プロローグ
作者の初オリジナル作品です。不定期更新にならないように頑張ります……頑張りますよ?
「どう、して……?」
――世界の崩壊。
その言葉が、今の状況を表すのに最も適しているだろう。
人々を潤すためのエネルギーを精製するための、天高く聳え立つ塔は既にかつての面影はなく。人々を潤すどころか、地上に過ごしていた人々を自身の巨体で圧し潰す。
「何故……なんだ!」
空を夢見る者の夢を叶えた機械の鳥が、その腹から一発で人を少なくとも百人は殺せる爆弾を何発も地上へ向けて投下しながら、狂ったかのように飛び回る。
遠くへ行きたいと願った者の願いを叶えた機械の獣が、恐るべき速度で走りまわり、進路上にいる人々を轢き殺し、撥ね殺す。
強くなりたいと願い、強靭な身体と力を手に入れた者たちが、逃げ惑う人々を何の見境もなく、一切の容赦もなく――撃ち殺し、切り殺す。
人々の願いの全てが込められた巨人が、人々を救うための足で人々を潰し、人々を護るための腕で――人々を殺す。
「どうして、どうしてなんだッ!」
そんな地獄と表現するのすら生易しい光景を見て、青年が叫ぶ。
その叫びには青年の夢、未来――青年の全てが込められていて。
「どうしてっ、なんだぁぁぁぁぁ!」
……彼は、自身の全てが壊されていく光景に悲鳴を上げ、手に何も持たずに人々を殺す者たちへと突っ込んでいく。
「うわ、うわぁぁぁぁああああ!」
青年が拳を振るう。それだけで、人々を殺す者たちが吹っ飛ぶ。
青年が叫ぶ。それだけで、人々を殺す者たちは世界から抹消される。
青年が猛る。それだけで、青年の周りにいた人々を殺す者たちは全て消える。
……しかし、青年が倒した者たちは氷山の一角。滅びつつある世界には、人々を殺すモノが青年の力ではどうしようも出来ないほど、蔓延っていて。
どうしようもない現実に、青年はその場に崩れ落ちる。何故こうなった、こんなはずじゃなかった――そんなことを考えても、意味はないというのに……考え続けた。
「……エド! 無事だったか! ウェン、エドがいたぞ!」
「本当!?」
穏やかそうな雰囲気を持つ青年が、崩れ落ちている青年を見て誰か別の人物の名を叫ぶ。その叫びに応じて現れたのは、銀髪のロングヘアーの女性。
女性は青年を視認した瞬間、感極まったかのように口に両手を当て。
「ッ……エド! 良かった、無事で良かった……!」
女性は青年――エドに駆け寄って、エドを力強く抱き締めながら涙声ながらも喉から声を絞り出す。
しかしエドは、女性の呼び掛けに応じることは無く。
「……」
「きゃっ……え、エド?」
「ど、どうした、エド?」
エドは女性を自身から引き離し、立ち上がる。エドの突然の行動に、女性はおろか青年も呆然としながらエドの名を呼ぶ。
が、エドの意識には二人はおらず、彼の意識……視界に映るのは滅びつつある、彼が愛した世界。
「ああ、そうか……簡単じゃないか」
エドはその光景に何かを悟ったかのような声を漏らした後、虚空に向けて人々を殺すモノたちの体液がついた両手を伸ばして。
「壊れたモノは……作り直せばいいんじゃないか」
狂気に染まった瞳で――そう、呟いた。