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プロローグだけで満足  作者: 大地D


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6/8

ユキが降る街



「今夜はいつも以上に寒くて静かな夜だ」


いつもは夜勤の消雪隊の掛け声が聞こえるはずだ…

なにか異常事態に見舞われているのか?

見張りの俺が動くわけにはいかない

気のせいだとしても無線で報告しとくか


「こちら第7監視所、街から何も音が聞こえません」

「他の監視所から何か報告はありますでしょうか?どうぞ」


「こちら街役場消雪隊本部、各監視所から無音の報告あり」

「本部会議中、対処が決まり次第連絡する、どうぞ」


「了解しました、監視を続ける、おわり」




「継続監視かぁ…」


ただ真っ白なユキを見続けたってつまらないな…

少しこの街の歴史を振り返って時間でも潰してみるか


この街は一年中、季節関係無くシンシンとユキが降り積もる。

夏の暑い日にユキ景色が見れるなんて世界中探してもここだけだろう。


10年前に季節外れの雪が降りだした。

初めはテレビだとかネットで暫くの間、話題になった。


この雪は


冷たくない

水分を含んでない

触れると跡形も無く消える


"全身を包まれると消される"


そう…消されるんだ…


ここは南関東で雪が積もるなんて数年に1度あるかないか位なんだ

だからか冷たくない雪が珍しくて積もった雪にダイブする奴が居たんだよ


そしたら全身が雪に埋まる

するとサッパリ消えてしまうんだよ。


飛び込んだ人間が、綺麗に消えるんだ…

服とかカバンとか、身に付けてる物も全部…


本当に飛び込んだか?とか

ビビって気絶して動かなくなったか?とか

周りの人間が煽ってたんだけど

どんだけ掻き分けても、居ない…

どこにも居ない…


それがニュースになって大事さ

色んなテレビ局やらネットの有名人やらが来て

取材だとか冷やかしをたくさん受けた


暫くして国が動いて調査に来たんだよ

けど雪は触ったら消えちゃったんだ


手で触れても、道具で掬っても。


だから検査や成分分析とか何も出来なかったんだよ

偉い研究者も専門家達もお手上げだったんだ

結局何も分からないまま国の連中は引き上げていった


そしたら今度は待避勧告が出た

けど街の半分くらいの住人は逃げなかった


「俺達はこの街で生まれてこの街で死ぬ」


だってさ…

自分の親が言ったから…


当時、幼かった俺はこの街から逃げられなかった…


その後、この雪に対して対処する組織が作られた

この雪は従来の雪とは違うから呼び方の変えたんだ

まぁ…ただ単にカタカナに変えただけ、



ユキ



このユキを街から消すために《消雪隊》が組まれた


活動内容は

ユキの降雪量の観測

積もりすぎたユキの除去

各世帯へ安否確認の訪問


ユキが消すのは人間だけじゃない

生き物も有機物も無機物も関係無く消すんだ

だからユキに降り積もられて全部ユキに埋まると


家ごと消える。


外壁も

屋根も

家具も

縁側も

フェンスも


敷地内が埋まると、その家全部消えるんだ…


もちろん中に居ただろう


住人も…



だからパトロールは重要なんだ


ユキに消されない簡単な対処方法として


屋根に高い棒を付ける

外に物を置かない

日々の除雪

とかがあるが、除雪は1歩間違うとこっちが消される


ある日、除雪作業が困難な高齢者の住居に派遣要請があった


派遣された隊員が消えたんだ。


何度もしてる除雪作業だったが

不意に屋根からドカッとユキが滑り落ちてきた


瞬きもしない内に消えた…


何も痕跡が残らなかった…




てな感じでこの街はユキと日々戦ってる

消すか消されるかの戦いだ


ちなみにどこからユキが降ってるとか

ドローンとかで調べたらしいんだけど

どこから途もなく突然観測出来るんだよ


地上300mくらいから降りだす

それより高い所には何もない

街の境い目から降りだす

隣の街には降らない

強風の日でもこの街にしか降らない


不思議だよな


俺は作為的なものを感じてる

どう考えたって自然現象じゃない


だから俺は国の連中が実施する前に逃げて出来なかった

非接触検査が出来る装置を仕入れてきたんだ

色んな機械を持ってきた


超音波

放射線

サーモグラフィ

レーザー

磁石


他にも色々だ


結局、正体は判らなかった

けど判ったこともあった


ユキは動いてる

ほんとーに少しずつだけど動いてるんだ

風もない夜中に検査したから間違いないと思う


じゃあ生物なのか?って話になるけど

それは判らない

温度も磁性も無いんだから

生物か機械なのかも判らない


このユキは雪とはまるで違う

それが再確認出来ただけだ



「本部より各隊員に通達」

「静かすぎるユキに対し除雪対処を敢行せよ」


はぁ~…つまりはいつも通りか…

結局は消さなきゃ消されるんだからな

やることは変わらない


本部の連中は何を会議したんだか…



「よしっ!今日も今日とて除雪作業だ!」


声に出してやる気出す

そうでもしなきゃ動く気になれなかった



監視業務も中止して全隊員での除雪作業だってよ

まぁそれが一番手っ取り早いもんな


除雪道具は人それぞれだ

とある先輩はスコップで消してる

とある後輩は除雪車で消してる

俺は竹箒で消してる


人が道具を握ってればユキは消せるんだ


遠隔ロボットじゃ消えなかった

水を巻いたら

水←ホース←手

みたいに繋がってればユキは消えたが

地面や空中で散らばった水では消えなかった


つまりは人間が間接的にでも

触ってる物じゃなきゃ除雪出来ないんだよ


とどのつまり肉体労働ってことだよ…

安全になんてユキは消せない


じゃあ家に降れてれば消えると思うだろ?

人間の手で動かして消さなきゃ消えないんだよ


家を押せればユキも消えるかもな


だから道路は除雪車

細かい所は使いなれた道具

って感じで除雪してる



静かすぎる夜だったが

隊員の掛け声が色んな所から聞こえ始めた


各所で除雪作業が始まったんだ

俺も作業しなきゃな


竹箒を上下左右に振る


家と塀の間

縁側の下

排水溝


細かい場所が俺の担当だ



ユキ自体に重さは無いのだろう…


感触は無い

竹箒を振るう手に抵抗を感じない


屋根にどれだけユキが降り積もっても家は軋まない


あぁ…静かだ…

こんなに静かな夜は久し振りだ…


奇妙過ぎる…


ユキは動いてるって言ったと思うが

実は動いてる音が聞こえるんだよ

ザーザーみたいなテレビの砂嵐みたいな音が


って言ってもホントに少しだけ聞こえるんだ

だからこんなに静かな夜は久し振りだ…


静か……静か過ぎるっ!?


他の隊員の掛け声すら聞こえない!

どうしたんだっ!?


「お~いっ!誰か!誰か居ませんかー!」


声が返ってこない…


焦って周りを見渡す


居る…


みんな居る


口をパクパクを動かしている


喋り掛けてきているみたいに


喋り声が聞こえない


自分が出す声も聞こえない





音が消えた…


手に持っていた竹箒でアスファルトを叩く


音はしない…


掌にジーンとした感触だけが残った





あぁ…静かだ…


このユキは音も消すのか…


俺の耳だけが聞こえないのか?




あぁ…とっても静かだ…


あの鬱陶しかったザーザー音も聞こえない…


目を瞑ればユキなんて無かったみたいな感覚だ…


触れられず

聞こえず

見なければ


何も無いと一緒だ


呪縛から解放された気分だ

このまま消えてしまいたい



ここはユキが降る街


消えたいならオススメだ







SpSS起……認

防……置試……域指定

工……遮断……良好

……生…の消失は……無し


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