新しいお父さん
制服と新しいお父さんが来た。
「愛、彼の事知ってるわね。愛も高校にも入って大人になったし、お母さんね、彼と再婚したの。だから今日からあなたのお父さんよ。かっこいいお父さんでしょ?良かったわね。」
この人何言ってるの?良かったのは、あんただけだよ。彼の事知ってる?もちろん知ってるよ。あんたの男でしょ?変な生き物みたいにその男の腕にぶら下がって笑ってるあんたが一番嫌いだ。お父さん?どうでもイイよ好きにすれば?
「愛ちゃん高校入学おめでとう!今日からよろしくね。」あの華奢な若いだけの弱そうな男だ。その男が今日から家族になった。偽物の家族だ。でもこれからは、家から追い出されてフラつかなくても良くなるかな…
ただそれだけだ。
空ってこんなに綺麗なんだ。
公園のベンチに寝転がって久しぶりに見上げた空は、びっくりする位青かった。セミの鳴き声がどんどん大きくなって来た。もうすぐ17才の誕生日。まったく同じ日に産まれた冴子と一緒に祝う予定。同じ日に産まれたのに冴子は、私と全く別の人生を生きている。あったかい家、家族、友達。不公平だ。誰に何を言っても解決出来ない。
凄くイイ子だけど、本当の自分の事は、話せない。
相変わらず私は、一人ぼっちだった。
お母さんのフリをしているあの女は、一応看護婦らしい。笑っちゃう。娘の世話は、しないのに病人の世話をする。笑える。夜勤とかゆーのがあって家に帰らない日が多い。そんな日は、お父さんと名乗る男と二人になる。話す事なんて何も無い。会話も無く食事をする。聞こえるのは、バカバカしいテレビの音だけだ。
「愛は、女の子から女に変わってきたな。お父さんは、将来が楽しみだ。彼氏はいるのか?」気持ち悪い。その作り笑顔も私を女として見てる笑って無い目も、全部気持ち悪い。
今日もやたらと、酒を飲んでいる。怖い。
私が寝たのを見計らって酔ったあの男が、部屋に入って来る。酒臭い息を吐きながら近付いて来る。汚い手で私を触り続ける。固まってしまう。怖いよヤメテ、ヤメテ!かたく目を閉じて寝たフリをする。もうすぐしたら終わるから、もうすぐだから…触るだけだから、最後まではされないから大丈夫だよ。大丈夫…