Right Hand Me 後編
右手だけの生活になって数週間、この手首だけの生活にも慣れ始めてきた。いや慣れたくなかったけど…
一晩寝たら治るかなとかご飯いっぱい食べたら良いかなとか色々してみたけど何も変わらなかった、ただ1つだけ便利なところがあった…そう…排便をしなくてもいいのだ!
常々トイレの時間って無駄だなぁとか思ってたからこれは嬉しい変化だった!それ以外は嬉しくないけど…
学校も行けないのは変わらずなので休学届を提出して絶賛休み中、右手だけでもスマホは触れるので友達との連絡には問題なかった、あれからヒカリは毎日家に来て話をしてくれる学校のプリントとか宿題とかどんなことがあったとか、とてもニコニコしながら喋ってくる…
僕「ねぇ…ヒカリ…負担になってない?毎日来てくれて話もしてくれて…」
ヒカリ「ん~~登下校も学校にも光ちゃんが居なくて寂しいっ!負担じゃない!私が会いたいから来てるのっ!」
泣ける…なんて素晴らしい良い幼馴染なんだ…果たしてこの身体泣いたらどこから涙が出るんだろう…
ヒカリ「それじゃお腹減ったから帰るねっ!ばいば~い」
僕も中指を振る
僕「バイバイ」
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次の日
朝目覚めても相変わらずの右手…これは一生戻れない事を考えてこの姿でも関係なく出来る仕事を考えておくべきかな…いつまでも何もしない訳にはいかないし…あれか?アプリの広告とかでたまに見るスマホでデータ入力とかか?あれなんだか怪しいけど…他に何も思い浮かばないしなぁ…
母「光ぅ…あんた…」
んっ?マズいこれはあれだ、そろそろ何か行動しなさいってチクチクされるやつが来るっ!
母「ちょっとこれ見なさい、指1本でも出来る面白いスマホゲーム見つけたのよぉ!やってみなさい!」
僕「遊んでて良いんだ!?」
母「だってその身体じゃ遊ぶしか無いじゃない、悲観してたって何か変わるわけでも無いしぃ」
母さんは強いな…僕がこんな姿になってショックだろうに気遣ってくれて…いやそれが母っていうやつなのかな
母「そろそろ買い物行ってくるからなんか欲しいものあるぅ?」
僕「う~ん…無香料のハンドクリームお願い、なんだか背中…いや手の甲がカサカサしてる気がするんだ」
母「おっけ~行ってくるわぁ!」
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テレビもスマホも昼寝も1時間で飽きた…流石に時間がありすぎる…スマホ弄るのも全身運動だからやたら疲れるのもあるし、何か面白いことでも起きないかなぁ…
ピリリリリリリ♪ピリリリリリリリリ♪
電話だ…母さんからか
ピッ
僕「もしもし、なんだい?」
母「あっ!光?大変!ちょっと落ち着いて聞いて!あのね!ヒカリちゃんが事故に遭ったらしいのよ!お隣の奥さんが慌てててね!命に別状は無いって言ってたけどなんかスゴく深刻そうでね!」
………
………ヒカリが………事故に…
……………
頭が真っ白だ…いつもふらふら歩いてるから…僕が手を繋いでたら…けど生きてるって…
母「……しもし?もしも~し?光聞こえてるぅ?」
僕「…あぁ?聞こえてるよ…」
母「それでね、ヒカリちゃんのお母さんは一緒に救急車乗って行っちゃったでしょ?帰りの手段とか無いだろうから病院にお迎えに行ったりなんか色々手伝って来るから、ちょっと帰るの遅くなるわぁお腹が減ったら食器棚の一番したにコンビニの菓子パンあるからねぇ」
僕「分かった…」
ピッ
ヒカリが事故に遭った…大丈夫だろうか…救急車に乗ったなら大丈夫じゃないよな…なんだよ面白いこと起きないかなとか思ったけどちっとも面白くない…なんだよ…
落ち着かない…ジトォとした汗が出る…ソワソワする…何も考えが纏まらない…呼吸が荒い…
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何時間経っただろうか…もう外は暗くなっている…ヒカリは大丈夫だろうか…
ガチャガチャ キーバタン
母「あ~ただいまぁ…疲れたぁ…」
僕「母さん!ヒカリは?どうだった?」
目を反らして何か暗い表情をしてる…
母「あぁ…う~ん…あのね…ヒカリちゃんね…ちゃんと生きてるしお顔も綺麗だったし意識もあったよ…けど手がね…」
僕「手が?」
母「右手を轢かれて…もう切断するしかないんだって…」
切断…
母「それでね1回目の緊急手術が終わってお隣さんを乗せて車で帰って来たのよぉお着替え持っていったりとか入院準備するんだってぇ…ちょっとお母さん疲れたからお風呂入って良いかしらぁ?それとご飯は食べたぁ?」
僕「あぁ…うん…食べた…」
いや食べてない…何も喉が通らなかった…
どうしよう…どうすることも出来ない…どうしたらいいだろう…どうもできない…
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寝られなかった…こんな身体じゃ何も出来ないしてあげられない考えが堂々巡りして悶々と考えるだけで夜が明けた…
コンコンッ
この身体になってから朝に母さんが部屋に迎えに来てリビングまで運んでくれる習慣が増えた…
そのノックだろう…
布団から出たくない…身体が…手がダルい…動きたくない…
母「おはよー!おきなさーい!あさよあさよあさよー!」
僕「起きたくない…」
シャーとカーテンが勢い良く開く音がする…眩しい…
ガラララと窓まで開けてる音がする…
母「太陽の光を浴びてぇ空気入れ換えてぇ深呼吸ぅ!」
深呼吸…新鮮な空気の匂い…太陽の光…ヒカリ…くっ…
母「あんたねぇ…あんたがクヨクヨしてたってヒカリちゃんに何も出来ないんだから2週間くらいでヒカリちゃんに面会出来るようなるらしいから普段通りにしなさいよぉ!」
面会…そうか面会しないとか…どんな顔で会えば良いんだろうか…顔無いけど…
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2週間後 病院
母「ヒカリちゃ~ん入るわよぉ」
親族以外面会謝絶だったがヒカリの希望により僕達の面会が許可された、僕はもちろんだが母さんのバッグに隠れて連れていってもらった
ヒカリ「どうぞ~」
ガラガラガラと引き戸を開ける音がバッグの中にも聞こえてくる
母「連れてきたわよぉ!ほらっ!光」
スマホでも取り出すかの様にパッと出されてしまった
まだ何も覚悟を決めてないのにっ!
ヒカリ「ヤッホ~!光ちゃん久しぶり~!」
左手をフリフリと振りながら笑顔で挨拶してくる
右手は布団の中に隠しながら…
光「ははっ…病室だよ…声がデカいよ…久しぶり…」
ベッドテーブルにぽんっと置かれた僕も手(中指)を振りながら挨拶をする
ヒカリ「どお?光ちゃん変わり無い?こっちは結構暇なんだよねぇ」
僕「変わりは無いかな…相変わらずのこの体(右手)のまんまだし…ヒカリが入院してからはこっちも更に暇になったくらいかな…」
僕もヒカリも表面上はいつもの調子で会話してる感じがするけどなんか少しぎこちなさがある…
入院苦労トークやいつもの他愛もない会話をしてたら母さんがそろそろ負担になっちゃうからお暇するわよぉと言ってきた
僕「そうだね…ヒカリにも負担になるし僕が見つかっちゃうのもあれだし…そろそろ帰ろうか」
ヒカリ「えぇ~!?もう帰っちゃうの!また暇になっちゃうよぉ!」
車に轢かれて入院してるってのに元気な声で別れを惜しんでる…でも絶対に右手を布団から出すことは無かった…
僕「大丈夫!許可が出ればまたお見舞いに来るから、次の時までに面白い話用意しとくよ」
ヒカリ「これから後何回か手術するらしいくて入院もまだまだしてそうだから面白い話たくさん用意しといてね!」
お互いに手(左手と中指)を振り別れる
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帰りの車中
僕「母さん…ヒカリ…元気そうには見えたね…」
母「そうねぇ…でも空元気って感じだったわねぇ」
僕「ずっと右手を隠してたね…」
母「さっきヒカリちゃんのお母さんから聞いたんだけどね、最初の緊急手術で指をどうにか残して後々再建手術出来るようにしてたらしいんだけどぉ、神経も血管も駄目で壊死して他の部分までダメになっちゃわないように手首辺りから切断するしか無いってぇ…」
やっぱり…あの空元気はどうにか振り絞った元気だったんだな…手首から切断か…これからヒカリは60年とか70年も右手が無い人生を送るなんて…僕がこんな身体にならなければ…ちゃんと送り迎え出来てれば…いっそのこと変わってあげたい…けど今の僕は右手しかない…変わってあげられるものが無い…
………いや………いやっ!?変わってあげられないけど成ってあげられる!そうだっ!僕がヒカリの右手に成ればいいんだっ!
僕「母さんっ!!」
母「きゃっ!?運転中に大声出さないでよぉ」
僕「僕っ!決めたよ!この身体でも出来ることを見つけたよ!ヒカリの右手に成るよ!そして危ない時は僕ごと動いて手を引っ張って上げるんだ!」
母「…あんたねぇ…妙案みたいに言ってるけど年頃の女の子の右手になりたいって…相当変態よぉ…それにあんたが元に戻ったらどうするのよぉ」
僕「そこも考えてるよ!僕が元に戻れても戻れなくても自由自在に動くヒカリの右手の義手を作ろうと思うんだ!ついでに僕の右手以外の部分まで作って義体の二本足で歩くのもね!」
母「なんだかスゴいSFみたいな話ねぇ」
僕「そうでも無いんだよ、脳波を無線で飛ばして独立して動く義手なんて物が出来たらしいから、僕が色々学ぶ頃にはもっと技術が進んでそれを更に発展させて僕がヒカリを笑顔にするんだっ!」
母「ふふっいきなり良い夢が出来たわねぇ!ヒカリちゃんの右手になりたい以外はぁ…」
僕「そうかぁ…ヒカリの右手になるのは良いと思ったんだけどなぁ…」
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また2週間後 病室にて
コンコンッ
母「ヒカリちゃんまた来たわよぉ」
ヒカリ「あっ…おばさん…こんにちは」
なんだか元気が無い…空元気も出せないくらい気が滅入ってるみたいだ
母「ついて早々だけどヒカリちゃんのお母さんと退院の準備買い出しとかしてくるから暫くテーブルの上で待っててねぇ」
僕「オッケ~、ヒカリ久しぶり」
ヒカリ「久しぶりだね…」
僕「いつもの元気が無いね…やっぱりツラい?」
ヒカリ「うん…ぐすっ…リハビリしてても…もう右手が無くて…ぐすっ…ズズッ…これからどうしようって……」グスッグスッ
僕「今日はヒカリに将来の話をしに来たんだ」
ヒカリが泣きながら困惑した顔で見つめてくる
僕「この前のお見舞いの帰り道で思ったんだ!ヒカリの右手が無くなったなら僕がヒカリの右手に成れば良いって!そしたらいつもふらふらしてるヒカリを傍で注意出来るって!」
ヒカリ「ふえっ!?」
僕「1人でもう悩まなくていい、僕がヒカリの右手に成って一緒に生きていきたい」
僕「これからは僕がヒカリの右手がする事を全部やる、荷物持つのも髪をとかすのもヒカリが泣く時にその涙を拭いてあげるのも…全部…全部だよ」
ヒカリ「えぇええ!?光ちゃんが私の右手になるの!?面白そうだし嬉しいけど…」
良かったドン引きされるかもって思ってたけど思いの外好意的に受け止めてくれた…けど…けどって?
ヒカリ「流石におトイレとお風呂まで一緒はまだ恥ずかしいなぁ…」テレテレ
僕「まだ?そうだね!僕は全部やるって言ったんだから"まだ"だね!ははっ」
ヒカリ「もぉ…やだぁ…」
ヒカリは恥ずかしそうに両手で顔を覆い隠してる
僕「恥ずかしがってても僕が隠してあげるから安心してよ!」
ヒカリ「それじゃ光ちゃんから隠せないじゃん!!」
アハハッ ハハハッ
久しぶりにヒカリの笑顔が見れた…それだけでも頑張って宣言したかいがあったもんだ!
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それから数ヵ月後
ヒカリ「それじゃお母さん!おばさん!いってきま~す!」
僕「いってきます!」
僕は今ヒカリの右手に成っている、ヒカリの手首と僕の身体(右手)はアンカーボルトで固定してある、僕はソケット式にしようと提案したけどヒカリがどうせずっと一緒に居るなら光ちゃんの暖かさを感じたいって言って、病院に無理を言ってヒカリは骨にインプラント入れた手首からボルトが出てる様な感じだ、僕の方も骨に固定したボルト受けを着けた
手術してくれたのは最先端で義手の研究をしている先生だった、僕の事情を明かした上で研究材料にしても良いから手術をしてくれませんか?とメールを送ったら色々条件を付けられたけど手術してくれた
その色々な条件ってのがこっちにとっては破格の条件だったのが気になるけどヒカリと一緒に居れるなら問題は無い
僕「あっ!ヒカリそっちは学校じゃないぞ!ほらっ!こっちに来て」
僕は右手の袖を引っ張る
僕はヒカリの右手になった
僕「ねぇ…ヒカリ」
ヒカリ「なぁに?」
僕「Right Hand Me?」
被………右…………異常な……
…過観…を…………体…面に………
再生を確………女……接…て確認……異常なし
………注力……察……けよ…




