車で生きていく
初夏の晴れ晴れとした心地よい風が、顔を撫でていく
私は走行中に、窓を開けておくのが好きだ。
少し湿気を帯びた草の青臭い香りが、鼻をくすぐる
視界は良好、原っぱが広がり、真っ直ぐな道が何処までも続いてる。
私は車であらゆる土地に旅に行くのが趣味…と言うか生き甲斐だ。
「今日はどこまで行こうか…」
この旅は基本的には車中泊なので、宿の心配はしなくていい
運転が好きだからなのか、天性の才能があるのか分からないが、いくら運転をしても疲れたことがない。
今時の車はハイブリッドやEVなどあるが、私はガソリンが爆発し鼓動するあのエンジンの揺れが好きなのだ。
アクセルを踏み込むと唸り声をあげ、速度がグングンと上がる、エンジンも気持ち良さそうに嘶いている、法定速度は勿論守っている。
景色も段々とオレンジ色に染まっていき、車に入ってくる風に少し肌寒さを感じる、しばらく鼻歌交じりに進んでいると、田舎特有の広すぎるコンビニの駐車場が見えてきた。
「今日はここで夜を明かすか…」
コンビニの向かいにはセルフのガソリンスタンドもあり、私の旅にうってつけの場所だった、ここで食事を済ませて今日は少し早めに休もう。
先日の話だが、私は運転で疲れを感じないとは言えども、この身体のエネルギーは知らず知らずの内に全部消費されていたようで、エンジンが切れたかのように突然、プツッと視界が真っ暗になって眠ってしまうことがあった。
給油は挟みながらだったが、休み無く連続で30時間程運転していた時の話だ…気を付けなくてはいけないな…
数年前に数ヶ月入院するような大きな事故を起こして以来、脳が覚醒でもしたのか疲れ知らずになってしまったのだ、これまでの記憶が曖昧になり、記憶を取り戻す為にいろんな土地に赴き、脳に刺激を与えてるのもこの旅の目的でもある、まぁ何よりドライブが好きなのが1番の理由だ。
田舎のコンビニでも品揃えは良く、様々な消耗品も補充し次いでに食事も済ませる
「ここのご飯の味は悪くないな…」
明日はどこまで行こうか…
寝る前のいつもの思案をしながら、シートをフラットにして眠る姿勢を取る、私は寝入るのがとても早く、睡眠も深いのか夢を見たことが無い。
車内灯を消し数回深呼吸をする、スッと静かになり意識が無くなる、次に目を開けたらもう朝だ、今日も眠りは深かったらしい。
今日の天気は曇り時々雨、午後3時過ぎからひと雨くるらしい、気温は24℃ 風速は3m 標高32m 気圧は1003hPa 北緯約36度、東経約139度 現在時刻は午前8時 ナビが出発日和だと言っているみたいだな。
今日は300km南にある、道の駅にでも行こうか…少しマッタリ進んでも日が暮れる頃には着くだろう、海を左に見ながら心地よく進めることだろう。
着替えは…いつもの服でいいか…誰に見られるわけでもなし
早速シーベルトを締めてエンジンを回しハンドルを握る、気楽なひとり旅の始まりだ、私は助手席や後部座席に人を乗せない、余り好きでは無いからだ…
別に運転が荒いからとか、臭いが気になるからとかでは無い、むしろ運転は丁寧にしている、段差は特に気を付けて越えている、車の底が削れるのが怖いから…まるで自分の身が削られるように痛む。
少し前に事故を起こしてしまった時は、しばらく足の脛が痛かったのはまだ覚えが新しい、病院で直して貰ったが身体も懐も痛い出費だった…
ここで運転中の苦手な事でも書き連ねてみよう
・凸凹道
→不意な揺れで酔ってしまう
・障害物の多い道
→神経を使う
・同乗者
→長く一緒にいると疲れてしまう
・豪雨
→頭の中がうるさくなる
・霧
→目が疲れる
・荒い運転の車
→心臓に悪い
・洗車
→くすぐったい
まぁこんな感じでワガママが多い運転手だとは思っている。
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昼も過ぎて道程も中頃、車のテールランプが沢山見える…どうやらこの先で事故があったみたいだ、スピードを落とし慎重にアクセルを踏む、事故現場を通りすぎる時横目に見る、フロントが悲惨にひしゃげている…ああは成りたくないものだ…
飛散したガラスの破片をタイヤが踏む…あぁ痛い…刺さったみたいだ…次の休憩でタイヤのチェックをしなくては。
渋滞のせいで予定がかなりズレてしまった、午後から降り出した雨は強くなり、日も暮れ始めた。
雨の日は夜の運転を避けてきた…自分の顔が反射するから…
それでも運転を続けないと、休憩出来る駐車場は暫く無い
トンネルを潜りオレンジ色のライトが車内を照らす
否応なしにフロントガラスの反射で車内が写し出される
人影が無い…
ハンドルを握っているはずの腕が見えない…
あり得ない光景に心臓が五月蝿く鼓動する、エンジンも共に回転数が上がる。
思わず息が止まる…
トンネルを抜け路肩に車を止める
動揺してたのかバンパーを少し擦ってしまった…
スネが痛む…
まだ心臓がうるさい…
雨が頭の中に鳴り響く…
数十分経っただろうか…息をしていなかったのを思い出す…
「あぁそうか…そうだったのか…」
全部思い出した、旅を始めたキッカケ…記憶を取り戻してしまった…
私は車に乗っていたんじゃない…
私はここに繋がれてたのだ。
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車が大好きだった私は、車の購入資金の為にとある研究所に検体のサインをしそこそこの大金を得た
そして数年前の大きな事故で私の身体の大半がダメになってしまった
契約通りに検体で研究所へ運ばれた
そこで脳や脳幹を取り出された
培養ポッドに入れられた
脳神経のみで機械の身体を動かす研究に使われた
脳神経と車を管やケーブルで繋がれた
運転実験中に逃亡した
慣れない運転で高い段差を越えてしまった
脳が揺れた
記憶が消えた
何も、分からなくなった
そして旅が好きになった
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夜が明けた
「さぁ、今日はどこへ行こう…」
私は車で生きていく
被……0004脳……続…験
……中…逃亡……認
衝撃………記………傷…確認
脳接……異…無…経……察を…続




