上級人型魔族の僕と聖なる一族の恋人
魔界から謎の電波が届きました。
正確にはニホンからかな?
バレンタインデー前企画?
よろしくお願いいたします。
もうすぐ 、バレンタインか…。
チョコレートお取り寄せしておこうかな?
「ムーシャリ様、お出掛けでございますか?」
ロビーから恋人を迎えに行くために出ようとしていると、このマンションのマネージャーに声をかけられた。
「なにかよう?」
僕はちらりとマネージャーを見た。
本当は興味がない人間族とはあんまり接したくない。
「今度、展望ラウンジでバレンタインの企画がございましてよろしければ足をお運びいただきたいと思いまして。」
マネージャーがニコニコと紙を渡した。
「考えておく。」
僕は紙を引ったくるように受け取って歩き出した。
この近くに会社がある僕の彼女は迎えにいかないと逃げるから目も当てられない。
夕焼けが綺麗な歩道をサンダルで歩くなんていつも忙しい魔界では考えられないことだ。
今日は何を食べようか…。
「三千代、迎えに来た…。」
向こうからくる恋人が男と楽しそうに歩いてくる。
スーツを着たでもどこか軽そうな短い髪の男だ。
「先輩~行きましょうよ~、このバレンタインライブ、オレ一人じゃいきづらいんっすよ。」
男が馴れ馴れしく三千代の肩にさわった。
「水無月君、彼女を作ればいいじゃありませんの?」
僕の三千代がきれいな長い黒髪に琥珀の瞳の美人が軽く言った。
「だからオレの彼女になってほしっす。」
男がさらに馴れ馴れしく三千代の肩を抱こうとする。
三千代がさりげなく避けた。
「水無月君、ごめんなさいね、お迎えが参りましたので。」
三千代がそういって僕に小走りで近づいたので抱き締めた。
「原川先輩、誰っすか?」
水無月が僕を睨み付けた。
感情がおさえられない男らしい。
「えーと、私の知り合いですわ。」
三千代が必死で僕のうでの中から出ようとする。
「ひどいな、婚約者だろう。」
耳元でささやいて耳たぶをあまがみする。
あとでお仕置きしないとかな?
「後輩がいますのよ、やめてくださいませ。」
三千代が悶えた。
「先輩、今助けますっす。」
水無月がそういってなにかを出した。
瞬く間に大きな斧に変化させる。
後輩って『神樹の民』の後輩なのか!
「水無月君!往来でお止めなさい!」
三千代が僕のうでの中から言った。
「新人のオレでもそいつが高位魔族だってわかりますよ…本性は知りませんけどね。」
水無月が暗い微笑みを浮かべた。
「ハウエルは危険魔族ではありませんわ。」
三千代が私をかばうように両腕を広げた。
かばってくれるのは嬉しいけどなんか情けないから本気を出そうかな?
空間にてを伸ばして杖を呼び出す。
「スゲー、今度のテレビの撮影か?」
「今はやりのコスプレじゃないですか?」
「宇宙警士ユニーバーじゃないんだぁ。」
遊び帰りの小学生たち?たちが三人歩道でこちらをみてる。
「お前ら、みせもんじゃないっす。」
水無月が斧をかまえたまま言った。
「悪の魔神がお怒りだ!」
「逃げましょう~。」
「宇宙警士~助けてー。」
小学生たちがわらわら逃げていった。
「悪の魔神はどっちかっていうとこっちっす。」
水無月が半眼になった。
気をとられてる隙に三千代が僕の腕のなかで携帯端末でなんか話してたみたいだ。
「水無月君…本部に報告しておいたから後は処理しておいてくださいませ。」
三千代が妙に迫力ある声で携帯端末を切って言った。
「え?お、オレがっすか?」
水無月がたじろいだ。
「ええ、あなたのせいで一般人の子供にみられたのですもの、処理班と辻褄あわせしてきてくださいませ。」
三千代が迫力ある笑みを浮かべて言った。
「せ、先輩はどうなさるんっすか?」
水無月がふるえながらきいた。
「ちょっと婚約者と話してくるわ。」
三千代がそういって僕の腕の中から出ようとした。
「三千代。」
僕は三千代を抱き抱えようとした。
無言の攻防の末、僕は三千代を抱き上げた。
「見せつけやがるっす、滅してやりたいっす。」
水無月がぶつぶついってるのが聞こえたけどそのままあるきだした。
「三千代、話って何?」
部屋に戻って僕は三千代を膝に抱え込んだまま聞いた。
「あんまり婚約者って言いふらさないでくださいませ。」
三千代が上目遣いでにらんだ。
色っぽいけど、いってることは納得できない。
「何で、そんなこと言う口はこの口か?」
僕がキスしようとすると顔を押し返えされた。
「ちょっとまってくださいませ、今度の休みに本家に挨拶にいっていただきたいんですの。」
三千代が真剣な眼差しでいった。
「なんか文句言われたの?」
それなら本家なんか潰してやる。
「名門 翠家の若者は挨拶にも来ないのかとお祖父様がお冠ですの。」
三千代が不安そうな顔をした。
「僕が魔族と言うことに反対してるの?」
そういいながらいいにおいの三千代の髪に口付ける。
「…お祖父様は大丈夫ですわ、むしろ分家のおじさまたちがうるさいんですの、スパイがいるらしくサンダルばきのニートっぽい魔族など私の婿にふさわしくないって、魔界に仕事があると説明したのに…。」
三千代が眉をひそめた。
それ…なんかこだわるところおじさんたちも間違ってない?
………まあ、時代は変わったと言うことでいいか…ヤバい連中は少々いるけど、おおむね平和って言うことかな?
昔は対決の時代も多かったのにな…。
バレンタインデーも神樹の民との戦いで力を求めるあまり好きな相手との結婚を禁止し、力を高める関係の結婚を強要した魔王に立ち向かった魔族の話だしな…相討ちになったらしい。
その魔族がチョコレートの髪と目のコボルトロードだったからそれにともなってチョコレート色のものを解放記念日として贈るようになってなぜか人界に広がって今のチョコレート合戦に至ると…。
「うん、いいよ、ビシッと決めていくよ、そうだ、今度、展望ラウンジでバレンタイン企画があるんだけど三千代もドレスアップしていこうよ。」
僕はテーブルに放り出しておいた紙に気がついた。
「ドレスなんかありませんわ、着物じゃいけませんの?」
三千代が困った顔をしたのでかわいくて口付けた。
着物むしろ嬉しいよ。
僕は和もの好きなの知ってるじゃない。
よーし、ニートな魔族って言われないために
バレンタインデーも挨拶当日もビシッと決めるぞ!
「ハウエル、ちょ、ちょっと。」
三千代が慌ててる。
その前に三千代でパワーを補給しないとね。
僕は三千代をしっかり抱きしめてねっとりとキスをしてソファー押し倒した。
やっぱり三千代が気持ちいいな…。
「やめてくださいませ!」
三千代が押し返した。
な、なんであんなにか弱いふりしてつよいんだ。
し、神樹の民の力使ってる?
あ、神樹の小枝を媒介に力を解放したみたいだ。
「今日はもう帰りますわ、水無月君の後始末もしなくてはですし。」
三千代は僕の腕のなかから転がり降りて間合いをとった。
「三千代~。」
僕は情けない声を出した。
「では、また連絡いたしますわね。」
乱れた服を整えて三千代はあるきだした。
水無月…覚えてろ…いつか、いつか
滅してやる!
三千代…男の生殺しはやめてくれ~。
僕はつれない恋人が去った部屋でいつまでも起き上がれなかった。
絶対に結婚を決めて見せる、正装を魔界からとりよせだ!
あと、挨拶の本も取り寄せないとかな?
駄文を読んでいただきありがとうございます♪