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Right Hand Me 前編

17歳の春 思春期真っ只中であろうとも恥ずかしがらずに幼少期の頃からしている習慣が僕にはある


それは幼馴染と手を繋ぎながら登下校する事だ、学校の人達やクラスメイトに最初の頃は指を刺され笑われていたものだけど、そんな光景を1年も見てれば見慣れた光景にでもなったのか誰も見向きもしなくなった。


繋ぐ手は僕は右手、幼馴染は左手、道路側には僕が立ちレディファーストを忘れない、暑くても寒くても家を出てから校門まで校門を出てから家まで必ず手を繋ぐ、家は向かいにあるから家の前で手を離しバイバイと手を振り玄関を開けるそんな登下校を毎日繰り返してる。


そんな少し幸せな毎日を送り続けるものだと思っていた…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ピピピピピピピピ アサデスアサデス ピピピピピピピピ


チュンチュン チュンチュン チチチチチ


僕「ふああぁぁぁ…もう朝か…」


五月蝿く鳴っている目覚ましを止めないと…んん…んん?んんんん!?!?


手が伸びない?右手が伸びない…というか目の前が暗い…息苦しい!?なんだ!?身動きは出来る…身動き?身体の感覚が変だ…手足みたいな感覚はある、指の感覚は無いのに手の感覚は鋭い…何か柔らかい布に包まれてる気がする…


手足をジタバタ動かして布から抜け出そうと踠いてたら突然眩しすぎる明かりが目を貫いた…何時もの寝起きの感覚だ…だんだんと目が太陽の眩しさに慣れ部屋が見えてきた…なんだか天井が高い…いやベッドも広い…ドアが遠い…目覚まし時計がウルサイ…そうだ目覚まし時計を止めなきゃ…なんかインフルエンザで高熱に浮かされてる時みたいな遠近感が掴めない…目覚まし時計に手が届かない…手を見る…指が無い!?いや指しかない!?伸ばした右手が超ドアップの指に見える!?


状況が理解出来ない…理解しよう冷静に…冷静に…


右手を前に伸ばすと中指が見える…何で中指だって分かるのか…だって小学生の頃に彫刻刀で切った跡があるからだ…左手を前に伸ばしてみる…これは親指だ…足元を見る…右側に薬指と小指が見える…!?!?!?!?理解したくない…けどたぶん…いやほぼ…いや確実に僕は人差し指の視点で自分の手を見てる…しかも右手の人差し指だ。


他の身体の部位はどうなっているか確認しなきゃ…仰向けになり手首の方を見てみる…無い…………手首から少し先から何も無い………腕時計を付けるくらいの位置から僕の身体は消えている…ベッドの布団もペチャンコだ…残りの部分が布団の中にあるようには思えない…


どう考えても僕は自分の右手だけになってしまったらしい…落ち着こう…こういう時は深呼吸だ…吸って~吐いて~吸っt~……待てよっ!?どうやって呼吸してるんだ?部屋が見える、昨日干した枕の匂いもする、布団に触れてる感触もある、ウルサイ目覚まし時計はスヌーズで3回目の鳴り響きを知らせてくる…呼吸もしてるみたいだ…右手だけで?


もしかしてこれはものすごぉ~くリアルな夢を見てるんじゃないか?頬をつねりたい…その頬っぺたが無い…中指の爪で親指の腹を押してみる…少しだけ痛い……夢じゃないのか?


コンコンッ コンコンッ ヒカルー メザマシナッテルワヨー ハヤクオキナサーイ ヘヤニハイルワヨー


ヤバい!お母さんが起こしに来る!!けどどうしようも無い…どう説明するんだ…これぇ…


母「光?起きなさいっ!目覚まし鳴り響いてるわよぉ!」


僕「起きてるよぉ!目覚ましは止められないんだ」


母「なに言ってるのよ、手を伸ばすだけじゃない!ほらっ!こうやって!……きゃっ…なにこれぇ布団の上に手の模型なんて置いて…ビックリさせないでよ!何かドッキリなの?いつまで経っても子供なんだから…布団に隠れてないで出てきなさい!」


僕「いやっ…ちがっ…まっt!?」


身体が宙を舞う…枕の上から転げて布団の上に移動してしまったのがマズかった…布団を捲られた拍子に僕は高く吹き飛んだ


母「光!起きなさい!!」


床が遠い…これは死んだ…何mの高さだろう…二階の自室の窓から道路を見ているくらい高いだろうか?景色が遅く回る思考が速く感じる…走馬灯までとは行かないが一昨年に交通事故に合ったときみたいな感覚だ…母と目が合う…いや目があるかは分からないから僕が見てるだけだ…だんだんと床が近づく…痛みの覚悟を決める…


ドンッ


僕「ンガッ!?グウウ…」


痛い…けどそんなに痛くない…思ったほどじゃない…生きてる…いやこの手だけの状態で生きてるかと聞かれたら…どうなんだろうか?


母「あれ?光?何処いるのよ、隠れてないで出てきてご飯ちゃっちゃと食べちゃいなさい!」


僕「ここに…居るよ…痛い…」


母「何処よ?」


僕「床に落ちた手を見て…」


キョロキョロ


母「この手本物みたいで気持ち悪いのよねぇ…」


僕は母に向かって右手…いや人差し指を振る


母「きゃあああ!?!?動いてる!?気持ち悪い!動くなんてずいぶん手が込んでるのね!手だけに!」


こんな状況で駄洒落なんて聞きたくないよ…


僕「違うよ!これが僕なんだよ!この右手が!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今ダイニングテーブルの上に居る、自分でも分からない状況なのに母に起きてからの起きたことを冷たい床の上で説明した、母はずっとキョロキョロと元の僕の身体の事を探しながら話を聞いていた、途中からクローゼットの中にもベッドの下にもトイレにもお風呂にも居ないのを確認してきてまた部屋戻ってきて話の続きをウンウンと聞き始めた、少しづつ信じ始めているみたいだった…


歩き方が分からないと言うとキッチンからトングを持ってきて運び始めた…ちょっと冷たくて痛い…力加減考えて…母よ…直接持つのは気持ち悪いのは分かるけども…


母「これが夢じゃなくてドッキリでもなくて本当に起きた事ってのは信じたくないけど理解はしてきたわぁ…」


僕「僕も信じられないけど本当っぽい…」


母「で…ご飯は食べられそう?」


この状態で朝ご飯の心配なのっ?いやまぁこのまま戻れなくて食べられない状態が続いたら餓死でもしそうだし…


僕「ちょっと食べてみるか?どうやって食べると思う?」


母「そんなの分からないわよぉ人差し指で見てて人差し指ら辺から声がするからこう…指の腹がガパァって開いて食べられるんじゃないかしらぁ?」


なんか…もう既にちょっとだけこの状況に順応してないか?母よ…


朝ごはんは淡く焼いたトーストと塩コショウを強めに振った半熟目玉焼きに焦げ目が付くくらいカリカリに焼いたベーコンを添えた僕好みのオーソドックスな洋食朝ごはんの感じだ、どうやって食べるんだ?そもそもお皿までの歩き方が分からない…両手を伸ばす様に動かすと親指と中指が動く…ってことは足を動かしてみたら薬指と小指が動く…どう動けというんだっ!


手首を支点に人差し指以外で這いずってみる…意外と動ける…ほふく前進しているみたいだ…なんとかお皿の目の前まで来れた、歩いてる間ずっと母さんがジーっと見ている…くんくんっいい匂いがするコレゾ朝ごはんの匂いっ!!いつものトーストと目玉焼きが布団みたいにデカい…ベーコンだって抱き枕みたいだ…食いしん坊には夢のようなベッドだな…


人差し指を近づけてみる、口を開けて食べようとしてみる…目の間のトーストが少し削れる…香ばしい小麦の味がする…どうやら食べられるみたいだ…


僕「母さん…今どうやって食べてるように見えた?」


母「人差し指がパンに近づいたと思ったらなんかヒュッって少しだけ消えた…」


どうやらファンタジーチックな食べ方みたいだ…まぁお腹は空いてたしこのまま食べてみるか…


ゲプッ…なんとか食べられた…500円玉ぐらいの大きさ分食べた…


母「もうお腹いっぱいなのぉ?勿体ないわねぇ…残り食べちゃって良いかしらぁ?」


どうぞどうぞ…


母「けど…モグモグ…学校はどうしようかしらねぇ…モグモグ…そんな身体じゃぁ…モグモグ…行けないわよねぇ…モグモグ…」


母よ喋るか食べるかにしなさい…けど学校かぁ…こんな身体(手だけ)じゃ歩くこともままならないからな…学校……学校………あっ!!ヤバいっ!ヒカリ!!僕の幸せの元である手つなぎ登下校が出来ない!これじゃ学校行く意味無いや…って言うかヒカリになんて説明すれば良いんだ………手だけになっちゃいました…てへっ……手だけになんてね………


ピンポーン オムカエニキマシタオバチャーン ヒカルー オハヨウゴザイマース


あぁヒカリが来ちゃった…どうしよう…


母「はいはーい!今行くわねぇ!ちょっと待っててねぇ」


母よ!玄関を開けるのかっ!この状態を見せちゃうのかっ!


母「なに狼狽えてるのよぉ隠してたってしょうがないじゃない!複雑なことほどシンプルにちゃっちゃと伝えるのが良いのよぉ!」


おぉう…なんて漢らしい母だ…


ヒカリチャンオハヨウ チョットオウチアガッテクレナイカシラ エッ アー ワカリマシタ オネボウシチャッタカンジデスカ マァソウイウカンジ


足音が近づいて来る…どう説明したものか…まぁ悲鳴をあげられてそれからあたふたと説明してどうなるかな…嫌われちゃうかなぁ…あぁ…僕の幸せが…崩れる足音が…近づいて来る…


ヒカリ「話は聞かせて貰ったぁ!光ちゃん!お手々になっちゃったんだって!」


いや僕の母さんの一言で信じちゃうのかよ…


僕「えぇ…僕が言うのもなんだけど信じちゃうの…ある日突然右手だけになっちゃいましたなんて…」


ヒカリ「見れば分かる!これは光ちゃんの右手!いつも手を繋いでる右手だよっ!触ればもっと分かるっ!ねぇねぇねぇ触っていい?良い感じに握るぜぇ!」


そんなイケイケ寿司職人みたいな言い方するんじゃありません!あぁ…ニギニギされてる…全身をいつものヒカリの掌に包まれてる感じがする…これはとんでもない幸福感だ…


ヒカリ「理解したっ!これは紛う事なき光ちゃんの右手っ!幼馴染の私が言うのだから間違いないっ!」


おぉ…断言しちゃったよ…僕でもまだ半信半疑だったのにて半身だけにね…いや半身以下の手だけだけど…


僕「ヒカリ…受け入れるのが早いね…僕はまだ信じられないよ…」


ヒカリ「なんてったって最近ア○○スファミリーを見たからねっ!」


あぁ…すんごい昔にあったお化け家族のホラーコメディドラマか…そういや手首だけのキャラクターが出てくるな


そう…ヒカリは底抜けに快活で少しだけ残念な性格をしている…けどそんな明るいヒカリに僕は何度も助けられ挫けずに生きてこれた


ヒカリ「けどお手々だけになっちゃったら学校行けないね…どうしようかな?」


光「どうもこうも無いよね…まずは母さんに頼んで学校に休む連絡して貰わなきゃかな…あとは病院かな?それとも警察?」


ヒカリ「病院とか警察に通報したらその後実験対象にされちゃったりして!」


そうかぁ…右手だけになっちゃったとかフィクションみたいなのなんて格好の研究対象になるもんなぁ…僕自身もどうやって生きてるんだか分からないもんな…


僕「じゃあ自然に治るまで世間から隠れるか…これって治るのかなぁ…治るってなんだ?」


ヒカリ「治るなら手首からニョキニョキ生えてくるのかな?でも大丈夫っ!どんな光ちゃんでも光ちゃんだよっ!」


なんと嬉しい言葉だろう…けどもう一緒には学校に行けない…


母「あらもうこんな時間!ヒカリちゃん学校に遅れちゃうわよぉ光の事は心配しないでいってらっしゃいねぇ」


ヒカリ「あっ!本当だっ!おばちゃん!光!とりあえずいってきま~す!」


僕「車に気を付けて歩いてね!右左右見てね!ふらふら歩かないようにね!」


ヒカリ「分かってるよぉ~」


僕「いってらっしゃい」


僕はひらひらと中指を振った、ヒカリも変わらない笑顔で手を振る


こうして僕の日常は一変してしまった…ヒカリと手を繋いで登下校する事が出来なくなってしまった……いや…出来るけど右手だけと手を繋いでるヒカリを世間の人達には見せられない…ヒカリがおかしな娘って思われちゃう…


それにしても心配だ…自分自身の事じゃなくヒカリの事だ!ヒカリは歩くときとにかくフラフラと色んな所を見て歩く、猫が居たとか雲が良い形とか道すがらの顔見知りに手を振ったりとか…何で手を繋いでるかなんて分かりきってる…危ないから…


あぁ…心配だ…





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