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プロローグ
幼い頃から、父に何度もせがんで聞かせてもらった話がある。
父が魔物に襲われ、命の危機にさらされたときのことだ。
絶望の中にいた父を救ったのは、駆けつけた特異現象対策局――特対局の隊員だった。
恐ろしい魔物を前にしても怯まず、仲間と連携して的確に討伐した話は、幼い私の胸を大きく震わせた。
何度も繰り返し聞いたはずなのに、そのたびに胸が熱くなる。
気づけば私は、父を救ったあの人たちのように――人々を守る隊員になりたいと願うようになっていた。
そして明日、ついに念願叶って特対局へ入隊する。
危険な仕事に就くことを、家族は当然心配した。
それでも、私が小さな頃からその夢を抱き続けてきたことを知っているからこそ、最終的には背中を押してくれたのだ。
胸が高鳴って眠気なんて一向に訪れない。
それでも無理やり目を閉じる。
その日が、もう目前に迫っていた。