寝てるよ。用が無いなら帰ってくれよ。」冴子…?嫌だ!こんな事知られたくない。帰って、帰ってよ!冴子、何も気ずかないで帰って!お願い。
「愛にプレゼントだけ渡して下さい。おやすみなさい。お大事に。」ほっとした。これで何も変わらない明日を迎えられる。